温暖化対策の切り札の一つとして期待される、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)計画が、国内で大きく前進することになりそうだ。
CCSとは一般に、発電所や工場などから排出されるCO2を分離・回収して陸地や海底の地下深くに送り込み、地層などに染み込ませて長期間貯留する技術を指す。既に欧州などでは実用化されている技術だが、国内では環境影響評価(アセスメント)の実施方法などが決まっておらず、民間企業がCCS事業を始める際の障壁となっていた。
しかしこのほど環境省が、海底地層に対するCCSのアセスメント指針を2012年度に作成することを決めた。これは2010年11月に施行された改正海洋汚染防止法を受けたもの。同法では、アセスメントの実施を条件の一つとして民間企業が国の許可を受け、海底下の地層にCO2を貯留することを認めている。指針ができることで、それに基づく事前のリスク評価を実施できる。海洋生態系への悪影響を最小限に抑えつつ、CCS事業を本格展開するための条件が整う。
日本では今、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって、火力発電所からのCO2排出量が急増している。今後も火力発電所への依存度をすぐに減らすのは難しいとみられており、大量に排出されるCO2をどう処理するかが重要課題になることは明らかである。さらに工場からのCO2排出を減らすことで、将来の排出量取引などでも国際的に有利な立場を確保できる。今回の指針整備は、我が国のエネルギー政策、そして産業政策上でも、大きな意味を持つ可能性が高い。
■既存技術の組み合わせで可能
CCSにはさまざまな種類があるが、基本的な仕組みを説明すると次のようになる。