/

白物家電がスマホと連動 パナソニックが「稼ぎ頭」に託す新機軸

パナソニックは21日、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)との連携機能を搭載した白物家電を9~11月に順次発売すると発表した。エアコン、冷蔵庫、洗濯機、体重計(体組成計)、歩数計(活動量計)、血圧計の6カテゴリーの新製品に、専用アプリをインストールしたスマホでタッチするといった動作で付加価値を提供する。具体的には、冷蔵庫の節電データや体重計の計測データをスマホで一覧表示したり、普段使う洗剤のデータを洗濯機に登録したりといった機能を追加できる。

同社は「2014年度に累計260万台、売り上げで2000億円をスマホ連携機能付きとする」との目標を掲げ、短期間での普及を目指す。テレビをはじめとするデジタル家電が不振のなか、白物家電はパナソニックにとって「稼ぎ頭」であり、他者には絶対負けられない事業部門。スマホ連携機能の全面展開で新たな成長軌道に乗れるかが試される。

外出先からエアコン操作、洗剤の投入量調整、故障診断…

パナソニックは今回発表した6カテゴリーと、先行して発売済みの炊飯器、電子レンジとを併せ、8カテゴリーのスマホ連携機能付き製品を「スマート家電」と名付けてシリーズ化する。14年度にかけて、対応カテゴリーを倍増させる方針だ。

スマート家電の各製品には、「FeliCa」や「NFC」といった非接触型ICカードの読み取り機を内蔵している。利用者は、非接触型ICカード機能を搭載したAndroidのスマホに、専用アプリをインストールし同社サーバーに利用者登録することで連携機能を使える。スマホとの間でデータをやり取りしたり、さらにスマホを経由してパナソニックが運営するサーバーにデータを蓄積したりすることで機能を拡張する。なお、エアコンは高所に設置するためタッチ機能ではなく、無線LANと同社サーバーを経由してスマホに接続する仕組みを採った。

例えば洗濯機では、利用者が普段使っている洗剤の商品名をスマホで選択し、洗濯機の読み取り部にスマホをタッチする。こうすると、次回以降の洗濯時に、その洗剤の投入量がより正確に表示される。従来は、一般的な洗剤を使用した場合の目安量を表示するのみで、利用者が個々の洗剤の説明書と照らし合わせて投入量を調整する必要があった。またエアコンは、外出時にスマホを使って運転状況を確認でき、必要に応じてオン/オフや温度調整といった操作が可能だ。

冷蔵庫では、読み取り部にスマホをタッチすると、省エネ運転していた時間やドアの開閉回数などをスマホの画面でグラフ表示できる。同様にエアコンや炊飯器、電子レンジでは電気代のチェックが可能だ。製品の故障時には、エラー情報を読み取って詳細な故障内容と復旧方法をスマホの画面で表示したり、簡単なボタン操作で同社のサポートセンターに電話したりできるという。

 各製品からの情報をスマホ単体で表示するだけでなく、同社サーバーを介して他者と共有する機能も持たせている。例えば体重計や血圧計は、あらかじめ指定した家族や友人に対して測定データを見せる機能を搭載。遠方に住む高齢の家族の健康状態を確認したり、友人と一緒にダイエットをしたりする際に役立つとしている。冷蔵庫では、作りたい料理のレシピを検索し、その材料の中から足りないものを選んで「お買い物メモ」として家族にメールで送信することが可能だ。

スマホタッチでネット連携、初期設定や機能拡張が容易に

今回のスマート家電で、スマホと連携するためにタッチ機能を採用した理由について、同社アプライアンスマーケティング本部の中島幸男本部長は「家電製品は日ごろから利用者がタッチして操作するもの。スマホでもタッチ操作によりデータを連携するという仕組みは分かりやすいと考えた」としている。

これ以外にも、タッチ機能は複数のメリットがある。例えば設定のしやすさ。スマホやパソコンでは無線LANやBluetoothといった無線通信方式が普及しているが、通信相手の登録やセキュリティー設定が面倒。洗濯機や冷蔵庫など大型で動かせない白物家電の場合、設置場所まで電波が届くよう気をつける必要もある。

