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グーグルのしたたかSNS戦略 水面下で検索改革

ブロガー 藤代 裕之

「Google+(グーグルプラス)ってゴーストタウンだよね?」。グーグルが運営するSNSであるグーグルプラスは、LINEやツイッター、フェイスブックなどに比べると存在感が薄い。「日本のSNS利用でLINEに次ぐ2位はGoogle+(グーグルプラス)」と、総務省が4月に発表した調査で明らかになると、「間違いではないか」と話題となったほどだ。調査は回答者が「グーグル」と間違えた可能性がある事が分かり、騒動は沈静化した。ただ、グーグルは、企業や個人がグーグルプラスを使わざるを得なくなる仕組みをひそかに導入しつつある。

鬼門のソーシャルサービス

グーグルプラスを紹介する冊子

グーグルプラスの月間アクティブ数は世界で5億4,000万ある。日本国内の数値は未公表だが、ゴーストタウンというほどではない。ジャストシステムの「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2014年4月版)」によると、グーグルプラスに関して「このサービスを現在利用している」と回答したのは17.2%、ツイッターの36.4%には及ばないが、mixiの16.5%より多い。14.6%だった1年前にくらべてじわりと増えている。

激しい争いが繰り広げられるソーシャルサービスだが、ウェブを制覇している巨大企業グーグルにとって鬼門だった。グーグルプラスは、2011年の6月に招待制で始まった。それまでに、Orkut、Buzz、Waveなどのソーシャルへの取り組みが相次いで失敗しており、エリック・シュミット会長(当時)が「ソーシャルネットワーキング分野で方向性を間違った」とインタビューに答えたことも話題となった。

グーグルプラスには、企業向けのグーグルページや、同じ趣味や関心を持つ人たちが集まるコミュニティーも存在しており、機能的にはフェイスブック対抗と受け止められている部分もある。しかしながら、グーグルの山本裕介プロダクトマーケティングマネージャーは、フェイスブック対抗は誤解とする。「GメールやYouTube、(ビデオ会議システムの)ハングアウトといったグーグルの各種サービスを便利に使うために始まったプロジェクトで、Spine(背骨)と呼んでいます」(山本氏)。

スマホと写真が転機に

だけシェアの画面

国内の利用シーンとしてはAKBのメンバーが活用というイメージが強いが、現在は写真管理で使う人が増えているという。昨年、スマートフォン用アプリで写真と動画の自動バックアップが行えるようになり、人気という。「おまかせビジュアル」と呼ばれる写真に効果を追加する機能も用意されている。露出の最適な複数の写真を合成したり、短いアニメーションを作ったり、雪景色に雪を降らせたりできる。また、誰に公開するかを細かく変えられるプライバシー設定を使い、「だけシェア」というキャンペーンを実施している。グーグルでは、家族やカップル、仲間、だけに限定して写真を共有する仕組みをアピールしている。

山本氏は「子供の写真を家族にメール添付で送るより、グーグルプラスをつかって共有したほうが便利。写真の一元管理ツールとして使ってもらえる」と話す。

グーグルプラスの分かりにくさは、フェイスブックやツイッターのようにも使えるし、写真管理もできるし、YouTubeやGメールと連携しているという多機能さによるともいえる。そこで、グーグルプラスには冊子が用意されている。一つは個人向け、もう一つは企業向けの2種類があり、イベントなどで配布している。

自社サイトへの流入に強さ

企業向け冊子には、プロ野球球団のヤクルトスワローズやパルコでの利用事例が紹介されている。ヤクルトはマスコットキャラクター「つば久郎」とファンがハングアウトで交流するイベントを開いている。他には、講談社のファッション誌「CanCam」でのモデルオーディションもグーグルプラスを使って行われている。オーディションへの参加は写真をアップするだけで、投票はユーザーが「+1」を押し、その日最も多くの「+1」が集まった人が勝ち抜く仕組みだった。

それほど知られていないグーグルプラスを活用した取り組みだが、オウンドメディア化を進めている企業には注目すべきデータがある。ガイアックスのソーシャルメディアラボの4月の調査によると、「自社サイトへの流入に最も効果の高いSNSはどこか」を調べたところYouTubeに次いでグーグルプラスが2位だったという。これは、先ほど分かりにくさの原因と説明した各種サービスとの連携によって露出が増えるとともに、グーグルの検索結果の向上につながっているためだ。

あらゆる情報がひとつのIDに統合されるのが「気味が悪い」といったユーザーの声があるのも事実だが、企業からすると便利な統合サービスとなり得る。中村全信ブランドソリューションエキスパートによれば、日本語未対応ながら、ハングアウトとショッピングを組み合わせた「ショッピング」や語学や料理や楽器演奏などの授業が受けられる「ヘルプアウト」も始まっている。中村氏は「革命的なことが起こりそうな予感がしている」と期待を寄せる。

検索の根幹情報になるのか

グーグルの山本裕介プロダクトマーケティングマネージャー(左)と中村全信ブランドソリューションエキスパート

つい最近、グーグルの品質チームの責任者が、検索結果を求める際に重視する指標をページランクからオーサーランクへと転換する可能性を示唆して話題を集めた。ページランクは、ウェブページへのリンクを計算し、検索結果を決める仕組みだ。オーサーとは著者のことで、誰が情報の発信者なのかを検索結果に反映させていくという。このページランクから、オーサーランクへの変化の中心にグーグルプラスが位置付けられている。既に、グーグルプラスに自身が書くブログを連携させると、検索結果に反映されるようになっている。

ページランクは、検索エンジンの世界に革命をもたらした。その結果、SEO事業者は検索結果上位に表示されることを目指して、しのぎをけずり、リンクの売買さえも行われている。一方でグーグルは適正な結果が得られるよう、SEO事業者の過度な操作を排除するよう、対応し続けてきた。

検索結果にグーグルプラスの利用が反映されるようになれば、メール、YouTubeなど日常的に使っているサービスの利用状況も検索結果の判断に加えられるようになる。SEO事業者などが架空のグーグルプラスアカウントを大量に維持するのは難しいため、検索結果にスパムが入り込むことは減少する可能性が高い。

半面、もし、サイト運営者やSEO事業者による違反が見つかれば、従来なら検索結果や広告システムにとどまっていたグーグルからのペナルティーが、グーグルの提供するあらゆるサービスに及ぶ恐れもある。つまり、グーグルプラスを「使わざるを得ない」状況が静かに進みつつある。こうした事態をどう考えるのか、最後はユーザーが決めることになる。

藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。法政大学社会学部准教授。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。

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