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半数が「田舎で暮らしたい」、500人調査(若者、地方へ)

低温世代の経済学パート4(4)

豊かな自然、安い物価、人のぬくもり……。大都会では得難い田舎暮らしの価値を享受しようと動き出す若者が増えている。どれくらいの人が田舎暮らしを望んでいるのか。いざ都会を離れ、田舎で暮らすにはどんな条件を求めているのか。バブル期の熱狂的な都会ライフを知らない20~30代の「低温世代」と呼ばれる若者575人に率直な思いを聞いてみた。

「敷地100坪の一戸建てに憧れる」――8割

まずアンケートから見えてきたのは、想像以上に田舎暮らしに憧れる人が多いことだ。「地方で暮らしたい」と回答した若者は半数近い47.3%に上った。

田舎に憧れを抱く理由は様々だ。「残業なしで、プライベートが充実」(30代前半、東京都の女性)「サザエさんのようなご近所環境」(20代後半、北海道の女性)「家庭菜園で自給自足。車も乗り回せる」(20代後半、兵庫県の男性)――。

「100坪の敷地に庭も駐車場もある一戸建て」。都会では多くの人が手の届かない住環境には79.3%が「憧れる」「まあ憧れる」と回答した。「通勤ラッシュと無縁の生活」は83.7%、「豊かな自然に囲まれた生活」も69.0%と高水準だった。

ただ田舎暮らしは、都会では当たり前の利便性を捨てることでもある。どんな環境であれば、実際に田舎で暮らせるのか。

 アンケート調査は日本経済新聞電子版と婚礼施設情報サイト「みんなのウェディング」が共同で実施。同サイトに登録する20~30代の会員を対象にインターネットを通じて2月23~29日の1週間呼びかけ、575人から回答をもらった。地域別にみた回答者の内訳は、都会在住者(3大都市圏)が72.7%、地方在住者は27.3%だった。

近くにないと困るものを聞いたところ、7つの選択肢のうち、回答が半数を超えたのは、意外にもコンビニエンスストアと総合病院だけ。大手学習塾に至っては、わずか7.1%だった。

さらに田舎暮らしをするうえで、どうしても避けて通れないものとして、不便な公共交通網や整備が遅れた生活インフラ、濃密すぎる近所付き合いなどがある。

「水洗トイレなしは耐えられない」――9割

「耐えられない」という回答が88.2%を占めたのが、水洗トイレのない生活。次いで電車やバスが1時間に1本という交通網に耐えられない人が65.2%だった。月1回は地域行事に参加しなければいけないといった濃密な近所付き合いを嫌う人は41.0%にとどまった。

これまで田舎と都会のどちらで暮らしてきたかによって、田舎暮らしに対する意識に大きな差があることも分かった。

特に差が顕著だったのは、公共交通網に対する認識だ。電車が1時間に1本の生活が「耐えられない」という回答を地域別にみると、地方にずっと住んでいる人は36.9%にとどまった。

これに対し、都会にずっと住んでいる(または地方から都会に出て10年以上の)人は78.3%が「耐えられない」と回答した。都会に出て10年未満の人は中間の68.3%だった。

時刻表を気にかけなくても、5分も待てば電車が来る都会の利便性に慣れるほど、田舎の不便な公共交通網がストレスに感じられるようだ。

都会生活短い人ほどラッシュが苦痛

一方、通勤ラッシュのない生活に「憧れる」と回答したのは、都会に出て10年未満の人が91.3%で最も多く、都会にずっと住んでいる人の84.4%を7ポイント近く上回った。

都会では朝の通勤ラッシュが消える日はない(JR新宿駅ホーム)

地方と都会の両面を知っているからこそ、通勤ラッシュのない生活に戻りたいという思いが強いようだ。

ちなみに、既に通勤ラッシュの少ない地方にずっと住んでいる人は77.1%だった。今回の連載企画で取材した島根県出雲市に住む山崎智子さんはこう話してくれた。

「通勤ラッシュといわれても、電車に座れない状況さえ知らない私たちには想像がつかない」

なかなか都会の人には実感しづらい田舎暮らしだが、地方から都会に移り住んだ人であれば、その良さがはっきり分かるはず。そこで最後にこんな問いかけをしてみた。「都会に出て分かった古里の良さはありますか」――。

地方から埼玉県に移り住んだという30代後半の女性はこんな回答を寄せてくれた。「物価も安いし、水もおいしい。都会はすさんでいるように感じる」

地元の名所・旧跡で結婚を祝う「地元婚」を選ぶカップルも増えてきた(愛媛県松山市の道後温泉本館前)

◆「地元婚」選ぶカップルも

今回のアンケート調査を共同で実施した「みんなのウェディング」運営会社社長の飯尾慶介さんは「最近、地元の名所・旧跡で地元の食材を使って結婚式・披露宴を挙げる『地元婚』が増えてきた」と感じている。一生に一度の晴れ舞台をホテルや専門式場で華やかに催すのではなく、「古里」を全面に出した形で祝いたい――。飯尾さんは若者世代の結婚式像の変化について「古里や人のつながりを重視する人が増えた表れではないか」とみる。こうした若者の強い地元意識は、田舎暮らしへの憧れとも重なる。

