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安否確認や情報収集にPC・スマホを活用

災害時のIT対策マニュアル(下)

 災害発生後、スマートフォンやパソコンなどのIT機器が利用可能なら、情報収集のためのツールとして積極的に活用しましょう。特にスマートフォンは頼りになります。東日本大震災の直後、携帯電話事業者は混雑によるネットワーク全体のダウンを防ぐために音声通話には最大で90%の発信規制をかけたものの、パケット通信は比較的つながりやすいまま。このため、携帯のeメールはもちろんのこと、例えばスマートフォンの「Twitter(ツイッター)」アプリで連絡を呼びかけたり、ブラウザーで災害情報を集めたりすることが可能でした。スマートフォンのテザリング機能を使えば、パソコンで情報収集することもできます。

東日本大震災の被災地では、携帯電話の基地局の多くが停電で利用できなくなってしまったが、現在では携帯電話事業者各社の対策も進んでいる。NTTドコモは、全国の65%に相当する約1900カ所の基地局で、24時間以上稼働できるバッテリーを内蔵する工事を行った。ソフトバンクモバイルも約2200カ所の基地局で同様の工事を進めている。停電しても、しばらくの間はパケット通信が利用できる可能性は高い。

また、東日本大震災の時には、公衆無線LAN事業者が、自社のネットワークを無料開放する緊急措置を取った。停電でなければ、近くの駅や飲食店のアクセスポイントで無線LANを利用できる可能性がある。

安否確認では特に役立つ

災害時にまず必要なのは、二次災害を防ぐための「防災情報」だ。地震の場合は、津波や余震があるのか、といった情報が必要になる。

自身の安全が確保できたら、家族や知人などの「安否情報」を確認したい。例えば、災害で鉄道などが止まって帰れなくなったときも、家族の無事が確認できていれば、無理に徒歩で帰宅する必要はない。

災害が長引いたら、電力や交通はいつごろ復旧するのかといった「生活情報」も必要になる。ライフラインが止まった場合は、水や食料の配給スケジュールなども知りたい。

さらに甚大な被害を受け、避難所や自宅で被災生活をすることになったら、ボランティア活動、見舞金、仮設住宅などの支援を受けるための「被災者支援情報」も必要になる。

これらの情報のうち、インターネットが特に有効なのは安否確認だ。通常、電話が利用できなくなったら公衆電話などから「災害用伝言ダイヤル」(171)にメッセージを残すしかない。しかし、伝言ダイヤルは番号の入力などに手間が掛かるし、通信の混雑のために利用できない可能性もある。一方、東日本大震災以降、携帯電話のパケット通信やパソコンで使える安否確認サービスは一気に増えた(図1図3)。

図1 災害時でも、携帯電話やスマートフォンのパケット通信は使えることが多い。通話ができない場合にどの手段で安否を確認するのか、事前に家族などと話し合っておくとよい
図2 米フェイスブックは、2012年2月27日から日本限定で「災害用伝言板」サービスをFacebook上で始めた。ログインして「無事を報告」ボタンを押すだけで安否を登録できる
図3 東日本大震災後、災害用の安否確認サービスの選択肢が増えた。災害によっては一部が使えないこともあるので、「被災後は、メール→災害用伝言板→伝言ダイヤルの順に試す」というように、優先順位を決めておくとよい

全てのサービスを覚える必要はない。自分や家族、親戚が利用できる安否確認手段を調べ、災害時にどれを利用するか、家族内で優先順位を付けておくとよいだろう。安否確認サービスだけでなく、家族にメールを同報できるようにしたり、共通のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に登録したりするのも手だ。

図4 ヤフーの「Yahoo!防災速報」は、地震や津波以外に豪雨や停電も通知する(左)。日本デジタルオフィスが日本マイクロソフトと協力して開発した「J!ResQ」は、あらかじめ指定した連絡先に音声メッセージを簡単に送信できるアプリ(右)。どちらも東日本大震災後に開発されたサービスだ

声でリアルタイムのやり取りをする必要があるときは、「Skype(スカイプ)」や「Viber(バイバー)」「LINE(ライン)」など、スマートフォンやパソコン向けの音声通話サービスを試してみよう。音声通話アプリは、東日本大震災の時も有効だった。あらかじめ家族などにアカウントを作ってもらおう。

電力不足のときはスマホ

災害時でも、パソコンが使える状況なら情報収集は比較的簡単だ。災害情報はニュースサイトやインターネット中継サイトで分かるし、帰宅経路も地図サイトなどで確認可能だ。

しかし、停電になったり、外出時に災害に遭ったりしたときは、パソコンが使えないことが多い。そのときスマートフォンがあれば、安否確認や情報収集の手段として役立つ。スマートフォンの場合、Webブラウザーよりも専用アプリで操作した方が使いやすい。東日本大震災以降、災害時に使えるアプリが一気に増えた。データ量の大きなアプリを災害時にダウンロードするのは難しいので、事前にインストールしておこう(図4図5)。

図5 「MapFan」「家庭の医学」のように、データをスマートフォン内に保持しているアプリなら、通信が途切れたときでも使える

「MapFan」や「家庭の医学」のように、データをスマートフォン内に保存してから利用するアプリは、通信が途切れてしまったときにも利用できるので安心だ。

Twitterでも情報収集

もう一つ、事前に準備しておきたいのがTwitterだ。自分からは発信しなくても、アカウントだけは作り、災害時に役立ちそうなアカウントをフォローしておくとよい。災害時に、関連する情報が自動的にスマートフォンなどに届く(図6)。

図6 Twitterは安否確認だけでなく情報収集の手段としても活用したい。最近は、地方自治体で公式アカウントを持ち、防災情報を流すところが増えている。認証済みアカウントなら情報が比較的信用できる
図7 緊急時に備えてフォローしておくとよいアカウント。「twj」はツイッタージャパンの公式アカウントで、災害時は情報の検索方法などを中心にアナウンスする予定だ

図7では、役立ちそうなTwitterのアカウントをいくつか挙げた。自宅のある自治体や子供の学校、主要な報道機関、通信事業者、ポータルサイトの公式アカウントなどを加えておくのもよい。

ただし、Twitterには誤ったデマ情報も流れてしまう欠点がある。その団体や人物が発信していることをツイッタージャパンが確認している「認証済みアカウント」の書き込みは比較的信頼できるので、それも参考にしながら情報の真贋を判断しよう。

電力確保に役立つツールを防災用品に追加

東日本大震災では、東京電力が広い範囲で計画停電を実施した。スマートフォンやパソコンで情報を収集できるようにしていても、バッテリー切れになるとお手上げだ。使い方にもよるが、スマートフォンはバッテリーが1日程度しか持たない機種が少なくない。できれば、防災用品として備えるラジオを、手回し発電機能付きのものにしておくとよい(図8)。

図8 防災用品の中に手回し発電できるラジオを入れておくと安心だ。写真は東芝エルイートレーディングの「TY-JR50」で、実勢価格は約9000円。スマートフォンにも充電できる。iPhone 4で試したところ、10分間ハンドルを回転させて4~5%充電できた
図9 自動車のシガーライターの電源を家庭用電源に変換できるインバーター。自動車を発電機として利用でき、ノートパソコンなども充電可能になる。写真はサンワサプライの「CAR-DAV120W」。実勢価格は約4000円

自家用車がある場合には、シガーライターを家庭用電源に変換できるインバーターがあると、ノートパソコンなども充電できて便利だ(図9)。

(連載終わり)

(日経パソコン 大橋源一郎)

[日経パソコン2012年3月12日号の記事を基に再構成]

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