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石田純一氏が語る日本の財政危機

世の中の流れを読む「数字力」向上のススメ

 俳優の石田純一さんは、11年に及ぶ下積み時代を経て人気を獲得。その後「不倫は文化だ」発言で仕事も収入もすべてを失った後で再び脚光を浴びるというように、何度も逆境を乗り越えてきました。お金との付き合い方でも、億単位の借金をした後に完済するなど、どん底からはい上がった経験の持ち主です。
 そんな石田さんが運とお金を呼び込むために重視するのが、データを活用する力(数字力)。今回は、石田さんと経営コンサルタントの小宮一慶さんが数字力の重要性について、語り合います。

小宮 石田さんは、経済や政治の動きを把握するために、以前から「純一ノート」[注]をつけて、意識的に数字をクローズアップすることを習慣にしている、とうかがいました。

石田 数字力をつけることの大切さ自体は徐々に分かってきたことなんです。ニュースの中から気になる数字をつけることが習慣化するなかで、数字をきちんと把握するのは重要だな、と。

小宮 私がよく言う話ですが、「熱海─小田原間はトンネルが多い」というところを「熱海─小田原間にはトンネルが10ある」といえばすごく具体的になります。さらに「熱海─小田原間にはトンネルが10あり、最後のトンネルを出て約3秒後にのぞみは小田原駅を通過する」といえば、まるで、自分が新幹線に乗っているかのように、リアル感が出る。数字を使って話を具体化することで、自分の話自体も非常に説得力を増すことができます。それが数字の持つ力であり、ひいては、その人自体の実力にもつながっていくのです。

数字と数字を関連づけることで発想力が培われる

石田 僕は数字から妄想する、ということもよくします。たとえば、地球の人口は2009年時点で約68億人でした。世界全体のGDPが約50兆ドル。「じゃあ、1人当たりは?」というように数字と数字を関連づける遊びをしたり、この間は本を読んでいて地球が誕生して65億年たっているということを知り、「あれっ、なぜか世界の人口と数字が近い」と考えたりしました。

ちょっと"数字オタク"だったりしています(笑)。

石田純一さん(左)と対談した経営コンサルタントの小宮一慶さん(右)。小宮さんは、十数社の非常勤取締役や監査役を務める。著書は『数字力養成講座』(ディスカバー21)など多数。小宮コンサルタンツ代表

小宮ははは。僕もよくありますよ。でも、この数字と数字を関連づけるというのは、数字力を身につけ、説得力をつけていくうえでとても大事なプロセスになるんですよ。数字と数字を関連づけていく作業をすること自体が、数字に対するリテラシーを高めることになる。物事と物事をつなげて考える癖をつけることで、飛躍的に発想力が豊かになるというメリットもあります。石田さんは、無意識のうちに数字力をつけるトレーニングを毎日しているんですね。

米国債の格下げニュースで数字力向上を図る

小宮 では、そんな数字オタクの石田さんに、問題を出してみましょう。欧州の経済不安が取り沙汰されていますが、自由経済の象徴ともいえる米国も2011年8月に国債が格下げになりましたね。ズバリ、この理由はなんでしょう?

石田 それは借金が増えすぎたからですね。「債務残高」が増えすぎたから、ってことですかね。

「純一ノート」の記入例
[注]新聞や本を読んで、象徴的な数字や気になった言葉を記入する石田さんのノート。石田さんは、ノートに書き出す習慣を大学時代から今でも続けており、移動時もバッグに入れて片時も離さないという。

小宮 そうです。では、具体的にいくらの債務残高だったのでしょうか?

石田 う~ん。これはむずかしい。

小宮 米連邦政府は、法律が定める債務の上限額、14.2兆ドルを引き上げる決定をしたことがきっかけだったんです。では、この14.2兆ドルは日本円にするといくらでしょう?

石田 ざっくり1000兆円くらいかな。

小宮 そうです。約1100兆円です。これは、日本の1年の予算(約92兆円)の12年分に当たる金額になるんですよ。

石田 なんか、とてつもない金額ですね。

ひとつのニュースから連想することで経済が見える

小宮 では、どうして米国はこんな財政赤字国になってしまったんでしょうか?

石田 なんかリーマン・ショックが影響している気がするな……。

小宮いいところを突いてきましたね。そうです。リーマン・ショックの影響で、米国経済が停滞してしまった。その景気刺激策として、政府は財政支出という形で市場に大量の資金を投下したわけです。その資金はもちろん、国債で調達している、つまり政府が借金をして作った資金です。

石田 それが、今回の財政赤字という形で表面化したわけですね。

小宮 そうです。では、さらに連想ゲームをしてみましょう。なぜ、リーマン・ショックは起きたのでしょうか?

