電気自動車の充電インフラ、巨額投資が始まる

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2010/5/26 9:00
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政策の責任を負う米Department of Energy(DOE、エネルギー省)長官のSteven Chu氏は、PHEVやEVについて「他国への石油依存度を下げ、消費者の支出を減らせる。さらに最先端の自動車開発や生産技術で世界をリードし、高品質な雇用も確保できる」と、重要性を訴える。政策の実現に欠かせない充電インフラには「電力網の高度化が不可欠」(Chu氏)であり、スマートグリッドの構築に110億米ドル(約1兆円)規模の資金を投入する(図4)。

図4 米国は充電インフラ前提のスマートグリッドを目指す(日経エレクトロニクス2010年3月23日号の特集「充電インフラを握れ」より抜粋)

図4 米国は充電インフラ前提のスマートグリッドを目指す(日経エレクトロニクス2010年3月23日号の特集「充電インフラを握れ」より抜粋)

こうした政府の動きを受け、米国では多くの企業がEVの充電インフラの開発に取り組み始めている。注目すべきなのは、先のGE社といった大企業はもちろん、これをビジネスチャンスと見た新興企業が続々と参入していることだ(図5)。自動車や電力の分野というと、大企業でないと参入しにくいと思われがちだが、実はスマートグリッドの肝は通信技術や制御技術にある。本質的にはIT(情報技術)ベンチャー企業に限りなく近いのである。

図5 新興企業の参入が相次ぐ  新興企業にとって、充電インフラ業界はIT業界と同じ構図に映る(日経エレクトロニクス2010年3月23日号の特集「充電インフラを握れ」より抜粋)。

図5 新興企業の参入が相次ぐ  新興企業にとって、充電インフラ業界はIT業界と同じ構図に映る(日経エレクトロニクス2010年3月23日号の特集「充電インフラを握れ」より抜粋)。

しかも、米国の電力事業者は日本と違って3000社以上と多い。大手が1社で全電力事業者を相手に充電制御システムを手掛けるようなことはなく、新興企業が自社技術を売り込む余地は大きいのだ。そのうちの1社で、イスラエルで日産自動車とともに充電スタンドの設置を進めている米Better Place社は、こう主張する。「イスラエルで200万台のEVを導入すると、新たな発電設備が2345MW(メガワット)分必要となる。実現には、送電用変電所を1基、配電用変電所を10基、変圧器を18台、2158kmの電線を設置する必要がある。投資額は45億8600万米ドル(約4100億円)に達するだろう。しかし我が社の充電制御システムを使えば、287kmの電線の追加で済み、4億7100万米ドル(約420億円)の追加投資で十分だ」(同社North America, Vice PresidentのJason Wolf氏)。

図6 米GridPoint社が試作した「VCM(Vehicle Connectivity Module)」  電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に搭載し、車内の情報を収集してサーバーに送出する機能などを備える。

図6 米GridPoint社が試作した「VCM(Vehicle Connectivity Module)」  電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に搭載し、車内の情報を収集してサーバーに送出する機能などを備える。

こうした「充電インフラベンチャー」として、このところ注目を浴びているのが、米GridPoint社である。同社は、世界有数の投資会社である米Goldman Sachs社からバックアップを受けていて、既に220億円程度の資金を集めたという。豊富な資金を背景に、この2年間で、必要な技術を有する企業2社を買収し、10社との提携関係を結んだ。現時点で12社の電力事業者と共同開発を進めており、既に充電インフラ向けの電力情報管理システムの開発をほぼ終えた段階にあるという。

GridPoint社が開発した充電制御装置「VCM(Vehicle Control Module)」を搭載したEVやPHEVを充電インフラにつなぐと、VCMは同社のサーバーに対し、車載電池の充電状態や車両の位置情報、走行距離などの情報を伝える(図6)。これに基づいてサーバーが充電時間や充電量などを遠隔制御する。現在、トヨタ自動車の「プリウス」の電池を米A123 Systems社製のLiイオン2次電池に移し替えた改造車など300台を使って、VCMの運用実験を始めている。

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