2019年7月23日(火)

車載用リチウムイオン2次電池で今、何が起こっているのか

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2010/5/24 9:00
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米国にはこれまで、世界市場で競争できるようなLiイオン2次電池メーカーが存在しなかった。Liイオン2次電池の生産は、前述のようにアジア地域に集約されているのが現状である。米国政府はこうした状況に危機感を強め、「メード・イン・アメリカ」をうたえる電池の製造拠点を国家戦略的に確立することを最重要課題に掲げている。ARRAにより、既にJohnson Controls社やA123 Systems社など6社のLiイオン2次電池メーカーと9社の材料メーカーが資金提供を受けた(図3)。

図3 米国政府から資金提供を受けた電池メーカー(日経エレクトロニクス2009年10月5日号の解説「ポストLiイオンを狙え、電池に殺到する米国メーカー」より)

図3 米国政府から資金提供を受けた電池メーカー(日経エレクトロニクス2009年10月5日号の解説「ポストLiイオンを狙え、電池に殺到する米国メーカー」より)

このように車載用Liイオン2次電池への生産設備投資が世界的なブームとなる中、これまでエレクトロニクス機器向けLiイオン2次電池で大きなシェアを占めてきた日本の大手メーカーも重い腰を上げ始めた。パナソニックが三洋電機を子会社化し、2000億円程度を車載用Liイオン2次電池にここ数年で投資するといわれている。Liイオン2次電池を世界で初めて量産した歴史を持つソニーは2009年11月、これまでかたくなに参入を否定してきた車載用途への事業展開を表明し、今後、数年間で1000億円を投資して大型電池の量産準備を進めるという。

車載用Liイオン2次電池の量産体制の構築に向けた世界の主な投資を合計すると、それだけでも優に1兆円を超えることになる。

正極、負極で多様化が進む

このように車載用Liイオン2次電池の量産計画は続々と始動しているが、電気自動車が普及するには、現状のLiイオン2次電池の性能はまだ十分とはいえない。1充電当たりの走行距離が短いためだ。例えば、リーフでは容量が24kWhのLiイオン2次電池を搭載し、1充電当たりの走行距離は160km程度としている。これは現状のガソリン車に比べて1/3程度の走行距離でしかない。

この問題を解決するには、よりコンパクトで軽く、しかも高容量で安全な次世代電池を開発する必要がある。現状の車載用Liイオン2次電池の質量エネルギー密度(1kgの電池でどのくらいの容量があるか)は、100~150Wh/kg程度である。これを2倍、3倍と高められれば、走行距離をそれだけ延ばせる。

Liイオン2次電池の高容量化を実現するため、各メーカーは材料の開発に注力している。現在のLiイオン2次電池の材料系を第1世代とすれば、第2世代の改良型Liイオン2次電池は、質量エネルギー密度でいえば現行の2倍となる200~300Wh/kgが目標となるだろう。

Liイオン2次電池は、正極材料と負極材料、正極と負極の間を満たしてイオンが動けるようにする電解液、その電解液を保持しながら正極と負極を隔てるセパレーターなど、多くの部材を組み合わせて電池としての特性をバランスさせながら造る。同じLiイオン2次電池でも車載用の電池は、特に正極材料に関して、これまで主流だった携帯機器向けの品種とは異なる材料を用いたセルを搭載している。というのも、車載向けでは安全性が高く、高寿命で高出力、かつ低コストなものが必要とされるからだ。

図4 三洋電機が開発中のLiイオン2次電池

図4 三洋電機が開発中のLiイオン2次電池

携帯機器向けのセルではこれまで、正極材料にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を使用することが多く、これ以外には三元系〔Li(Ni-Mn-Co)O2〕やNCA系〔Li(Ni-Co-Al)O2〕などがある。これに対して、車載用では安全性とコストの観点からコバルト酸リチウムはほとんど用いられない。現在、主流となっているのはマンガン酸リチウム(LiMn2O4)と三元系、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。例えば,i-MiEVやリーフの電池にはマンガン酸リチウムをベースにした正極材料が使われている。一方,GSユアサとホンダの合弁会社であるブルーエナジーがホンダのハイブリッド車向けに供給予定のセルや,三洋電機がハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車向けに開発したセルは三元系をベースにしている(図4)。

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