国内3位の巨大SC イオンモール幕張新都心を大解剖
2013年12月20日、千葉市美浜区のJR海浜幕張駅近くに「イオンモール幕張新都心」が開業した。
敷地面積約19万2000平方メートル、総賃貸面積約12万8000平方メートル、全長1.5キロの巨大ショッピングセンター(SC)で、国内第3位の規模となる。イオンモールの旗艦店と位置づけられ、幕張メッセなど周辺施設の利用者も含めて広域商圏から年間3500万人の来場者を見込んでいる。

モールは「大人」「ファミリー」「スポーツ&家電」「ペット」をキーワードに世代やライフスタイルで分けた4つの施設で構成。「夢中が生まれる場所」をコンセプトに、イオン幕張新都心店のほか、日本初上陸や新業態、千葉初出店といった184店舗を含む約360の専門店を集積した。


「体験」から新たな消費ニーズを呼び起こす
最大の特徴は、「体験型施設」を多数導入したことだ。劇場、職業体験テーマパーク、特撮ヒーロー展示館などエンターテインメント施設だけでなく、物販エリアにも楽器演奏やピザ作り、スポーツ用品の試し打ち、自転車の試乗など、体験をウリにしたテナントがそろう。体験の場は、実に施設全体の3分の1にも及ぶ。
「例えば自転車を売るだけでなく、サイクリング会を企画すれば、仲間ができて新しいウエアも欲しくなる。音楽なら聴くだけにとどまらず、楽器演奏やレッスン、発表会もしたくなる。ココでしかできない体験の場を提供することで、新たなニーズを呼び起こすのが狙い」(イオンモール広報)という。
従来のショッピングモールは物販が主体で、イベントは土日の集客策の域を出なかった。しかし、昨今はネットでもモノが買える時代。モールにわざわざ足を運んでもらうには、買い物以外の楽しさを提供することが求められている。


常に体験の機会や場を提供することでリピーターを増やし、新たなニーズを喚起して購買意欲を誘う。さらに、若いファミリーだけでなく、シニア世代も一緒に楽しい時間を過ごしてもらうことで、親子3世代を取り込んでいく。体験や思い出づくり、絆づくりに重点を置いて随所に「仕掛け」を設けたのが同店というわけだ。イオンモールでは今後、同じコンセプトのモールを広げていく方針で、同店が試金石となる。
ただ、同店から半径5キロ圏内にある「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」が大規模なリニューアルを行うなど、迎え撃つ側も仕掛け作りに躍起だ。体験重視のショッピングモールが消費の新たな主役となれるのか。注目施設を中心にリポートする。

お笑い劇場から大人向け書店、デンマーク発低価格雑貨店まで
大人をキーワードとする「グランドモール」は、ゆったりした上質な空間が印象的。1階フロアの広い通路には落ち着いた雰囲気のソファが並び、百貨店のような雰囲気さえ漂う。

大人のホビーゾーンには、代官山で人気の「蔦屋書店」が出店。書籍はもちろん音楽や映画も堪能でき、コーヒーを飲みながら自分だけの自由な時間を過ごせる。3階のフードコートも大人向けで、従来のイメージとは一線を画すシックな内装デザイン。ライブ感を味わいながら人気レストランのいち押し料理を味わえるのが魅力だ。
グランドモールは3フロア構成で全237店舗が出店。なかでも注目は、吉本興業初のショッピングモール内常設劇場「よしもと幕張イオンモール劇場」だ。9つ目の直営劇場で人気芸人のお笑いライブはもちろん、アイドルの公演、ダンスパフォーマンスなどが毎日3回、日替わりで行われる。ここからテレビ番組が中継され、エンターテインメントの発信拠点にしていくという。さらに、芸人やタレントによる「笑って学べるカルチャースクール」も開校。多彩なワークショップが開かれるので、一度は体験してみたい。




ほかには、日本初上陸のデンマーク発低価格雑貨店「ソストレーネ・グレーネ」や「ナムコ キャラポップストア オトメイト」「ブシロードストア」など、最先端のポップカルチャーを集積した「ジャパンポップジャングル」、メーカーのアンテナショップやイートインスぺースを併設したグルメゾーン「ぐるめぐり」が見逃せない。
また「島村楽器」には楽器のレッスンが受けられるスタジオを併設。食品サンプルや革小物を手作りできる体験型ショップもあり、飽きさせない工夫が随所に盛り込まれている。
ファッションや雑貨店に併設したカフェのほか、「ガンダムカフェ」や鉄道カフェなど、マニア垂涎(すいぜん)のコンセプト型カフェが充実しているのも特徴だ。





写真で見て歩く「グランドモール」











親子3世代で楽しめる、日本初のレストラン併設職業体験テーマパーク
親子3世代をターゲットにした「ファミリーモール」には、体験型テーマパークやエンターテインメント施設、メーカーのアンテナショップなど約80店舗が勢ぞろいした。幼児に合わせたテーブルや椅子を配置したフードコートのほか、噴水やビーチなど水遊びができる屋上公園もあり、子供連れにはとっては1日中楽しめる施設になっている。
特に注目なのが、日本初のレストラン併設職業体験テーマパーク「カンドゥー」だ。ららぽーと豊洲とららぽーと甲子園にあるキッザニアの創設者が新たに手がける施設で、世界で3店舗目。広さは約2500平方メートルとキッザニアよりは小規模だが、レストランとパビリオンを融合し、シニア層も楽しめる工夫が施されている。

パーク内は中央に約530席の大型レストランを配置し、それを取り囲む形で約35のパビリオンが並んでいる。警察署や銀行、ラジオ局、劇場、ファッションモデルなどの仕事を疑似体験でき、家族はその様子を中央のレストランから見守れるので安心だ。



「レストランを併設し、大人もアクティビティに参加できるのがキッザニアとの大きな違い。レストランは指定席制で、座りたいときに座れる。3時間ゆっくり家族と過ごせるので、シニアにも楽しんでほしい」と、カンドゥージャパンの越純一郎社長は話す。





親子でうれしい「東映ヒーローワールド」
特撮ヒーローファン必見なのが、東映の歴代ヒーローの所蔵品を展示した体験型エンターテインメント施設「東映ヒーローワールド」だ。ヒーローが集う秘密基地の設定で、怪人と格闘するシーンをリアルに再現。「仮面ライダー」「スーパー戦隊」シリーズなどで実際に使用されたスーツや小道具など総数100点が展示されている。
新サイクロン号に乗った仮面ライダー新1号とショッカーの戦いを再現したコーナーは親世代にとっては感動ものだ。懐かしい作品から最新情報まで展示した「ヒーロー博物館」も圧巻。ほかにも特撮ヒーローになりきれるアトラクションやオリジナルフードを味わえるカフェ、物販コーナーがあり、小さな子供連れから大人のファンまで楽しめそう。










ボルダリングスタジオやフットサルコートも
店舗面積約1万5000平方メートルと国内最大級の規模となる「スポーツオーソリティ」の旗艦店を中心に、充実した品ぞろえのサイクルゾーンやスポーツ関連家電を集積したのが「アクティブモール」。
スポーツオーソリティは1階がアウトドア愛好家に向けたトレッキング・キャンプのフロア、2階がチームスポーツとスポーツファッションのフロア、3階がランニング、ゴルフなど個人競技と健康関連のフロアで構成。ブランドショップと施設を含め、全22店舗が出店している。

注目はやはり、モール内に体験施設を備えたことだ。約430平方メートルの大型ボルダリングスタジオ「ペキペキ」をはじめ、インドアテニスの「アルドールテニスステージ」「K9フットサルコート」「3on3コート」を完備。さらに、売り場内にも約500本の試打シャフトをそろえた「シャフトミュージアム」と「ゴルフシミュレーター」のほか、野球、テニス、バドミントンの試し打ちやサッカーの試し蹴りができる体験コーナーが充実している。ジャンルごとに元スポーツ選手らが専門スタッフとして接客対応し、プレイのアドバイスもしてくれるので安心して相談できそう。




ほかにも「コロンビアスポーツウェア」による、世界初の4ブランドコンセプトショップや国内最大級の「ナイキバスケットボールスペース」、「ザ ノース フェイス プラス」など、人気ブランドのショップが多数そろっているのも見逃せない。





ペットのリハビリ専用プールまで完備
ペットの健康や高齢化、しつけといったさまざまな問題を解決し、ペットと安心して暮らすための商品とサービスを提供するのが「ペットモール」。店舗面積約2000平方メートルの総合ペットストア「ペコス」は、中央に吹き抜けを配した開放感のある空間が印象的だ。
1階には夜間救急も可能な24時間診療の動物病院を開設したほか、リハビリやダイエットのためのウォーターセラピーに対応したジェットプール、老犬のトリミングにも対応するビューティサロン、介護サービスや医療ケアも行う総室数100室のペットホテルを設けた。2階にはオーガニックフードやナチュラル志向のウエアや雑貨をそろえた物販エリアを展開する。

さらに屋外にはドッグランやドッグカフェを併設したドトールコーヒーショップが出店している。
ペットモール内はペット同伴で入店できるので、愛犬と1日ゆっくりと過ごせるのが魅力。ペット販売コーナーはもちろん、ビューティサロンや水泳教室、トレーニングルームなどはガラス張りで外から見えるため、ペットを飼っていなくても十分楽しめそうだ。





(ライター 橋長初代)
[日経トレンディネット2013年12月20日付の記事を基に再構成]