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笹子事故の最終報告書、主な原因は解明できず

国土交通省は、中央自動車道・笹子トンネルの事故発生原因と再発防止策をまとめた最終報告書を6月18日に発表した。事故は複数の要因が作用して発生したとする表現にとどめて、事故の引き金となった直接の原因までは特定していない。

事故のあった笹子トンネル上り線。同じ天井構造を持つほかのトンネルの天井板(隔壁)が1~3.5mの高さなのに対して、笹子の場合は5.5mと飛びぬけていた。1月15日の天井板撤去の様子(写真:日経コンストラクション)

報告書では、管理者である中日本高速道路会社の点検内容や維持管理体制について、「不十分であったと言わざるを得ない」と指摘。補修や補強の履歴資料や工事関係資料などの保存体制に不備があり、点検計画が維持管理に適切に反映できていなかった。

報告書は、設計と施工、維持管理の全てについて問題点を指摘しているものの、今回の教訓としては特に維持管理を重視していることがうかがえる。報告書最終ページの「まとめ」では、設計や施工に関しては触れず、教訓として「維持管理するうえでの情報の共有や継承の重要性だ」としている。

ボルト径の変更については不明

設計や施工については、安全率に余裕がなかったことや一部に施工不良があったことを指摘する一方で、理由を明らかにしていない点もまだある。例えば、天頂部の接着系アンカーボルトで、設計図書に記載されていた径と実際に施工された径が違っていた点だ。

笹子トンネルは、送排気流量の大きさの違いに応じて、L、M、Sという3種類の断面形状に分けている。事故は、最も大きいL断面の区間で発生した。設計図書では、L断面には直径16mm、長さ230mmのM16のボルトを、M・S断面には直径12mm、長さ200mmのM12のボルトをそれぞれ採用することになっていた。

笹子トンネルの縦断図 (資料:国土交通省「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書」)

ところが、実際の施工では設計よりも太径のボルトを使用。甲府側のL断面の区間ではM20のボルトを採用していたが、事故が発生した大月側のL断面の区間では、設計どおりにM16のボルトを使っていた。M16のボルトでも安全率に余裕はあるものの、トンネル全体でみれば一貫性がない。誰がなぜこのような措置を取ったのかは分かっていない。

委員会は解散せず

さらに、天井板を支える上部CT鋼1本当たりに16本使われていた接着系アンカーが、非対称に配置された理由も確認できていない。非対称にしたことで、各ボルトの負担力に差が生じ、ボルトによっては経年の持続荷重に対する強度の余裕を小さくしたと考えられる。

隔壁に作用する風荷重が天頂部接着系アンカーボルトに与える影響 (資料:国土交通省「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書」)

そのほか施工面でも不明確な点がある。接着系アンカーボルトの出来形調査では、削孔深さや埋め込み長さそれぞれで、特記仕様書と完成図に記載された寸法が異なっていた。

コアサンプルの切断観察結果 (資料:国土交通省「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書」)

例えば、接着系アンカーの埋め込み長は特記仕様書で約152mm以上と規定しているにもかかわらず、完成図には130mmと記載している。当時の施工手順や管理方法が不明なので、理由は分からないとしている。

国交省によると、新たな事実が発覚した場合に備えて事故原因などを追えるように、「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」は解散しないと言う。

(日経コンストラクション 真鍋政彦)

[ケンプラッツ 2013年6月21日掲載]

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