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これでわかった ローン金利の計算法

桜美林大学教授 芳沢光雄

ローン金利を自分で計算するには

預貯金や住宅ローンなど生活や仕事の様々な場面で金利の計算が必要になる。具体的な計算は金融機関に任せている人が大半だと思うが、数学の知識を使えば自分で出すこともできる。仕組みを知っていると、金融機関の様々な書類を見たときに理解しやすいだろう。今回は、ローンの「元利均等返済」と株式や債権、不動産などへ投資する際に使う「現在価値」について述べよう。

等比数列の知識、金利計算に活用

まず、ローンの「元利均等返済」を説明する。元利均等とは、毎回同じ金額を返す借入方式だ。あとで詳しく説明するが、等比数列を応用すれば、毎月の返済額は次のような式で計算できる。

このとき、利率は月利で、年利の12分の1である。たとえば、年利12%ならば月利は1%であり、利率は0.01になる。

現在の消費者金融の金利は年18%(月利1.5%)が多い。そこで、月利1.5%で100万円のお金を借り、元利均等返済方法によって60ヶ月(5年)で完済する場合、のべ返済額はいくらになるか、考えてみよう。公式(*)に数値を入れて毎月の返済額を計算すると、約2万5393円となる。

こうした返済額の計算は、エクセルや電卓でも求められる。インターネットにつながっている端末があれば、グーグルの検索窓で計算することもできる。かけ算は「*」、割り算は「/」、べき乗は「^」の記号を使って計算式を作り、検索窓にキーワードの代わりにこの式を入力すればよい。今回の場合は以下のような式を入れて「検索」するだけだ。

(1000000*0.015*1.015^60)/(1.015^60-1)

この場合、のべ返済額はだいたい、

25393×60=152万3580(円)

となる。これは、利息分として約52万円払うことを意味している。公式を使って、金利や返済回数をいろいろと変えて計算してみてほしい。

「元利均等返済」の公式の求め方

では、高校の数学を思い出しながら、公式(*)そのものを求めてみたい。まず、等比数列の復習から始めよう。

初項がa、公比がr(r≠0、1)の等比数列

の和を出してみる。

この数列の一番左(初項)からn番目(第n項)までの和をSnとおくと、

である。ここで両辺にrをかけると

上の2つの式に関して、上の方から下の方を引くと、次のようになる。

したがって

を得る。上式を「等比数列の和の公式」という。

この公式を使って、元利均等返済の公式(*)を求めることができる。

毎月の返済額は一定(返済月額)で、n回で完済するとき、毎月の残高は次のようになる。なお、利率は月利である。

ここで1+利率=r、返済月額=aに置き換えると、上の式の波線部分は等比数列の足し算になっていることがわかる。

ここで上の「等比数列の和の公式」を使うと、

となる。ちょうどn回で完済ということは、nカ月後の残高=0ということになるので、上の式は下のようになる。

この式を変形すると、冒頭の公式になるのである。

資産の「現在価値」でも、等比数列を応用

次に資産の「現在価値」の出し方を学ぼう。これも、等比数列の和の公式が応用できる。

現在価値とは、将来受け取るお金の価値を現在の価値に換算したものだ。金利が5%だった場合、今もらえる10万円と1年後にもらえる10万円と、どちらが値打ちがあるのだろうか。この場合は、同じ金額なので、今すぐもらえる10万円の方が値打ちがあると簡単に分かる。

しかし、すぐもらえる金額が9万5000円だったらどうか。そんなときにこの「現在価値」を使って比べるといい。金利5%で1年後に10万円になる金額(現在価値)を計算するのである。その額は、9万5238円(10万円/1.05)になる。金利5%では、今すぐもらえる9万5000円より、1年後の10万円の方が得だということがわかる。

預貯金などの場合はこのように簡単に計算できるが、株式や不動産など配当や賃貸収入など毎月、収入がある資産の場合、計算はやや複雑になる。こうしたケースについて考えてみよう。

最初に自己資金で資産を購入し、n年間運用するとする。モデル化にあたって考えなくてはならないのは、n年後の売却額(株価・不動産価格)、毎年の利率、各年の配当(不動産収入)だろう。なお不動産収入とは、家賃や駐車場代などのことである。

この資産をn年目に売却したとき、総額いくらになるか計算してみよう。各年に得られる収入(配当や不動産収入)は一定金利で運用するとする。それは次のような式になる。

一方、最初の資金をそのまま一定利率で運用すると

になる。

市場金利と同程度に運用できていれば、この2つは同じ額になると考えられる。すなわち下の式が成り立つ。

両辺を(1+利率)のn乗で割って、左辺の「最初の資金」をaと置くと、下のような式になる。

これを配当割当モデルといい、現在の株価や不動産価格を評価している。将来的に得られる収入や売却金額から、「現在価値」を計算したものである。先の10万円の例のように、実際に使った「最初の資金(価格)」が右辺の計算結果(現在価値)より下回っていれば、買う値打ちがあるといえるし、逆に上回っていれば、株や土地を買わず、普通に運用した方がよいということになる。

具体的な数字を使って考えてみよう。

いま、利率が5%で、毎年の収入が一定だと仮定する。すると以下のような式になる。

カッコの中は等比数列になっている。そこで、等比数列の和の公式を使うと、

毎年の収入が100万円、5年後に5000万円で売却することを想定する。

なので、

a={21×100万×0.2155+5000万}÷1.2763

 ≒4272万1539(円)

となる。

すなわち、5年後に5000万円で売却することを考えた場合、現在価値は約4272万円である。

この考え方は、実際に株や不動産を購入するときの目安として利用できる。高校で学ぶ等比数列は金融の現場では日常的に使われている知識ともいえる。

芳沢光雄(よしざわ・みつお) 1953年、東京生まれ。東京理科大学教授を経て現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。理学博士。数学教育に力を注ぐ。主な著書に「数学的思考法」「ぼくも算数が苦手だった」「新体系・高校数学の教科書」「新体系・中学数学の教科書」。59歳。

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