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有名シェフ2人が「地産地消」に挑んだ三重の複合温泉リゾート

癒やしと食の複合温泉リゾート施設「AQUA×IGNIS(アクアイグニス)」が2012年10月23日、三重県菰野町にオープンした。もともとすぐ近くにあった片岡温泉の移転リニューアルで、全く新しい施設に生まれ変わった。

最大の特徴は、パティシエやシェフ、デザイナーなどそれぞれの分野で名を馳せる面々の起用。スイーツの世界的コンテストで数々の栄冠に輝くパティシエ・辻口博啓氏、山形のイタリアンレストランシェフで世界の料理人1000人にも選出される奥田政行氏をはじめ、空間づくりでも多彩なデザイナーやアーティスト、コーディネーターを起用している。

温泉は100%源泉かけ流しで、加水・加温・循環・添加物は一切なし。泉質はアルカリ性で、適度にぬめり感がある柔らかな肌触りが特徴だ。竹林に囲まれた露天風呂や寝湯などもある。

複合温泉リゾート施設「AQUA×IGNIS(アクアイグニス)」は敷地面積4万9000平米に温泉、宿泊、レストラン、パティスリー、農園などを集めた一大リゾート施設。総事業費は15億円
アクアは「水」、イグニスは「火」を意味し、庭園も水と火をテーマにしている

有名シェフ2人が「地産地消」を発信

辻口氏はスイーツ「コンフィチュール アッシュ」と石窯パン「マリアージュ ドゥ ファリーヌ」、奥田氏はイタリアン「サーラ ビアンキ アル・ケッチァーノ」と和食「奥田食堂」、焼肉「やくケッチァーノ」(2013年オープン予定)を出店。体験菜園「TSUJIGUCHI FARM」「畑っちぁーの」も両者が監修する。辻口氏にいたっては、東京の店舗を閉めてこちらへ移転させるほどの力の入れようだ。

辻口博啓氏のパティスリー「コンフィチュール アッシュ」ではTSUJIGUCHI FARMでのイチゴをはじめ厳選した食材を使用。新作スイーツも数多く用意する
1時間以上の行列ができ、14時過ぎには商品が完売することも
地域の名前を冠した新作「湯の山ロール」(1050円)

「目の前に畑を構えてイチゴなど採れたての食材を使える。この新鮮さと安全性がスイーツ作りには何より魅力だった」と辻口氏。「全く土地勘もないため、当初はお断りしようと考えていた。しかし、現地へ来て土壌が豊かで海産物も豊富なことを知り、この土地だからこそできる地産地消を発信できると考えた」と奥田氏。

両者が腕を競う飲食部門が施設の目玉となり、オープン以降は行列ができるほどの人気。地元のみならず遠方からも多くの来訪客を集め、連日3000~4000人を集客している。

石窯パン「マリアージュ ドゥ ファリーヌ」でも地元産の食材を使った新商品を開発
菰野町の地名の由来とも言われる真菰を使った「まこもメロンパン」(160円)
レストラン「サーラ ビアンキ アル・ケッチァーノ」はランチコース3800円、ディナーコース3500円~
温泉利用者が利用できる「奥田食堂」。「奥田流カレーライス」(700円)、「奥田流味噌ラーメン」(650円)、「温泉玉子ハンバーグ定食」(1100円)など
「TSUJIGUCHI FARM」のイチゴ園。このビニールハウスでは栽培に温泉熱を利用している

温泉を中心にレストラン、農園、ホテルが並ぶ

ショップでは辻口茶園のボディソープやオリジナルの手ぬぐいなどを販売
温泉は湯量豊富な天然かけ流しの天然温泉。入浴料大人600円、小学生まで300円

空間作りも従来の温泉施設とは一線を画す。鈴鹿山脈を背景に「火と水の庭園」を中心に、パティスリーやレストランが並ぶ白亜のレストラン、巨大コテージのような温泉施設、農園などが取り囲む。

日帰り利用できる温泉施設はアーティストやデザイナーのオブジェや調度品に彩られる。休憩スペースにはユニークなクッションが置かれ、オリジナルの家具を配して施設のテーマに合わせた本をセレクトしたライブラリーも設けた。

竹林に囲まれた露天風呂もある
オーガニック離れ宿は4棟。写真は天井から吊り下がるチェアが印象的な「杉」の客室
ロビーには湯上がりに読書を楽しめるライブラリーも

宿泊は温泉に併設した全17室の宿泊棟のほか、離れ宿が4棟。「杉」「松」「栗」「檜」と名づけられている通りそれぞれの自然素材による建築で、棟ごとに4人のデザイナーがインテリアコーディネートを担当している。各棟には、源泉かけ流しの専用露天風呂が備えられている。

離れの各棟に専用の露天風呂がある
松の棟の室内。離れの棟はそれぞれ異なるクリエイターがデザインを担当し、趣が異なる

菰野町には同施設のすぐ近くに湯の山温泉、登山者に人気の御在所岳(ございしょだけ)があり、アクセスは名古屋からクルマで1時間。東海地方の人には比較的なじみがある場所だが、観光地としての全国的な知名度は低い。年間70万人の来場を見込む話題性の高い新施設の開業に三重県の期待も大きく、辻口氏に県産食材を使ったスイーツの開発を委託。辻口氏が2013年にクライマックスを迎える伊勢神宮の式年遷宮向けの菓子を手がけるなど、地元の期待の高さを表している。

これが成功すれば、もともと温泉などの集客インフラを持つ観光地で"有名シェフ×地産地消"を導入する試みが広がっていくかもしれない。

鈴鹿山脈を望む栗の棟のテラスからの眺め

(ライター 大竹敏之)

[日経トレンディネット2012年12月13日掲載]

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