タッチ機能の場合、スマホに専用アプリを入れ利用者登録するだけで初期設定が済むため、導入時の障壁が低く、サポートの手間も大幅に軽減できる。「先行発売した電子レンジと炊飯器では、50~60歳代の利用者の比率が全体の2割に達した。当社の予想を上回る比率で、幅広い利用者にスマート家電を使ってもらえることが分かった」(中島本部長)

機能拡張の容易さもある。家電に多彩な機能を盛り込もうとすると操作が複雑になり、かえって利用者は使いづらくなってしまう。拡張機能を本体ではなくスマホ経由で提供することで、製品単体ではこれまで同様にシンプルで使いやすく、スマホ経由では豊富な機能を使いやすいユーザーインターフェース(UI)で提供できる。製品の発売後の機能追加も、スマホ用アプリのバージョンアップで簡単にできる。実際、同社は今回の製品発表に併せ、発売済みの電子レンジや炊飯器に電気代確認機能や故障診断機能などを追加している。洗濯機の洗剤情報や冷蔵庫、電子レンジで参照するレシピ情報なども、随時追加する予定だ。

単価引き上げと囲い込み図る、課題は海外展開とAV連携

同社が7月に発表した12年4~6月期決算では、テレビやブルーレイディスク(BD)レコーダー、パソコンなどを含む「AVCネットワークス」部門の売上高が前年同期比20%も減少し3597億円にとどまった。一方、白物家電を中心とする「アプライアンス」は同3%増の4314億円となり、AVCネットワークスを上回って稼ぎ頭となった。営業利益率も、AVCネットワークスの2.1%に対し、アプライアンスは8.7%と4倍以上だ。懸案であるテレビ事業の黒字化は13年1~3月期までかかる見通しで、その先も海外勢との激しい競争は続く。同社にとっては、白物家電が頼みの綱という状況は当分続きそうだ。

 そこで同社が打ち出したのがスマホ連携機能という新機軸だ。スマホは11年頃から急速に普及した製品であり、スマホとの連携は目新しい。加えて、スマホのディスプレーは白物家電に比べ大きく、操作もタッチパネルで簡単にできることから、利用者にメリットを訴求しやすい。

今回の新製品は、エアコンが主力の4キロワット型で27万円前後、冷蔵庫が30万円前後、洗濯機が34万~35万円前後と高価格帯だが、「東日本大震災以降、エアコンや冷蔵庫を中心に、高価でも節電性能の高いものを選ぶ傾向が一段と高まっている。30万円する製品でも、価値を認めてもらえればポンと買ってもらえる」(中島本部長)と自信を示す。中心価格帯を他社製品より引き上げ、単価の下落傾向に歯止めをかける考えだ。

さらに同社は、スマホ連携機能の搭載製品を幅広い白物家電の商品カテゴリーで一挙に展開することで、利用者の囲い込みを狙う。「当初は高価格帯の製品だけだが、14年度にかけて中価格帯の製品もスマート家電としていく。白物家電全体では金額ベースで25%、対象となる製品カテゴリー内では40%をスマート家電としたい」(中島本部長)

とはいえ課題もある。まずは海外展開だ。国内では「おサイフケータイ」による電子決済が普及しており、スマホに搭載されている非接触型ICカード機能の認知度が高い。しかし海外では、ICカードに対応したスマホはほとんど市販されていないのが実情だ。また、海外各国・地域で個人情報に関する法制度に違いがあるため、各利用者にひも付けされたデータを同社サーバーに蓄積し活用するというサービスの展開に制約を受ける可能性もある。「当社としては、当然海外でもスマート家電を展開していきたい。各地のニーズを踏まえながら検討していく。ただし具体的な時期は勘弁してほしい」(中島本部長)。国内で蓄積したノウハウを迅速に海外展開できるかが今後の課題となる。

白物家電以外の部門との連携も今後の注目点だ。今回の発表では、テレビをはじめとするAV機器との連携は「考えている」(中島本部長)と表明するにとどまっている。例えばBDレコーダーの遠隔での録画予約など、今回のスマート家電と似た機能は同社のAV機器でも既に提供されているが、現時点ではスマート家電とは全くの別物となっている。白物・AVの壁を取り払って「オール・パナソニック」でスマホ連携機能を実現できるかが、同社が提案するスマート家電機能の利便性確保の上でカギとなりそうだ。

(電子報道部 金子寛人)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません