電気自動車の充電インフラ、巨額投資が始まる

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2010/5/26 9:00
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両社は、未来の充電インフラを見据えて研究を進める。具体的には、EVの蓄電池から電力網へと放電させることで新しいサービスを生み出そうという「Vehicle to Home(V2H)」や「Vehicle to Grid(V2G)」の実現を目指す(図2)。V2Hとは、EVの蓄電池を住宅内の電力利用に役立てる構想のこと。V2Gは、そのV2Hの考えをさらに広げ、地域にある多数のEVの蓄電池を統合管理して電力網の運用に生かす構想である。2社は、3年かけて研究を進める。「まずはシミュレーションにより様々なアイデアを試す。その後、モノになりそうなテーマを選んで実験を始める」(Shei氏)計画である。

図2 V2Hが実現すれば住宅内はすべて直流でまかなえる(日経エレクトロニクス2010年3月23日号の特集「充電インフラを握れ」より抜粋)

図2 V2Hが実現すれば住宅内はすべて直流でまかなえる(日経エレクトロニクス2010年3月23日号の特集「充電インフラを握れ」より抜粋)

大量のEVの充放電を制御するV2Gが実現すれば、前述のように太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入にも貢献する。例えば、急に日がかげって太陽電池などの出力が急激に落ち込んだ際、数十~数百台のEVから電力網に電力を供給することで、停電などが減らせる。こうしたEVがもしなければ、電力会社は自前で充電設備に投資しなければならない。つまり、電力会社はEVとスマートグリッドの結合によって投資を減額でき、その一部をEVのユーザーに還元する原資にできる。こうなると、EVのユーザーは無料で充電できる可能性さえ出てくる。

住宅にも変革が及ぶ

現時点でV2Gについては大学などにおける研究段階にあるが、V2Hに向けて取り組む企業は既に登場し始めている。例えば三菱自動車が2009年10月の「東京モーターショー」で発表したプラグインハイブリッド車(PHEV)のコンセプトカー「Concept PX-MiEV」。同車は、搭載するリチウム(Li)イオン2次電池から住宅側に電力を取り出す機能を備える。

V2Hは車両だけでなく、EVの電力を受け入れる側の住宅にも変革をうながす。それが、直流給電技術の導入である。EVの2次電池や、このところ家庭に普及が進んでいる太陽電池などは、いずれも直流で電力をやりとりするデバイスだ。つまり太陽電池の有効利用などによって商用交流電力の買電が大幅に減れば、住宅内のほとんどの電力は直流となっていく。これを、直流で動作するLED(発光ダイオード)照明や家電機器などでそのまま使えば、変換損失が小さくなり、電力の利用効率が高まる。

図3 直流コンセントのモックアップ  「CEATEC JAPAN 2009」でパナソニック・グループが出展した、低電圧の機器に向けた直流コンセントのモックアップである。

図3 直流コンセントのモックアップ  「CEATEC JAPAN 2009」でパナソニック・グループが出展した、低電圧の機器に向けた直流コンセントのモックアップである。

こうしたEVと住宅の連携時代を見据えて、積極的に開発を進めているのはパナソニック・グループである。2009年には直流給電用のコンセントを発表(図3)。再生可能エネルギーとEV/PHEVによる"直流発電所"を家庭内に作るのに必要なHEMS(home energy management system)技術にも取り組んできた。さらに、EVへの充電スタンドも手掛け始めた。

新興企業がなだれ込む米国

こうした充電インフラ開発の重要性に政府としていち早く目を付けたのが、米国のオバマ政権である。同政権が重視する「雇用創出」と、エネルギー安全保障にかかわる「脱石油」に、PHEV/EV産業の創出と育成はぴったりの政策だからである。

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