/

170万人が熱狂、「リアル脱出ゲームTV」 ネットと連動

ブロガー 藤代 裕之

ドラマと同時進行で視聴者がウェブから謎解きに参加するTBSの「リアル脱出ゲームTV」。最大で170万人が参加するなど大きな反響を呼ぶ、インターネットとテレビの連携番組だ。視聴者の参加を促すためのヒントは意外にもテレビとしてのこだわりだった。

学生が面白い番組と教えてくれた

リアル脱出ゲームTVを知ったのは大学生からの情報だった。

「リアル脱出ゲームTV」のホームページ

授業で、日本テレビ「JoinTV」でのエヴァンゲリヲン連動企画や日本テレビとNHKの合同企画「TV60 NHK×日テレ(日テレ×NHK)60番勝負」などのテレビ局のソーシャルメディア連動の取り組みを取り上げた。授業後に回収したリアクションペーパーに複数の学生が「今日紹介されていなかったが、リアル脱出ゲームTVが面白い」と書き込んでいたのだ。一部を除いてテレビの話題に対して反応は鈍い学生が複数勧めてくるのは珍しく、関心を持った。

「ソーシャル連動も大事ですが、まずエンターテインメントとして面白いことにこだわっています。番組の中に入り込んでもらって、物語の主人公になれる工夫をしている。見るテレビではなく、体験するテレビ」。番組を担当する東京放送ホールディングス次世代ビジネス企画室の中島啓介プロデューサーは、意外なことに番組の面白さを繰り返した。

TBSは若者向けのテレビにどう取り組むか、ソーシャルメディアとの連携をどう行うのか試行錯誤を続けている。2012年9月には深夜番組としてトークバラエティー生番組「大炎上生テレビオレにも言わせろ!」を放送。LINEやニコニコ動画との連携を行っている。

リアル脱出ゲームTVは13年1月に深夜番組として第1弾が放送された。お笑いタレントのバカリズムが、覆面姿の謎のテロリストにふんして出題する謎に対して警視庁のSAT隊長らが立ち向かうというドラマとクイズが組み合わされたものだ。この謎解きに視聴者がネットから参加できる。

ネットで熱狂が伝播する

ネットからの参加者は1回目が31万人で、正解率は1.8%だった。2回目24万、3回目172万。2014年の1月3日に放送された4回目は109万で、正解率は9.9%だった。4回目に伸び悩んだのは利用者が殺到してサーバーが落ちたことが原因だ。

問題の難しさは視聴者を引き込む秘訣となっている。「問題が難しい」「次こそは解く」といった感想がツイッターに書き込まれて、クチコミが伝播(でんぱ)していく。スカイプやLINEを使って友達と連絡を取り合って協力しながら謎解きに挑む視聴者も多い。

リアル脱出ゲームTVの一場面(C)TBS

「リアル脱出ゲームTV」は昨年8月15日には、ヤフーの検索のデイリーランキングで、YouTubeについで2位、アマゾンやフェイスブックよりも上位になる異常事態も起きた。

参加型番組について中島氏はサッカーに例えて説明する。「ネットで参加してくれている人はスタジアムで直接試合を見る人のようなもの。多くの人が熱狂をテレビで見ている。参加者はマスにはならないが、ソーシャルが熱狂を可視化してくれる」という。

スタジアムの場合はリアルの場所であり、参加することは難しい。ソーシャルメディアなら会話に参加することもでき、参加感は高まるし、熱狂が伝播しやすい。だが、「100万人を超える人が番組に参加しているというが、視聴者全体の10%ぐらいだと思う。9割が見るだけで面白いと思ってくれないと」と、ソーシャル連動ながら軸足を九十九%テレビに置く。

あえてアプリを使わず

技術と視聴者のリテラシーの接点を見極めることも重要という。中島プロデューサーは13年のメディアリテラシー状況を「検索して、選択する」段階と分析する。スマートフォンが普及し、LTEなどスピードの速いネット回線が整備されたが、大多数のユーザーは検索して、ボタンを選択する以上の操作はストレスを感じるとみている。そのため番組のサイトはアプリではなく、ブラウザーで提供している。

ソーシャルメディア連携はテレビに限らず専用アプリやシステムを用意する場合が多い。先端的な取り組みでは、ついリテラシーの高いユーザーに利用環境などを合わせてしまいがちだが、中島プロデューサーがこだわるのはできるだけ多くの人がストレスなく利用可能なことだ。

「アプリをダウンロードするのは面倒くさい。技術的には可能でも、人は面倒なことはやらない。技術やシステムありきではなく、使い勝手が良いものを提供する必要がある」と、技術とリテラシーのバランスを取る重要さを訴える。

番組のコア視聴者は12歳から29歳までの若い人が中心で、企業各社も注目しているという。既にソニーモバイルコミュニケーションズなどとコラボレーションし、4回目は日産自動車が放送後の特設サイトで車が当たるキャンペーンを行った。予想以上に多くの申し込みがあり「テレビの力は凄く強い」と反応に自信を深める。

テレビの力は弱まっていない

東京放送ホールディングス次世代ビジネス企画室の中島啓介プロデューサー

次の展開はテレビを人と人のコミュニケーションの中心に置くことだ。

「『リアル脱出』は、テレビと個人という関係だったが、個人と個人をテレビがつなげていく取り組みをしたい」という。リアル脱出ゲームTVのノウハウを生かして新たに制作したのが、昨年のクリスマスイブに放送された視聴者参加型の恋愛ドラマ「マッチング・ラブ」だ。

ドラマ内に登場する15問の質問に答えていくだけで運命の人に出会うという不思議なサイトを、ユーザーも同時に体験する。ドラマで質問が出るたびに、ユーザーにも質問が出され、同じ回答をした人が残っていく。15問同じ回答をする確率は35万分の1。登録にはニックネーム、性別、年齢、居住地、写真が必要にもかかわらず、男性26万、女性32万人が参加、5万6288人がマッチング成立となった。視聴者がどこまで正確なデータを入れているか不明だが、テレビ局がデータを取得することもできる。

お茶の間の中心にあったテレビが、一人ひとりの個室に備え付けられ、携帯電話のワンセグでも視聴できるようになった。コミュニケーションの中心から遠のいたように見えるが、ツイッターやLINEでコミュニケーションしながらテレビを見るソーシャル視聴も進む。

「ウェブが普及してコミュニケーションが希薄化しているといわれているがそう思わない。直接対面しなくてもLINEやスカイプでつながれる。そのつながりのきっかけをつくるのがテレビで、その力は弱まっていない」。中島プロデューサーは、14年のメディアリテラシー状況に合わせた企画を練っているところだ。

藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。法政大学社会学部准教授。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン