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将来不安を吹き飛ばす「年代別積立投資」のススメ

 年金問題や増税のことを考えると、将来への不安が募り、焦燥感に駆られる人も多いのではないでしょうか。ただし、嘆くだけでは何も変わりません。解決策としては、やはり積立投資が有効です。そして、愚直にお金をためるだけでなく、「戦略」が必要になります。ライフステージの変化を見据えて、年代に応じた積立投資を設計・実行しましょう。本連載では、30代と40代、50代のそれぞれの年代における積立投資のポイントについて解説します。

「積み立て」と聞くと、地味でまどろっこしい蓄財方法と感じていないだろうか。昭和時代のスゴロク式資産形成はもはや無効になり、年金も給料も住宅価格も、将来は闇の中だ。さらに2013年から復興増税、2014年には消費税アップも控えている。少しでも賢く将来に必要なおカネを準備しているかどうかで、人生のゴールの景色は変わってくる。こんな厳しい時代に最も頼りになるのが、積み立て投資だ。

積み立てにも「目的」をもって臨むべし

ただ、単純に積み立てればいいわけではない。戦略が必要になる。「日経マネー」が提案するのは、「年代ごとに目的と積立額を変える」という手法だ(図1)。

図1 ライフステージの変化を見据えた積立投資で将来不安を解消しよう(イラスト:深川直美)

典型的な失敗は、20~30代に積立貯蓄を始め、その後目的と金額を変更せず、40代にギブアップしてしまうこと。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは、「40代は子育てや住宅ローンで支出が大幅に増加する期間だがら減額が必要。しかしそのとき踏ん張って毎月1万円でも続けるどうかが老後の生活を決める」と言う。

ファイナンシャルプランナーの岩永慶子さんは、「漠然と老後を心配して積み立てるのではなく、老後・住宅・教育の3大分野に分けて目的別積み立てをすべきだ」とアドバイスする。

今回、子供がいて住宅を買うファミリーをモデルに、年代別の悩みと解決策を考えた。まずは30代、40代、50代の各年代での積み立て投資の注意点についてみてみよう。人生全体を俯瞰(ふかん)して積立投資の意義を感じてほしい。

年代別にみる積立投資のポイント

【30代】スタートダッシュが肝心

30代は「人生の中で最もアクセルを踏んで積み立てるべき時期」(深野さん)。ここは何としてもスタートダッシュしていただきたい。現在の年金受給者の平均的な支出額を考慮すると、「60歳から90歳までの30年間、年間約120万円ずつ不足することが多い」(岩永さん)という。退職金が約1500万円出たとしても、約2000万円足りない計算になる。それを何歳から準備するかで、人生後半の負荷が大きく違ってくる(図2)。若いときに積み立て始めれば有利なことがわかる。

図2 60歳までに2000万円ためるために必要な積立額

【40代】わずかな余剰資金を効率的に積み立てる

支出激増時代の40代。30代前半で子供2人が生まれた場合、40代後半で2人とも大学に入学するケースが多い。大学が国公立なら学費は1人200万円程度で済むが、私立の場合や、一人暮らしの場合は仕送りも増え、一人500万円などかかることもある。この教育費をどれだけ40代後半までに積み立てられているかがポイントだ。

また、住宅を購入する人の平均年齢は36歳であるから、40代は住宅ローンの支払いも家計支出の大きな項目となる。

しかし積み立てをあきらめるのは早い。わずかでも手元に残る毎月の黒字部分を、効率的に積み立てるノウハウはある。積み立てテクニックを身に付け、教育資金や老後に備えよう。

【50代】10年後の定年退職に向けて老後資金の運用計画を

50代前半で子供の教育支出が終了すると、家計は急激に楽になる。といって気を緩めてはダメだ。図3は退職金の受取額だ。公務員は2000万円以上が85%以上だが、会社員になると500万円未満も17%いる。"老後難民"にならないためにも、「最後の正念場」と肝に銘じて、余力のある限り積立投資に回したい。収入が途絶えるときは間近に迫っている。

図3 退職金の受取額。会社員は受け取る退職金の金額がまちまち。他人と横並びで考えにくいことから、老後準備の設計は、自分でしっかり考えよう。 フィデリティ退職・投資教育研究所調べ(回答者数7778人)

ここからは年代別・年収別の積み立て戦略を考えていこう。まずは30代の積立投資だ。

30代の積立投資、黒字の8割を目的別に投資

30代は、仕事でも家庭でも支出が増え始める。しかし、40代には住宅費や教育費などがかさむことを見通して、しっかりと積み立てる必要がある。毎月の支出を考慮し、積み立て目標額は年収が増えるにつれて増やしていきたい(図4)。

