2019年7月19日(金)

車載用リチウムイオン2次電池で今、何が起こっているのか

(4/4ページ)
2010/5/24 9:00
保存
共有
印刷
その他

そのため、Si系材料を従来の黒鉛と混ぜ合わせて空隙(くうげき)を設けることで、体積膨張を緩和させる方法や、SiO2などと合金化して黒鉛と混ぜたSiO-Cの複合材料などが有力な候補になっている。現在、大手電池メーカーをはじめ、三井金属鉱業や大阪チタニウムテクノ、日立化成工業などが材料開発を進めている。ただし、車載用途ですぐに採用というわけではなく、まずは携帯機器向けLiイオン2次電池として実績を積んでからということになりそうだ。実際、日立マクセルは2010年6月から、Si系負極材料を用いたセルをスマートフォン向けに出荷する。

容量が15倍の次世代電池

材料の地道な改善により、Liイオン2次電池の高容量化は徐々に進む。しかし、その高容量化には当然、限界がある。このため、Liイオン2次電池の「次世代」を狙った電池の基礎的な研究開発が世界中で活発化している。例えば、Liイオン2次電池の数倍以上の高容量化を実現できるリチウム硫黄(Li-S)電池や、Li空気電池などである。

ここ最近では、2009年6月に米IBM社がLi空気電池などのポストLiイオン2次電池の開発を手掛けると発表し、米国で開発機運が非常に高まっている。日本では、トヨタ自動車が2008年6月に革新的な電池を開発する基礎研究部門として「電池研究部」を新設し、研究を急いでいる。

現状のLiイオン2次電池に比べて、Li空気電池は理論値で15倍以上、Li-S電池でも同10倍以上と、エネルギー密度を高められる可能性がある(図6)。Li空気電池は、正極に大気中の酸素を利用するため、質量当たり、および体積当たりのエネルギー密度が飛躍的に向上することから、究極の電池として研究されてきた。Li-S電池は正極に硫黄(S)を、負極にLiを用いた電池で、1000Wh/kgを超える電池セルを実現できる可能性がある。

図6 理論値は非常に高いLi-S電池やLi金属電池(図の出所は図3と同じ)

図6 理論値は非常に高いLi-S電池やLi金属電池(図の出所は図3と同じ)

ただし、両電池とも課題は山積みである。Li空気電池では、正極は燃料電池と同じ構造を備えるため、触媒を使って酸素を反応させる構造が必要となる。しかも、2次電池として利用するには、空気極で反応してできたリチウム酸化物などを還元する必要があり、これまで実用化には至っていない。

一方、Li-S電池は空気電池に比べると正極の構造が簡単だが、充放電に伴ってSが電解液中に溶解する問題や、電子伝導度が低いなどの課題がある。さらに、両電池とも負極に金属Liを使うため、充放電を繰り返すうちに負極に樹枝状のLi析出物であるデンドライトが発生する。

こうした中、注目が集まっているのが固体電解質である。現在、0.003~0.005S(ジーメンス)/cmと非常に高いイオン伝導度を備える硫化物系固体電解質が登場したことで、大型電池への適用の可能性が少しずつだが見えてきた。特にLi-S電池では、同じ硫化物系ということで相性が良い。正極材料である硫黄(S)と固体電解質の複合体を製造することで、特性の向上が期待されている。

Li空気電池でも固体電解質を利用することで、電解液を用いる場合に比べて空気極の構造を簡略化できる可能性がある。こうした電池はまだ基礎研究の段階にあり、実用化ができるかどうか先行きは不透明なものの、車載用途でのニーズが次世代電池の開発を牽引していることは間違いなさそうだ。

(日経エレクトロニクス 狩集浩志)

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事


電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。