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京都大学が紙を透明に、熱膨張率が低く「有機ELの基板に使える」

京都大学 教授の矢野浩之氏は、紙、またはその原材料のパルプに樹脂を加えるなどして透明化する技術を開発したと発表した。京都大学が2012年8月24日、東京で開催した「新技術説明会」で発表した。透明な有機ELの基板や有機薄膜太陽電池の基板、電子ペーパー、クルマの窓材、包装容器などへの応用を想定しているという。

矢野氏によれば、パルプを構成する繊維「セルロースナノファイバー」は、幅10~20nmで長さ1μm以上と細長く、鉄鋼の7~8倍の強度と、1.5g/cm3という軽さを併せ持つ。これを樹脂を加えることで、膨張率の低い透明シートを作製できると考えたという。

具体的には、パルプを脱水する過程で、セルロースナノファイバー同士の凝集を防ぐ工夫を加え、その上でアクリル樹脂を繊維間に含浸させることで透明化した。

こうして作製した透明シートは、厚さが100μmで光透過率が87.8%。20~150℃での線熱膨張係数が8.30ppm/Kである。線熱膨張係数の値は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)シートの約3分の1と低く、ガラスの値に近い。

矢野氏によれば、既に作製例がある、パルプを分解するなどして得たセルロースナノファイバーを樹脂に混ぜた透明シートの線熱膨張係数は12.1ppm/Kである。今回の線熱膨張係数の値がより小さくできたのは、「パルプを分解せずに透明化したことで、より繊維の配向がそろっているからと考えられる」(矢野氏)という。

脱水したパルプに含浸させる樹脂にアクリルを選んだのは、アクリルの屈折率が1.52~1.60で、セルロースの同1.57に近いため。「屈折率が同程度であれば、アクリル以外でもよい」という。

樹脂は一般に温度によって屈折率が変わる性質があるが、今回は温度を90℃にまで上げても光透過率の変化は小さい。これは「パルプが樹脂の熱膨張を抑えているため」(矢野氏)と考えられるという。

矢野氏は2011年11月に、甲殻類のカニの殻を透明化した材料を用いて、透明シートを作製する技術を開発したと発表している。

(日経エレクトロニクス 野澤哲生)

[Tech-On! 2012年8月24日掲載]

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