図4 年収別にみた30代の積立額の目標

たとえば30代の手取り収入500万円の家庭では、毎月の平均黒字額は約8万円になる(図5)。「教育費や住宅費などを支払った後の黒字部分から、約8割の6万円を積立貯蓄に回そう」と岩永さん。この時期はまだ子供も小さく、急な医療費などが必要になる。そういった用途のために余剰金のうち2割程度はのりしろを取っておくと無理がなく、積み立てやすい。

この虎の子の6万円の積み立て目的については、「40代で必要になる大学入学費のために2万円、住宅購入の頭金用に3万5000円、老後のために5000円と目的別に積み立てて」と岩永さんは提案する。

投資先も目的別に変えよう。「教育費や住宅費なら元本割れを避けて定期預金などの確定利回りの商品がいい。一方、老後資金はリスクをとった国内外の株式投信がいい」と深野さんはアドバイスする。

図5 30代の年収と支出、投資の例(年収ごとの平均的な支出は、総務省家計調査などからノースアイランドが試算)

年代に応じた積立投資を進めるにあたっては、その年代ならではの誤解が生じることがある。30代で誤解しがちな2つのポイントについて解説しよう。

「ずっと賃貸なら住宅費負担は少ない」は本当か

住宅を購入せず一生賃貸でいいと考える30代は増えている。だからといって将来の住宅費の重荷から解放されたわけではない。図6は、3500万円の住宅(マンションと戸建て)を購入する場合と、30歳から85歳まで賃貸住宅に住んだ場合の総コストを比較したものだ。

図6 住宅費総額の比較(ファイナンシャルプランナー前野彩さん作成)

住宅購入コストには住宅ローン(フラット35)、固定資産税、マンション管理費、修繕積立金、戸建てリフォーム代などの諸経費を考慮している(国土交通省のデータを参照)。賃貸では家賃が月8万~14万円の場合に分けて計算した。

その結果、家賃10万円の家に85歳まで住み続けると6600万円かかり、3500万円の物件購入総コストとさほど変わらないことが判明。家賃8万円の場合でも5000万円強になる。岩永さんは「今後ますます高齢化社会になり、リタイア後には高齢者向け住宅への住み替え費用も必要になる。そのために収入がある30代のうちからコツコツ住宅費を積み立て貯蓄しておくべきだ」と指摘する。

一方で、住宅購入を考える人には、深野さんは「1万円でも多く頭金を用意しておくべきだ。元本保証を重視して定期預金などで毎月5万~6万円積み立て貯蓄すれば、5年で350万円は準備できる」とアドバイスする。30代から人生の住まいにかかる総コストを意識した目的積み立てを始めよう。

教育費と老後資金では運用方法を変える工夫を

「60歳まで30年もあるから、高い運用益を狙ってハイリスク・ハイリターン投資に集中しよう」と考え、余剰資金の全てを新興国株投信などに積み立てるようなことをしていないだろうか。価格変動が大きい投資先の場合、最大で資産が4~5割減ることもある。大切な教育資金や住宅費は元本がなるべく減らない投資先を選ぼう。

一方で、老後資金の場合は長期運用となるので、リターンを高める工夫も必要だ。深野さんは「長期運用なら国内外の株式や債券に投資するアクティブ投信を勧める。特に販売手数料が無料(ノーロード)の直販型投信はコストも安いので、期待を込めて推薦したい」と言う。

岩永さんが勧めるのは、金や穀物などのコモディティーへの投資だ。 「学資保険などに数万円積み立てているのなら、その一部を純金積立に充てるのも一手です」。田中貴金属工業、石福金属興業、徳力本店などで毎月1000円などから積み立てられる(図7)。

図7 各社の純金積立プラン

この人たちに聞きました

岩永慶子さん
 ノースアイランド常務取締役ファイナンシャルプランナー。暮らしの中で役立つ知識から資産形成術まで、幅広い分野で定評がある。
深野康彦さん
 ファイナンシャルリサーチ代表ファイナンシャルプランナー。投信を活用した最新の資産形成テクニックが、若い世代からも人気。
野尻哲史さん
 フィデリティ退職・投資教育研究所所長。退職に向けた50代からの資産形成術に詳しい。著書に『老後難民』など。

(日経マネー 羽生祥子)

[日経マネー2012年5月号の記事を基に再構成]

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