「ノーベル賞は過去形になる」に学ぶ

2012/12/21付
保存
共有
印刷
その他

先日、日本科学未来館(東京・江東)で開かれたDIY(日曜大工)のイベント「Maker Faire Tokyo 2012」に足を運び、久々に再会した企業がありました。金型製造や製造業向けの生産効率化のコンサルティングを手がけるインクス(東京・千代田)です。

同社は米国で光造形技術を目の当たりにした創業者の山田真次郎氏が1990年に設立。3次元CAD(コンピューターによる設計)を活用して試作金型を短期間で製造する事業により急成長しました。しかし、08年に自動車向け金型の受注が急減して資金繰りが悪化し、09年2月に民事再生法の適用を申請。13年4月から社名を「SOLIZE(ソライズ)」に変更して再出発します。

   ◇         ◇   

金型業界の取材を担当していた07年、同社はCADのイベントで展示会場の目立つ場所に大きなブースを構え、大勢の人を動員しての華々しいプレゼンテーションが印象的でした。当時はまさかインクスが経営危機に陥り、民事再生法を申請する状況に追い込まれるとは思いもよりませんでした。

今回のDIYイベントに足を運んだのは、このブログで以前取り上げたクリス・アンダーソン氏著の「メーカーズ」を読んだのがきっかけです。樹脂など様々な素材で立体を成形する3次元プリンターの普及で今後、製造業などに革命が起こると同氏は予測しています。現時点で日本で購入できる3Dプリンターは高額ですが、イベント会場では小型・低価格の3次元プリンターの周りに子供連れの家族をはじめ多くの人が集まり、実機を見るのも難しいほどのにぎわいでした。

大人気の3次元プリンターの近くにブースを出していたのがインクスです。同社の担当者は「一般の人がCADを使いこなし、実際に自宅でものを作り出すのはまだまだ難しい状況でしょう。でも、これまで企業向け分野で培ってきたCADを使った設計技術を生かし、個人向けの需要を取り込むつもりです」と話してくれました。ブースもかつてのような華やかさはありません。しかし、何とか時代の流れを読み取り、地道に需要をつかみ取ろうとする同社の姿に共感を覚えました。

   ◇         ◇   

「ノーベル賞は過去形になる」――。今月10日、ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授の授賞式を終えてのコメントがとても印象的でした。栄誉を手にしたその直後に「これからの研究が大切なので一生懸命やりたい」と語る真摯な姿に胸を打たれました。

前述したインクスの取り組み姿勢と山中教授のコメントに共通するのは、失敗で足踏みしたり成功に安住したりすることなく、「前に進む力」ではないでしょうか。今日の成功も、経済環境などの外部要因によってはすぐに過去のものになってしまいます。

今年も残すところあとわずか。私自身、今年もたくさんの失敗をしました。インクスの姿勢や山中教授の言葉を胸に刻み、来年も前を向いて進んでいこうと思いました。

(杉)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]