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ボランティアツアー続々、その中身とは?

東日本大震災から3カ月あまり。ゴールデンウィークにピークを迎えたボランティアの数は急激に減少している。全国社会福祉協議会がまとめた数字によれば、岩手、宮城、福島3県で活動したボランティア(災害ボランティアセンターに登録して活動したボランティアの総数)は、5月2日~8日の5万4100人をピークに、現在は1週間で3万人に満たない状況だ。3月から5月の延べ人数で36万7400人。まだまだボランティアが必要な状況に、各団体はゴールデンウィーク以降もボランティアに行きやすい状況を整えることに躍起だ。

各地方の社会福祉協議会や旅行代理店、バス会社などが東日本大震災で被災した地域へ行くツアーを次々と企画。それに合わせ、観光庁でもボランティアと観光をセットにした「ボランティアツアー」を積極的に展開するよう推進している。

そういったツアーの登場により、「ボランティアツアー」という言葉も浸透。「6月に入ってからボランティアツアーの紹介ページへのアクセスが急増している。6月前半からは『ボランティアツアー』という言葉で検索し、訪問するユーザーが一気に増えた」(内閣官房震災ボランティア連携室と連携する助け合いジャパン)。

例えば、JTBのボランティアサポートバスプランは、ボランティアを中心としたツアーで、宮城県内でボランティアをする1泊3日のプラン。価格は1万7600~2万600円で、秋保温泉に宿泊。素泊まりで、食事は自身での手配となる。

JTBのボランティアサポートバスプランの基本日程

トップツアーも各種ボランティアツアーを企画。例えば、地球の歩き方と共同で行う「東日本大震災 復興支援 ボランティアツアー」は、2泊5日のツアーで、朝食、昼食、夕食各2回がついて3万7000円だ。岩手県大槌町、大船渡市などでボランティアツアーを行う。

近畿日本ツーリストは、宮城県の南三陸町で「福興市」とボランティアをセットにしたツアーを行っている(南三陸町ボランティア&応援ツアーin福興市)。0泊3日のコースで2万4800円(義援金5000円込み)だ。5月末に行ったツアーの内容は、土曜深夜に東京をバスで出発。日曜日に福興市の運営手伝い(ボランティア)を行い、福興市で買い物をし、日曜の夜に現地を出発、月曜日の朝に東京に戻ってくるというもの。

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【近畿日本ツーリストの南三陸応援ツアーの様子】

南三陸町の沿岸部にバスを止め、語り部ガイドの菅原幸子さんのお話を聞く。震災直後、この世の見納めと思いながら必死で建物の上階に上がったこと、食べ物がなくてペットボトルのキャップ一杯の水で過ごした日のことなどを語った
南三陸町の防災庁舎を見学。津波到達直前まで防災放送で町民に高台への非難を呼びかけた多くの職員が命を落とした場所だ
福興市では、トイレの掃除、ゴミの分別、募金の呼びかけなどのボランティアを行う
福興市の運営ボランティアが終了したあとは、各々福興市で買い物をするなどして楽しむことができる
15時頃に福興市を後にし、仙台近郊の秋保温泉へ向かう。一日の疲れを落とし、19時過ぎに再び東京へ戻るバスに乗り込む

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各社、支店単位で各種各様のツアーを実施しており、あくまでこれらは一例に過ぎない。ほかにも各地域の社会福祉協議会が設定するツアーなど、ゴールデンウィーク後も様々なツアーが企画されているが、すぐに満席になるケースも多く、JTBのツアーは「5、6月出発で5本設定し、予約開始から1週間で全て満員。その後、追加設定し、5~6月の合計10本が満席」といった状況だ。

こういったツアーの背景には、規模が甚大な災害なだけに、移動手段、現地での活動、宿泊や食事などに不安を抱えるボランティアの負担を少しでも軽減しようとする各団体の思惑がある。事実、JTBやトップツアーのツアーでは、8~9割が1人で参加している。近畿日本ツーリストのボランティアツアーに参加した山村美樹さん(20)は、「1人で何かをするには情報が少なすぎたし、不安もあった。初めて現地に入るなら、プロの方の力を借りてと思った」と話す。

とはいえ、ボランティアツアーを主催する側にも難しさが残る。未曾有の大災害を前に「ツアー」という形で初心者が多いボランティアを現地に送ることが「いいこと」なのか。トップツアーはツアーを組む判断に至るまでに約3週間社内で議論を続けた。「ボランティアが泊まる宿泊施設があるなら現地の人に泊まらせるべき、観光気分で来られても現地の人は困る、などネガティブなご意見もあるため、判断には長い時間を要した」という。

そういった難しさを払拭してくれたのは「現地の声」だった。各社、担当者が何度も足を運び、徹底的に現地のニーズを把握した上でボランティアツアーを行うことを決断してきた。「肩肘張らずに来てほしい、義援金を送ってもらうだけでなく、絆を意識した活動をやってほしい、そう言われて実現に踏み切ることができた」(近畿日本ツーリスト)。さらに6月7日に観光庁からボランティアと観光ツアーの推奨が出たことは「ボランティアツアーをやる上で大きな支えになる」(トップツアー)。

まだまだボランティアは足りていない

ボランティアの数は現状でも「まったく足りていない状況。写真洗浄、支援物資の仕分けなど、当面作業は尽きない」(南三陸町災害ボランティアセンター)という。南三陸町は比較的ボランティアの数が多い地域と言われているため、南三陸町でさえその状況であれば、ほかの地域は推して知るべしだろう。

事実、社会福祉協議会などがまとめるボランティア受け付け状況を見ても、引き続き各地でボランティアを募集している。それ以外にも、災害ボランティアセンターにはニーズとして上がってこない「目に見えないニーズ」も多い。南三陸町の災害ボランティアセンターでは、「今後は、女性専用のテントスペースを作ったり、テントのレンタルをしたりと、ボランティアの方にもっと来ていただけるよう受け入れ体制も整える」という。

「もう後ろなんて振り返ってられない。前を向くしかない」(南三陸町長の佐藤仁氏)。先が長い復興への道のり。「一人ひとりが自分の中に落とし込んで、現実を自分の中に"焼き込む"。そうして初めて自分が何をしたらいいかが分かると思う。きっかけはボランティアでも何でもよいので、とにかく来てもらいたい」(福興市実行委員長の山内正文氏)。これからは街の復興だけでなく、生活や雇用の復興が本格的に始まっていく。復興への道のりはまだまだ始まったばかりだ。

【南三陸町災害ボランティアセンターで行われていた思い出の品を救い出すプロジェクト】

南三陸町災害ボランティアセンターでの写真洗浄の作業。海水に浸ってしまいインクが落ちてしまった写真
一枚一枚泥を落とし、水につけ、ハケでどろどろになったインクを落とす。顔が写っているような場合は、顔の部分は何とか残るように作業する
作業が終わった写真がずらりと干されている
入谷中学校での展示。教室だけでなく、廊下や階段に所狭しと写真やアルバムが並べてある(第一回目の展示はすでに終了)
写真だけでなく、ランドセルなどの思い出に残る物が展示されていた
「これ、そうかい?」「いや、違うんじゃねか?」と暗い教室で光を当てながら写真を一枚一枚見ていた
気仙沼西高校に通う高校2年生の女性は「卒アル(卒業アルバム)と犬の写真を探しに来ました。少しだけ見つかりました」と笑顔を見せた
【注】ツアーの内容や価格は取材時のもの。内容や金額は現在と異なる場合があります。詳細は各社のホームページなどで確認を

(日経ウーマンオンライン 染原睦美)

[WOMAN Online 2011年6月17日掲載]

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