大都会を夢見るのではなく、人のつながりや緩やかな時間に包まれた田舎にひかれる低温世代の若者は今後さらに増えるのかもしれない。

=おわり

 低温世代 就職氷河期の洗礼を受け、やっとのことで会社に入っても賃金は上がらず、好況といった浮かれた状況は知らないまま社会人として生活している世代。いくら働いても給料は上がらないので転職して給料を増やしたいという気持ちもあるし、やりたいと思う仕事もあるのだが、やっとの思いで入れた会社だから、失敗したらと思うと思い切って挑戦することもできず、そのまま現在の会社に残っている。
※「現代用語の基礎知識」(自由国民社)より抜粋
※連載企画「低温世代の経済学パート4―若者、地方へ」の執筆・構成は、小栗太、西雄大、岡田真知子、宮坂正太郎、諸富聡が担当しました。
読者からのコメント
田舎のエンジニアさん、50歳代男性
簡単に考えていらっしゃる方が多い気がします。地域の行事に参加できない方が増えるだけなら田舎にこないでいただきたい。田舎を東京みたいに変換されても困ります。来るもの拒まず精神は持ち合わせていますが田舎の文化は変えたくないし守りたい。自己主張ばかりじゃなく、”思いやり”の生活を日々過ごしてみたい人こそ、よりウエルカムです。
1さん、30歳代女性
田舎生活は私には無理。日本のような一極集中の経済様式では、人も一極集中(こと東京に)。地方に住みたいなら、自ら地方に引っ越して(戻り)、地方で起業するなどして、自分の思い描く便利な街に作り上げていればよいのでは。地方に「憧れ」ながら「都会」の利便性を享受している。中途半端な思いを持ち続けて生きるか、行動に移すか、自分が決めればいい。それ以前に、日本で生活していること自体、田舎と言っても道は舗装されていて生死に係るほど困る所は無いし、都会も自然が有る。どこへ行っても、生きるのに困るほどの場所は無いかと。
カモノハシさん、30歳代男性
私は都心部からIターンで田舎に移り住んだ者です。田舎といっても程度があると思います。近くに新幹線の駅があり、すぐに高速道路に乗る事ができるようなインフラが整っている田舎は稀であります。そのようなインフラが整っていない田舎が多数存在しているのが現状です。また、スーパーや飲食店での都会では当たり前だと思っていた接客マナーなども希薄に感じます。農作業も少しサボればすぐに雑草が生えてきてしまいます。田舎では自分のスキルが活かせる仕事が少なく、収入も確実に減ってしまいます。UIターンを積極的に受け入れている市町村もありますが、良い事ばかりではなくマイナスの部分も情報を発信して取り組んで頂きたいと感じます。
バルスさん、30歳代女性
本シリーズの記事は興味深く読ませていただいていますが、データ分析が十分なされていない点や、論理展開が強引すぎる点が多くあります。テーマは面白いので、もう少し丁寧に掘り下げていただきたいです。 田舎で暮らしたいと回答した人は半数でも、生活環境、就業その他をリアルに考えて、都会暮らしを選んでいるのが現実なのではないでしょうか。
田中幸司さん、20歳代男性
低温世代の経済学を拝見しての感想です。 若者がなぜ田舎に惹かれるのか?その理由や社会的背景を最近考えます。同時に田舎にいる人はどう変化したのか?といった別の角度からも知りたいです。 私も20代。東京の大学を出て、東京で働く。キャリアを高め、年収を上げる、そんな生活を思い描く一方で、お金に頼らない、生活を築けないものかとも考えています。両極の考えが自分の中に存在していることに自分でも不思議な感覚です。幸福の経済学では、年収や名誉は幸せにつながらないという歴史的な結論がありつつも、両立できないものかと考えてみたいです。
しまっぷすさん、40歳代男性
このアンケートは今の会社の地方支店に勤務することが田舎暮らしなのでしょうか? 車通勤できる環境、若しくは車通勤ができる会社も田舎暮らしの選択肢になるのではないでしょうか。記事中になぜ駐車場という言葉が出てきているのでしょうか?田舎暮らししてもサンデードライバーになる必要はない気がします。なぜ公共交通機関ありきのアンケートなのか疑問です。
田舎暮らし落第生さん、60歳代男性
定年まで3年を残して東京の会社から田舎に戻りました。500坪の敷地に零下10度の真冬でも半袖一枚で家の中は過ごせる総木造の家を新築しました。一日のバスは朝夕の4本だけ、一番近いコンビニは車で10分(他に商店も無い)という不便性も気にもなりませんでした。互いの距離を行かない近所との付き合いも受け入れる事は出来ましたが、どうしても溝を埋める事ができなかった事がありました。 それは、同世代との価値観、社会通念の大きなズレで腹を割ってゆっくり話したり、酒を飲む相手が見つからなかったことです。結局、今は田舎はたまに戻る程度であたらしく仕事を見つけ都会生活に戻っています。
50歳代女性
父の転勤で田舎に住んだ事もありますが、主に東京住まいです。地元に住むということはそれなりに周囲の目を気にします。東京が一見すさんで見えるのは、実は各地方からの寄り集まりで、地元意識が薄れているからでしょう。逆説的ですが、古里帰りが増えて、江戸っ子比率があがれば、東京もまた良き古里の様相を取り戻すでしょう。
夕日さん、20歳代男性
去年地方から都会の会社に入りましたが、地方はそもそも徒歩・自転車・自家用車通勤が普通なのでバス・電車通勤は一般的ではありません。日本海側の都市に住んでいましたが、バスが埋まっているのを見たのは雪が積もった日の朝だけでした。本数が少ないのは「田舎だから」ではなく単純に「公共交通機関に乗らなければならない需要が少ないから」です。
ばすおさん、30歳代男性
今回のアンケート結果をみて、不便な暮らしは嫌だけどゆっくりと自分の時間を持ちたい、というワガママを強く感じました。私自身が電車は30分に1本の田舎から東京へ出てきているため、田舎の不便は何も感じませんし、田舎にあこがれる、ということもそれほどありません。恐らく、「1度は住んでみたい」という程度なのでしょうが、中途半端な希望は、地方出身者として迷惑に感じます。
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