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割安株・成長株発掘、資産4割増の総会ウオッチャー

個人投資家奮戦記(7)

株主総会にチェックを入れ続ける投資家に会いに、海浜幕張駅まで来た(千葉市)

3月期決算発表が終わり、6月下旬には株主総会が集中する。招集通知が届き、総会に参加するかどうか思案する投資家も多いだろう。自宅のある名古屋から総会に足しげく通い、株主総会の動向を逐次レポートし格付けをしている投資家に、幕張メッセ(千葉市)で会い、話を聞いた。

2012年5月17日、幕張メッセ国際展示場5ホールでイオンの定時株主総会が開催された。国内大手小売業とあって、会場には1400人余りの株主が参加。株主からは開店時刻前倒しの話題や金融業の展開など質問が相次ぎ、総会は2時間超にわたった。

総会中、質疑応答の様子などを手持ちのボード上で熱心にメモしていたのは、40歳代男性投資家の財満さん(仮名)。総会情報を逐次報告するブログ「株主総会に行こう♪」の運営者だ。今回のイオンの総会の感想を聞くと「最後に質問が打ち切られたのは残念ですが、改善要望に対し『すぐ検討します』と答える場面もあり、まずまずの内容だったのではないでしょうか」とコメントしてくれた。

イオンの株主総会は1400人を上回る株主が出席する大規模なものだった(5月17日)

財さんはバブル崩壊前の1989年から日本株に投資してきた。株主総会に初めて参加したのは、スクウェア(当時)が日曜に開催した1997年の総会。看板ゲームシリーズの「ファイナルファンタジー7」が人気だった時期で、経営陣は質問が尽きるまで丁寧に投資家の質問に答えていたという。「和気あいあいとしていて、総会は想像より楽しいものだな、との印象を受けました」。ただ当時は会社員で、平日の午前に開催することが多い総会には、関心があってもなかなか参加できなかった。

2003年に会社員を辞め、本格的に総会に通うようになる。総会リポートを書くきっかけになったのは、総会に参加できない多くの株主にもきっと役立つと感じたため。06年からブログの運営も始め、年間100件程度のリポートを公開している。

「総会は個人投資家が会社側に接することができる大切な機会であり、株主として参加する意味はある」と考えるからだ。リポートは質疑応答の活発度合いや会社説明会、土産の有無などを総合的に見極め、A~Eの格付け判断を加えている。

長く総会に参加し続け、見えてきたことがある。20分ほどの質疑応答後、他に挙手があるのに議長が「それでは審議も尽くしましたので……」と議案採決に持っていく。これでは株主との対話を避けている印象を受ける。質問に対し回答者が想定問答集を棒読みせず、株主に対し自分の言葉ではっきりと説明する。これは経営に対する自信も読み取れて好印象だ。「自分の言葉で成長性を語れる経営者には投資を検討したい気持ちが沸く」。中小型銘柄の会社では質問が出ないことも多く、財さん自身が問いを投げかけることもあるという。

そんな財さんの日本株投資は、基本的に中長期保有だ。株価の割安さと成長性を分析し、向こう5年で株価が5~10倍になりそうな銘柄を探す。業績・株価推移や経営者の発言など、できる限り調べる。特に狙うのが中小型株で、「良い会社なのに割安に放置されている可能性があり、個人投資家としては狙いやすい」と考える。

思い出深い成功例がいくつかある。1つは1996年に投資したファーストリテイリング。当時、財さんが住んでいた九州の自宅近くの「ユニクロ」店舗で、車列が道路まで続いていたのを見て、投資を決めた。もう1つは2002年に投資したCD・DVDレンタルのゲオだ。同業のCCCに比べ地味な存在で、「店として人気があるのに株価は割安」と感じて資金を投じた。いずれも購入時の10倍以上の株価で売却できたという。

いま日本株投資額の半分強を占めている2銘柄がある。1つは葬儀会社のティア。市場が着実に広がるなか、経営者の葬儀事業に対する思いに魅力を感じたという。もう1銘柄は中古車ディーラーのVTホールディングス。国内にとどまらず海外の自動車ディーラーも子会社化し、一段の成長を見込んでいる。中小型株への集中投資は当然、高い株価変動リスクを伴うが、いったん保有した以上は多少下がっても成長を信じて持ち続けるという。

株式売買益・配当で構成する収入から生活費などを差し引いた資産額は2012年4月末時点で2007年末比4割増。4月以降、大型株を中心に相場が崩れるなか、良好な運用成績を維持しているという。6月の総会シーズンに向け、リポートをつづりながら、新たな成長株発掘にも身が入りそうだ。

(日経マネー 南毅)

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