石田 それはわかります。サブプライム・ローンという、借り手としてはかなり信用度の低い人たちに貸した住宅ローンが景気低迷で破綻したからですよね。

小宮 そうですね。では、どうして、政府はそんな危険な住宅ローンを貸すことを認めたのでしょう。

石田 う~ん。そこまで考えたことはなかったな……。誰でも自分の家を持ちたいと思うけれど、なかなか銀行は貸してくれない。だから、政府がサポートしたってことかな。でも、なぜだ?

小宮 そうです。政府の低所得者対策と合致して、サブプライム・ローンは増加していったのです。米国は多くの移民を受け入れてきたのですが、その一方で貧富の差が激しいという社会問題を常に抱えている。その不満解消のひとつの方法が、サブプライム・ローンだったんです。

米国やギリシャどころではない日本の財政赤字

石田 米国債の格下げひとつをとってみても、こうやって連想ゲームをしていくことで、世界経済が見えてくるんですね。おもしろいな……。

しかし小宮さん。この米国の話って、どこかで聞いたことのある話じゃないですか。そうです、日本の財政赤字の話とそっくりですよね。

小宮 そのとおり。財政赤字というのは、国債の発行残高で測ることができますが、各国の財政赤字度をみるのに、債務残高の対GDP比という数字を使います。

石田 GDPの何倍の債務があるか、ですね。格下げで話題になった米国は109%と100%を超えたことでも話題になりましたね。

小宮 政府の財政赤字が最近話題のギリシャは160%、イタリアは150%、スペインは100%という数字になっています。しかし、これらの数字を断トツで凌駕(りょうが)する国があります。

石田 もしかして日本なんですか。

小宮 そうです。2011年度末で債務残高は1000兆円を超え、対GDP比210%にもなっているんです。

石田 米国が100%を超えたとか言っているところ、日本は200%を超えているんですか? それなのに、あまり騒がれてないのは不思議ですね。

小宮 実際、2011年度の日本の予算(総額92兆2992億円)の約5割近く(44兆3030億円)を国債などの公募金、つまり借金でまかなっているんです。ただ、米国債の場合、海外の政府や金融機関が大量に保有している。米国債を一番保有している国はどこだと思いますか?

石田 日本ですかね。

小宮 惜しい。実は中国でして、1兆1598億ドル(約90兆円)を保有しているんです。もちろん、日本も大量に保有しており、9124億ドル(約70兆円)で、世界第2位です。それ以外にも、多くの政府が保有しているため、米国債の格下げは影響が大きいんです。その点、日本国債は92%が国内で保有されている。そういう意味で、国際的にはあまり話題にならないけれど、実は財政破綻の危険性はかなり高い。ギリシャやスペインが対岸の火事だなんて、とてもいえる状況じゃない。

石田 それにしても、日本国債を保有しているのは、国内の金融機関であり、われわれ国民も個人向け国債をたくさん持っていますよね。

小宮 個人向け国債だけでなく、預貯金だって、その先の運用先は国債ですから、国民1人あたりで考えても相当な国債を保有していることになるでしょう。

石田 みんなが安全だと思っているものが、こうやって数字をたどっていくと、とても危うい存在であることがわかってくるわけですね。

小宮 最悪のシナリオとして、国債の利払いストップ。大量に国債を保有している国内の金融機関が破綻。国の経済活動はまひ状態、ということもありうるわけです。

石田 僕は数字オタクですが、ストーリーを想定して、『こうなるだろう』だから『こうする』みたいに、先に答え合わせをするタイプなんですよ。でも、お金の運用先みたいな話になると、答え合わせができない。それが誰もが感じている今の運用状況じゃないですか。

小宮 そのとおりです。僕も運用の専門家ではないから、これだ、という答えは言えないけれど、自分の資産の一部は日本円ではないもので運用すべきだと思います。

石田 僕は環境が悪いときに積極的に投資する逆張りも得意だけれど、やはり運用については、日本だけというのは、逆張りではなく、リスクなんでしょうね。海外も視野に入れないといけないですね。

数字の世界から明るい未来の日本を想像する

石田 それにしても、僕は日本という国が好きだから、なんとか、債務残高を圧縮して元気になってもらいたい、と思っているのですが、数字の世界から見て明るい材料はないのですか?

小宮 もちろん、財政圧縮が一番だけれど、前向きに考えると、税収が増えることが、借金をしないで済む一番簡単な方法ですよね。そのためには、税金を払う企業や個人が元気でないとダメ。

石田 経済の活性化ですね。日本には、日本でしかできない産業がたくさんある。それらを育成する施策を打ってほしいですね。

小宮 今でもアニメなんかは、世界中に輸出されている。同様に鉄道なんかも世界一の技術を誇っています。

石田 僕はスマートグリッドとか、地熱発電とかやってほしいな。あとメタンハイドレードの活用とかも期待したいですね。

小宮 明るい日本の未来を築くために、われわれ、これからも数字オタクをさらに極めましょうね。

(日経マネー編集部)

[日経マネームック『石田純一 お金のくどき方』の記事を基に再構成]

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