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エアロビが縦揺れ誘発か、ソウルの超高層ビル

韓国ソウル市内にある超高層複合ビルで2011年7月5日、縦揺れを感じた数百人が避難した騒ぎで、原因はフィットネスクラブのエアロビクス(エアロビ)だとする見方が強まった。同国の大韓建築学会とビルを所有する不動産会社のプライム産業(ソウル市)が7月19日、明らかにした。

ビルは鉄骨造で地下6階、地上39階建て。1998年に完成した。オフィス棟「プライムセンター」と商業棟「テクノマート」で構成する。

縦揺れは7月5日午前10時から約20分間、プライムセンターの上層階で発生した。プライムセンターの12階にあるフィットネスクラブでは当時、20人ほどが音楽に合わせて「テボ」と呼ばれる運動をしていた。テボとは、テコンドーとボクシングを組み合わせたエアロビのことだ。

成均館大学建築学科の李東根(イ・ドングン)教授らは19日、現地のフィットネスクラブで再現実験を試みた。

2.7ヘルツの跳びはねでビルが共振

再現実験では、約20人がビルの上下方向の固有振動数と同じ2.7ヘルツのリズムでテボ運動を実施。8分間跳びはね続けた結果、38階に設けた加速度計が7ガルの縦揺れを記録した。

「エアロビの振動にビルが共振して、上層階に行くほど揺れが増幅したのではないか。ビルの常時微動は0.7ガル程度なので、10倍強く揺れたことになる」と李教授は説明する。

「今回の縦揺れでビル内にいた人は不安を感じたかもしれないが、ビル全体が崩壊する恐れはない」と李教授は見る。エアロビの振動がビルの固有振動数と一致したとしても、長時間続くことはまれ。数千人が同時に跳ばない限り問題はないと指摘する。

一方、この見方に異議を唱える人もいる。

韓国メディアによると、ある建築専門家は「約20人が跳んだだけで、超高層ビルが揺れたという説明は理解し難い。建物の安全が保証されていない証拠だ」と指摘。さらに、「縦揺れ騒ぎが起こったのは、フィットネスクラブがテボの講座を初めて開いた日ではないうえ、受講生が多く集まる夕方の時間帯でもない。説明が必要だ」という声もある。

後者の指摘に対して、別の韓国メディアは騒ぎの当日にフィットネスクラブでテボの講座に参加していた女性の証言を取り上げている。「新しく来た講師の最初の授業だった。普段よりも激しい動作を20分ほど繰り返した」

映画館の「振動する座席」などは無関係?

縦揺れの原因として"犯人"扱いされたのは当初、エアロビ以外に5つあった。

1つめは、同じフィットネスクラブにあるランニングマシン。2つめは、更新したばかりの空調機。3つめは、商業棟の11階にある映画館の振動する座席。4つめはビルの基礎の損傷や地盤沈下。5つめは風の影響だ。

その後の調査で、ランニングマシンや空調機の振動は、ビルと共振しないことなどが判明。原因である可能性は下がった。

映画館の座席は振動数が20~25ヘルツで、ビルの固有振動数と異なる。さらに、映画の上映開始は午前10時40分。ビルが揺れた時間と重なっていなかった。

今のところ、ビルの基礎や地盤にも異常は見つかっていない。ビル周辺の風は当時、秒速1~2mと弱かった。

大韓建築学会とプライム産業は今後、風の影響などを詳細に調べて、安全性を評価する。最終的な結論は、2~3カ月後にまとめる予定だ。

ソウル市では1995年6月、鉄筋コンクリート造5階建ての三豊(サンプン)百貨店が営業中に崩壊する事故が発生。買い物客など500人以上が死亡した。今回の縦揺れは同百貨店のようにビルが崩壊する前兆ではないかと、市民の間で緊張感が高まっていた。

(日経アーキテクチュア 瀬川滋)

[ケンプラッツ 2011年7月21日掲載]

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