無駄なやつは一人もいない  本田宗一郎のDNA(後編)

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2012/8/23 7:00
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【今回のバカヤロー!】 「目的は利益だ」

最近は米国流の経営がすごい勢いで広まっていて、利益を第一に考える経営者が増えている。中には「我が社の目的は収益を上げること」と言い切る経営者もいる始末。果たしてそうだろうか。

ホンダは、利益を結果と考える。我々がすべきことは新しい価値を生み出し、それを顧客に提供して喜んでもらうこと。その結果、バイクやクルマが売れて収益を上げられるのである。では、利益第一と考えるのと利益は結果と考えるのでは何が違うのか。最大の違いは、利益第一にすると、顧客をだますという悪魔の誘惑にさらされることだ。

もちろん、利益第一と考えている企業のすべてが顧客をだましているわけではない。そんな企業は多くないことも承知している。しかし、無視できるほど少数の例外でもない。業績が悪化して、当面回復が見込めないとき、悪魔がささやき始める。高級料亭による前の客の料理の使い回し、老舗の和菓子店による製造日の改ざん、食品メーカーによる産地・原料偽装などが相次いで発覚したのはわずか4~5年前のことだ。

顧客をだますことが経営者の直接の指示によるとは限らない。経営者が利益至上主義を打ち出すと、部下はトップの顔色を見るから会社全体が利益至上主義に染まっていく。さらに現場の判断で、顧客をだますまではいかないまでも、都合の悪い情報にはわざと触れなかったり、責任や損失を他の部署や取引先に押し付けたりと、さまざまな"利益拡大"のテクニックが駆使されることになる。こうした情報は上には流れないので、経営者は自身の利益重視の経営が功を奏して経営改革が成功したと勘違いする。

しかし、そんなことは長くは続かない。ある日、一気に付けが回ってくる。「目的は利益」と言っている経営者のおまえ、バカヤローだ。

(連載終わり)

小林三郎(こばやし・さぶろう)
 中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授。1945年東京都生まれ。1968年早稲田大学理工学部卒業。1970年米University of California,Berkeley校工学部修士課程修了。1971年に本田技術研究所に入社。16年間に及ぶ研究の成果として、1987年に日本初のSRSエアバッグの開発・量産・市販に成功。2000年にはホンダの経営企画部長に就任。2005年12月に退職後、一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授を経て、2010年4月から現職。2012年7月30日に「ホンダ イノベーションの神髄」(日経BP社)を上梓。

[日経ものづくり2010年7月号の記事を基に再構成]

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