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ユーストリームとツイッターで変容する携帯コンテンツ

ジャーナリスト 石川 温

S-1バトルの年間チャンピオン大会で優勝し1億円を獲得したNON STYLE

ソフトバンクモバイルが携帯電話向けコンテンツサービス「S-1バトル」に動画中継サービスの「Ustream(ユーストリーム)」を融合させる取り組みに挑戦した。S-1バトルは、お笑い芸人が持ち込んだ映像やコントなどの映像作品を携帯電話に向けて配信し、ユーザーの投票によって勝者を決めるイベント。2010年3月19日に開催された年間チャンピオンを決める大会は、日本テレビ系列で19時から生放送されたが、その舞台裏ではユーストリームが大活躍していた。

ユーストリームへの映像は、年間チャンピオン大会を放送するスタジオ近くの小さな部屋で配信。複数のカメラからの映像を切り替えていく
ツイッターでつぶやくスタッフ

専用アプリ上でユーストリームとツイッターが連携

スタジオ隣にある部屋に芸人を呼び込んでコメントをもらう。「本放送より面白い」という反響もあった

ソフトバンクが米映像配信サービス会社のユーストリームへの出資を明らかにしたのは2月2日。この日に開催した2010年3月期第3四半期決算説明会を皮切りに、ソフトバンクは同社がかかわる様々なイベントの様子をユーストリームで配信するようになった。

沖縄国際映画祭もユーストリームで映像を配信。海のそばにある楽屋から中継した

S-1バトルのチャンピオン大会は15組のお笑い芸人の作品を地上波テレビで放送し、視聴者に携帯電話を使って投票してもらう形式だった。その裏のユーストリーム中継では、敗退した芸人たちをカメラの前に呼び、コメントをもらう形で番組を進行させた。「カメラマンなどの技術スタッフはプロにお願いしたが、運営は外注することなく、我々が手弁当でやっていた」(ソフトバンクモバイル・マーケティング本部サービスコンテンツマーケティング統括部サービス戦略課の大野泰敬氏)。

沖縄国際映画祭のiPhoneアプリ。ユーストリームで動画を見ながらツイッターでつぶやける

ソフトバンクモバイルは、大会前にあらかじめS-1バトルの専用アプリケーションを米アップルのスマートフォン「iPhone」向けに開発、アプリ配信サービスの「AppStore」で配布した。このアプリを使うとユーザーはiPhoneの画面でユーストリームの動画を見ながら、ミニブログサービスの「Twitter(ツイッター)」でつぶやける。ソフトバンクモバイルも「S-1バトル事務局」の名前でツイッターのアカウントを取得し、当日は社員が番組の盛り上がりの様子などをこと細かにつぶやいたという。

さらにソフトバンクは、3月20~28日に開催された「沖縄国際映画祭」でもユーストリーム中継を実施。ステージなどに参加する芸人の楽屋横に機材とスタッフを待機させ、様々な芸人のコメントを配信した。ソフトバンクモバイル・マーケティング本部サービスコンテンツマーケティング統括部コンテンツ推進部の菊池保則氏は「社内がユーストリームとツイッターで盛り上がっているなか、吉本興業とタッグを組んで芸人の裏の表情を出せないかと企画したのが楽屋中継だった」と語る。大まかな放映時間程度しか決まっておらず、芸人の話術だけで番組は進行していった。それでも芸人はその場にいるだけで立派な「映像コンテンツ」になる。ツイッターによるユーザーの反響も大きかったという。

携帯電話限定からオープンなスマートフォンへ展開

S-1バトルは従来、ソフトバンクモバイルの携帯電話だけでしか視聴できなかった。しかし、2年目の10年4月からはiPhoneとiPod Touchで動くiPhoneアプリでも視聴できるようにした。このアプリはツイッターと連携しており、コンテンツを見たユーザーがすぐにツイッターでつぶやける。

また、配信方法も見直した。これまでは組織票による投票の偏りを防ぐため、ユーザーごとに日をずらして異なる作品を配信していた。しかし、2年目からは、S-1バトルの投票システムを見直し、週に2回(月・木)の配信に変更した。「1年目はユーザーごとに配信するコンテンツを分けていたので、友人同士やネット上の共通の話題として盛り上がりにくく、ユーザーは作品を見て投票するまでで完結していた。今年はツイッターと連携させることで、作品を見て投票してつぶやいて面白さを他人に伝えるという流れを期待したい」(菊池氏)

携帯電話より画面が大きいiPhoneは映像コンテンツとの相性がいい。しかもiPhoneユーザーは携帯電話ユーザーに比べて新サービスへの関心が高く、積極的に活用する傾向が強い。さらに、「iPhoneユーザーは音楽を聴くことが多いため、イヤホンを持ち歩くことが多い。映像コンテンツをすぐに見てもらえる環境が整っている」(菊池氏)

ユーザーが使う端末が昔ながらの携帯電話からスマートフォンへ緩やかに移行していくなか、通信事業者が主導して自社に囲い込むコンテンツサービスの将来像が見えなくなりつつある。ソフトバンクモバイルはS-1バトルでiPhone向けに専用アプリを提供し、ツイッターやユーストリームというオープン型のサービスと連携させることで、従来にはないコンテンツサービスの道を模索し始めている。

通信事業者の最終的な狙いはユーザー数の拡大と1人あたり利用料(ARPU)の増大だが、その達成のためにサービスをどう組み立てるか。ソフトバンクモバイルの取り組みは、これからオープン型のスマートフォンのラインアップを強化するNTTドコモやKDDIにとっても、参考になるところが多そうだ。

〈筆者プロフィル〉 石川温(いしかわ・つつむ) 月刊誌「日経Trendy」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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