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NTTが買収したディメンション・データ その実像は

ITジャーナリスト 小池 良次

2010年10月、NTTグループは約21億ポンド(発表時の予想価格は2860億円)で南アフリカのIT大手「ディメンション・データ」のTOB(株式公開買い付け)を成立させた。同年7月に発表されたこのTOBは、米インターネット大手「ベリオ」に次ぐNTTグループの大型買収として注目を集めた。買収から約半年。NTTメンバーとして動き始めた同社の状況を、シーン・コノリー氏(ゼネラルマネージャー、ネットワークインテグレーション副社長)に聞いた。

ディメンション・データ(南アフリカ)のシーン・コノリー・ゼネラルマネージャー兼ネットワークインテグレーション副社長

――今回、インターロップ・ラスベガス(Interop Las Vegas 2011)で何を発表したのか

ブランド戦略強化を発表した。新しいロゴを導入するとともに、シンガポールの子会社「データクラフト(Datacraft)」の社名をディメンション・データに統一した。NTTグループに入り、グローバル展開を強化する意味でブランド戦略を見直している。

――業績と最近の状況は。

米国でのビジネスは堅調だ。10年度の売り上げは約47億ドルだが、内訳は北米と南米、アジア、欧州・アフリカの3地域で均等になっている。従業員は全世界で約1万2000人で、北米には約2000人がいる。米国市場での事業強化を進めており、特に高度なネットワーク知識を持つ人材の雇用・育成に力を入れている。

営業面でNTTグループに貢献

――昨年10月にNTTグループに買収されたが、NTTとの関係は。

NTTとはコラボレーションチームを組んで事業開発に取り組んでいる。両社から顧客リストを出し合い、一緒に事業開発ができる企業や分野を洗い出している。

――具体的にNTTグループとの仕事が始まっているのか。

まだハネムーン時期だが、ライフサイエンス事業を手がける企業を対象に共同プロジェクトが動き始めている。今後は、こうした事例がどんどん増えるだろう。

――NTTグループに入ったメリットは?

ディメンション・データは、伝統的なシステムインテグレーションを得意とし、国内・国際ネットワークを必要とする大企業や中堅企業を顧客に抱えている。幹線網やデータセンターを持たないため、NTTグループが提供する回線や設備が大きな武器になる。

――NTTは営業面をディメンションに期待しているということか。

そうだ。ディメンションは年1回すべての顧客情報を集め、業界動向を盛り込んだリポートを作成する。このリポートは顧客のITデータを統計的にまとめたもので、(ベンダーに都合の良い情報ではなく)実情を如実に反映している。

これをベースにカウンセリングプログラムを実施している。顧客にリポートを示しながら、具体的な補強点やコスト削減方法などを提案するものだ。フィールドエンジニアは単なる保守メンテナンスではなく、これら戦略的提案ができる強みがある。人の育成に力を入れているのは、そうした理由からだ。

――欧米のIT企業は転職が多く、良い人材が定着しないのでは。

確かにそうした傾向はある。だがディメンションの競争力は人材。優秀な人材を雇用し、社内教育も充実させている。

顧客からの反応が変わった

――最近はクラウドコンピューティングがブームだが。

データセンターの高度活用は、今に始まったことではない。ここ3年ほどのクラウドブームによって、ネットワークを選ぶうえでの指標は、リスク面、経済面、戦略面で変化を起こしている。クラウド時代でも企業システムにとってIP(インターネットプロトコル)化、セキュリティー、コンプラアンス(法令順守)が重要なことと、ITシステムのライフサイクルマネジメントがこれらを軸とすることは変わらない。

――NTTに買収されて、何か変化はあるか。

顧客からの反応が大きい。「NTTグループに入ったら、何ができるようになるのか。どんな新しいサービスができるのか」といった問い合わせが多い。顧客のグローバルニーズを再発見することもある。

――NTTグループに期待することは。

役員ごとに言うことは違うかもしれないが、私の感触では次の3つだ。

まず戦略的資産運営の充実だ。資金面・技術面でのスケールアップが可能になり、国際的プロジェクトでの機動力が高まると期待できる。

次は、バリュー・プロポジション。NTTグループに入ることで、成長に不可欠な人材育成の幅が広がり、多様で深いビジネスを追求できるようになるだろう。顧客にも多様なサービスを提供できることも期待できる。

最後は、カルチャー・アスペクトだ。NTTグループに入ることで、異質の文化を交流させることになる。多様な文化や価値観をビジネス面で互いに交流させること、やりがいの違いを理解し合うことが重要になってくる。

 ディメンション・データは1983年に南アフリカのヨハネスブルクで設立されたため「南アフリカのシステムインテグレータ」と紹介されることが多い。実態は売上高の大半を欧米アジア市場で上げているグローバル企業だ。NTTが同社を買収したのは、欧米アジアでの営業力強化を狙ったものだ。
 伝統的なシステムインテグレーションを得意とし、最近の売上構成では約8割を同業務で上げている。インターネットサービスなどは数%程度にすぎない。データセンターや通信回線などの設備を持たず、顧客のニーズを発掘しながらシステムを改善することを得意とする。ただし、システムインテグレーション分野は競争が厳しく、設備を持つAT&Tビジネスやベライゾン・ビジネスなどが競争力を高めている。
 ディメンション・データはNTTコミュニケーションズの国際回線網やネットワークサービス、ベリオが持つ5つのデータセンターなどを活用できることに期待をかけている。アジア市場を開拓するうえでNTTブランドが強みを発揮するとの読みもある。
 NTT側は欧米での営業面とフィールドエンジニアの拡充で、同社に期待しているようだ。新ブランド戦略で新しく作られた名刺には、新しいロゴとともにNTTのロゴと「NTT Group」という文字が入っていた。
小池良次(Koike Ryoji)
 米国のインターネット、通信業界を専門とするジャーナリストおよびリサーチャー。88年に渡米、93年からフリーランスジャーナリストとして活動している。サンフランシスコ郊外在住。主な著書に「クラウド」(インプレスR&D)など。

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