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東海・東南海・南海地震で震源域は日向灘に延びる恐れ

多数の想定震源域が連動して、国内観測史上、最大のM(マグニチュード)9.0を記録した東日本大震災。今後、起こり得る東海・東南海・南海地震も連動する可能性が高いと専門家から指摘されているが、その連動する距離が長くなる可能性が最近の研究から明らかになった。

同地域での地震の履歴を追うと、1605年の慶長地震(M7.9)や1707年の宝永地震(M8.6)では三つの地震が連動。1854年には安政東海地震(M8.4)の32時間後に安政南海地震(M8.4)が、そして1944年には東南海地震(M7.9)の2年後に南海地震(M8.0)が発生した。江戸以降、100~150年の間隔で三つもしくは二つの地震が連動しており、次も同じような連動が想定されている。

「東海・東南海・南海地震が連動した場合、西側の日向灘まで震源域が延びるパターンがあることが分かってきた」と、東京大学地震研究所の古村孝志教授は話す。古村教授は文部科学省の研究委託事業で、三つの地震が連動する場合の被害予測の研究に携わっている。

高知大学理学部の岡村真教授らの研究では、大分県佐伯市の沿岸部にある龍神池の地質調査で、400~600年の間隔で押し寄せた巨大な津波による海の砂の堆積を確認している。この津波が龍神池まで押し寄せるメカニズムは、従来の東海・東南海・南海地震の想定震源域では説明できなかった。

しかし、「日向灘まで震源域を延ばして発生する津波をシミュレーションすれば、龍神池での津波による堆積を説明できる」(古村教授)。プレート間の固着域のひずみの解析や低周波微動の調査など、この仮定を裏付ける研究成果も出ている。

従来の東海・東南海・南海地震が連動した場合の想定震源域に、さらに日向灘まで震源域が延びたと仮定してシミュレーションした津波襲来の様子。左上から時計回りに本震から4分後、10分後、20分後、28分後。九州の太平洋沿岸や高知県に高い津波が押し寄せる(資料:古村孝志・東京大学地震研究所教授)

滑り量次第で巨大地震に

研究成果は、東海・東南海・南海地震が連動して起こる何回かに1回の割合で、日向灘まで震源域が延びていたことを指す。前述したなかでは、1707年の宝永地震がそれに当たるとされている。

「宮崎県の沿岸などでは、現在の想定よりも長周期の地震動が発生する恐れがある」と古村教授は分析する。また、九州太平洋沿岸の津波高は従来の想定で2m付近だったのが最大で8m級に、高知県土佐清水市での津波高は従来の想定で6m級だったのが10m以上になる可能性がある。さらに、瀬戸内海まで津波が入り込む恐れもある。

「これらの津波高は、古文書などで得られた宝永地震時の津波高のデータとほぼ一致する」(古村教授)。

東海・東南海・南海地震の連動で日向灘まで震源域が延びた場合、地震の規模を表すマグニチュードはどの程度になるのか。

海洋研究開発機構(JAMSTEC)地震津波・防災研究プロジェクトの金田義行プロジェクトリーダーは「震源域の長さは駿河湾から日向灘までの約700km、幅は低周波微動の調査で約200kmと想定はできても、滑り量によってマグニチュードは大きく変動する」と話す。

1605年に起こった慶長地震では、南海トラフの海溝寄りが滑ったことで大きな津波が発生した。起こり得る最悪のシナリオを想定すると、「宝永地震と慶長地震のような特徴を持つ同様の地震が同時に起こった場合は、滑り量次第で巨大地震が発生することもあり得る」(古村教授)。

東日本大震災でも大きな滑り量が確認されている。海上保安庁の発表によると、震源のほぼ真上の宮城県沖の海底が、東南東に約24m移動したことが分かっている。

「日本海溝ではプレート間の固着が小さく、常時、滑っている領域では地震エネルギーをため込む仕組みがないと考えられていた。しかし実は、約千年かけて少しずつエネルギーをため込んでいたようで、東日本大震災ではそれが開放されてM9の巨大地震が発生し、大きな海底変動によって大津波が発生した」と金田プロジェクトリーダーは推測する。

東日本大震災による海底の水平方向の動き(資料:海上保安庁)

海底に計測器を置いて警報をより早く

来るべき東海・東南海・南海地震に備えて、JAMSTECは地震・津波観測監視システム(DONET)の整備を推進している。東南海地震の震源域に当たる紀伊半島沖の熊野灘に、高精度の地震計や水圧計(津波計)からなる観測点を海底に設置している。現在は11カ所に設置済みで、2011年度末までに全20カ所の設置を完了する予定だ。

DONETとはリアルタイムで地震や津波をモニタリングするシステムだ。験潮所やGPS(全地球測位システム)波浪計などと比べて沖合にあるので、より早期に津波などの情報を得ることができる。「場所によって違うが、三重県尾鷲市ではこれまでより5~10分早く検知できるようになる」(JAMSTECの金田プロジェクトリーダー)。

東海・東南海・南海地震は、東日本大震災に比べて震源が陸地に近いことが予想されるので、地震直後に巨大な津波が来襲する可能性が指摘されている。沿岸の住民にとって、少しでも早く津波情報を知ることができれば、それだけ助かる可能性は高まる。

さらにDONETを使用して「データ同化」という予測の高精度化を試みる動きもある。

「天気予報では、予測すれば次の日に結果が分かる。そのため予測と実際の結果の違いを修正し、長期間にわたり調整すれば予測の精度が向上する。同様のことを地震でも開発中だ」と金田プロジェクトリーダーは話す。

地震の発生予測と地震が実際に起こった結果を比較するのではなく、地震発生予測から推定する地殻変動量などと観測結果との違いを修正して、長期間にわたり調整することで予測精度を深める。DONETは、陸地で観測できないような小さな地殻変動などを検知することができるので、それを利用する。

JAMSTECは、南海地震が起こるとされる震源域にも同様のシステム(DONET2)を構築する予定だ。2011年度からプロジェクトが始まっており、29カ所に設置する方針だ。

「東海・東南海・南海地震の連動で注目すべきなのは、どのような時間差で連動するかという点だ。例えば、東南海・東海地震が先行した場合、南海地震がいつ起こるのか。数時間、数日、数カ月あるいは数年後か。それを少しでも見極めるために『データ同化』の開発とともに、震源域で進行する現象を精緻に観測できる海底ネットワークDONETの整備が急がれる」(金田プロジェクトリーダー)。

DONETは紀伊半島南東部の黒い点線の範囲に設置。DONET2は紀伊半島南西部の赤い点線の範囲に設置する(資料:JAMSTEC)

(日経コンストラクション 真鍋政彦)

[ケンプラッツ 2011年4月20日掲載]

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