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ディスプレー最新トレンドは「コンテンツに合わせて変身」

評論家・日本画質学会副会長 麻倉怜士

今後のディスプレー技術が目指すべきなのは、「フレキシブル」と「フレームレス(枠なし)」――。2014年1月に米ラスベガスで開催された、世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、テレビメーカー、ディスプレーメーカー各社の試作機が数多く登場し、新たな流れが明確に見えてきた。

今回のCESでは、フレキシブルという用語を、湾曲およびフラットの間で角度を自由に調節できるテレビとして韓国LG Electronics(LG電子)が使っていた。一方、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は「ベンダブル」と呼んでいた。

しかし筆者は、フレキシブルを「形が自在に変わる」という、もっと広い意味として捉えたい。究極的にディスプレーは「自在に、柔軟に、コンテンツに合わせ、もしくはそれと関係なく姿や形を変える」ことを目指している。

映画には湾曲が合う

その第一歩が、前述した湾曲とフラットの間で曲がりの角度を調整できるテレビだ。LG ElectronicsとSamsung Electronicsが出品したが、曲率半径(曲率円の半径)は無限から4000mm程度だから、あまり曲がるわけではない(図1、図2)。

図1 LG Electronicsが開発した77型のフレキシブル有機ELテレビ
図2 Samsung Electronicsが開発した、アスペクト比21:9の105型5K液晶テレビ

しかし、曲がりを調整しながら様々なコンテンツを見てみると、明らかに湾曲に合うコンテンツと合わないコンテンツ、そしてフラットに合うコンテンツがあることが分かる。映画に湾曲は良いが、ニュースでは「余計なお世話」だ。つまり、「コンテンツに合わせてディスプレーが姿を変える」というトレンドが、一つの方向として見えてくる。

次にアスペクト比(画面の横と縦の比)はどうか。現在はハイビジョンの16:9が業界標準だが、会場ではSamsung Electronics、LG Electronics、東芝が21:9の横長5K(フルHDの5倍の解像度)ディスプレーを展示。これは液晶ディスプレー製造で「第8世代」と呼ばれるガラス基板を横方向に二分したサイズだ。

正方形ディスプレーも登場

図3 LG Displayが開発した、アスペクト比1:1の26.5型(1920×1920画素)正方形ディスプレー

21:9のメリットは二つある。一つが、「シネマスコープ」(シネスコ)サイズの映画作品をそのままのオリジナルサイズで表示可能なこと。16:9では上下に黒帯が現れるレターボックスとなる。ここから「シアターテレビ」という用途が浮かび上がる。

シネスコサイズのコンテンツをフルフレームで見ると、映画の迫力を存分に堪能できる。16:9のレターボックスでは、黒帯が邪魔に感じられ、そこまでの堪能感はない。

アスペクト比のバリエーションは、映像の新しいアプリケーションを生む。韓国LG Displayは、1:1の26.5型(1920×1920画素)正方形ディスプレーを、CES会場近くにあるホテルのスイートルームで展示した(図3)。業務用だから航空管制、スロットマシン、天気予報などの用途が考えられているが、民生用にも新しい発想のコンテンツを呼び起こしそうだ。

画面サイズも自由自在に調整

ここまでは「固定サイズ」のディスプレーである。しかし、今回の"CESの華"を挙げるとすれば、ソニーが発表した「超短焦点プロジェクター」だろう(図4)。これは、同社の基調講演などでは「147型」と発表されたが、ズーム機能により、画面の大きさを自在に変えられる点がポイントだ。

図4 ソニーが発表した超短焦点プロジェクター

超短焦点プロジェクターはミラーを使った短距離の光学系によって、すぐ横の壁に映像を投射する。壁にぴったり付けると、プロジェクターは投射位置から40cmの距離になる。この場合は60~105型がズーム領域になる。今回のデモンストレーションは壁から17cm離し、投射位置から57cmとした。この場合は92~147型がズーム領域だ。

プロジェクターは通常、暗い部屋で、設置位置を固定して使用する。ズーム機能は設置の時しか必要ない。一方、ソニーの超短焦点プロジェクターは、明るい環境で壁に投射する。すると、ズーム機能を活用する方向が見えてくる。

例えば、ニュースなど情報系番組は小さな画面で見て、映画などの鑑賞系番組や環境映像はフルスクリーンで楽しむという、使い分けができる。言い換えると、コンテンツに応じて、自在に画面サイズを変えるディスプレーである。2台並べると32:9の8Kになるというのも面白い。環境映像にはぴったりだ。

「四角いフレーム」の制約から解放

図5 「RICOH THETA」。2013年の家電展示会「IFA」で撮影。左のスマートフォンで再生する

さて、ここまで来ると、コンテンツ側にも「自在」さを要求したい。コンテンツは必ず特定のフレームで制作されるが、新しい映像環境は、その制約も取り払われる。その典型が、360度の映像が撮れるデジカメ「RICOH THETA」である(図5)。

頭上に高く掲げ、中央のボタンを一押しすると、その場の360度全天映像が撮れる。外形寸法は5型画面のスマートフォン(スマホ)を縦半分にした程度。アール形状のスティック型きょう体の先に魚眼レンズが両面に付いている。ジャイロセンサーを内蔵しているため、カメラの向きは適当でよく、天地方向は正しく撮影できる。

自分が見ている範囲内外の光景を、自分も入れて撮れるというのは、新鮮な驚きだ。ファイルには360度の画像が記録されているから、スクロールすれば自分が見ている向きとは反対側の画像も見られる。RICOH THETAは、現在は静止画のみだが、次期バージョンでは360度動画にも対応する構えだ。そうなれば、まさに(目に)映らないものまで(カメラで同時に)写せるようになる。

ここで遂に、「四角いフレームを前提に目の前に広がる光景を撮る」という映像のこれまでの常識が覆される日がやってくる。「フレキシブル」を追求し、「フレームレス」に至る壮大な未来ディスプレーの方向を、雄弁に見せつけたのが今回のCESであった。

[Tech-On!2014年1月20日付の記事を基に再構成]

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