2019年8月26日(月)

政客列伝 椎名悦三郎(1898~1979)

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外相就任、日韓国交正常化成し遂げる 「飄逸とした仕事師」椎名悦三郎(4)
政客列伝 特別編集委員・安藤俊裕

(4/4ページ)
2012/8/26 7:00
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1960年(昭和35年)7月
自民党政調会長に
同年12月
第2次池田内閣で通産相
1962年(昭和37年)11月
岸派分裂、川島派に加わる
1964年(昭和39年)7月
外相に就任
同年11月
佐藤内閣で外相再任
1965年(昭和40年)2月
韓国訪問、日韓基本条約に仮調印
同年6月
内閣改造で外相留任
同年6月
日韓条約、関連協定に正式調印
同年12月
ソウルで日韓条約批准書交換式

18日午前、青瓦台に朴大統領を表敬訪問し、同日午後から李外相と基本条約仮調印に向けて本格的な交渉に入った。帰国を翌日に控えた19日夜に椎名外相主催の返礼レセプションが開かれたが、交渉は妥結に至らなかった。李外相はレセプションの途中で椎名を高級料亭に誘い出し、最後の詰めの交渉に入った。日韓併合条約の有効性や韓国政府の管轄権はどこまで議論しても平行線だった。椎名はこれらの問題は玉虫色にして事実上棚上げして妥結を図るほかないと李外相の政治決断を求めた。

最後までもめた韓国の管轄権については韓国に関する国連決議の案文を参考に玉虫色の表現にすることで落ち着いた。竹島領有権問題も棚上げにした。李外相は「自分の授権範囲を超えている問題もあるから大統領の承認を得ないと」と言い出した。朴大統領はこの日、鎮海湾に停泊中の軍艦に泊まっていた。椎名はすぐに軍艦の中の大統領に連絡するよう李外相に求めた。朴大統領の承認が伝えられたのは20日午前1時であった。椎名はそれから宿舎に戻って外務省の随員と打ち合わせて床についたのは午前3時だった。

椎名外相は20日午前5時半に起床し、パジャマ姿のまま、佐藤首相、川島副総裁、三木幹事長、橋本官房長官に相次いで電話して交渉妥結を報告し、基本条約仮調印の承認を求めた。佐藤首相は「それで国会答弁は大丈夫か。野党の攻撃はかわせるか」と尋ねたが、椎名は「国会答弁は私が全責任を負うから心配はご無用だ」と答えて佐藤の承認を取り付けた。同日午後2時、椎名外相と李外相は日韓基本条約に仮調印し、午後3時半に椎名は金浦空港を立って予定通り帰国した。

日韓基本条約に正式調印し、握手を交わす椎名外相(中央右)と韓国の李東元外相=毎日新聞社提供

日韓基本条約に正式調印し、握手を交わす椎名外相(中央右)と韓国の李東元外相=毎日新聞社提供

基本条約の仮調印で残る懸案についても日韓交渉と国内調整は一気に進展した。椎名外相は請求権問題で無償3億ドル、有償2億ドルのほか1億ドル以上とされた民間協力の規模を3億ドルとし、漁業協力について4000万ドルとする腹案をまとめて3月20日の佐藤首相、田中蔵相、赤城農相との4相会談に臨み、すべての了承を取り付けた。特に田中蔵相は大蔵事務当局の不満を抑えて「これは大きな政治問題だから」と椎名提案にすぐに了解の署名をした。田中は椎名の兄貴分の川島副総裁と親密だったが、椎名も田中の決断の早さを高く評価していた。

この結果、4月3日、日韓両国外相は東京で請求権、漁業、在日韓国人の法的地位の3懸案について協定に仮調印した。椎名は同年6月の内閣改造でも外相に留任し、6月22日、東京で日韓基本条約、及び関連協定が両国外相によって正式に署名調印され、戦後の最大の外交懸案の一つだった日韓国交正常化がようやく実現した。残るのは国会の承認手続きであった。北朝鮮一辺倒の社会党、共産党は院外の反対デモと呼応して徹底抗戦を試み、国会審議は大荒れになったが、蔵相から自民党幹事長に転じた田中角栄の豪腕によって同年12月8日に承認手続きは終了した。

昭和40年12月18日、ソウルで日韓条約の批准書交換式典が開かれ、戦後初めて韓国内で君が代が演奏された。普段は冷静な椎名もこの日は顔を上気させて韓国首脳と固い握手を交わした。日韓国交正常化を成し遂げた椎名悦三郎は一躍、名外相として内外にその名を高めた。=敬称略

(続く)

 主な参考文献
 「記録椎名悦三郎(上下巻)」(82年椎名悦三郎追悼録刊行会)
 椎名悦三郎著「私の履歴書」(私の履歴書第41集収載=70年日本経済新聞社)
 「現代史を創る人びと4(椎名悦三郎インタビュー収載)」(72年毎日新聞社)
 「椎名悦三郎写真集」(82年椎名悦三郎追悼録刊行会)

※1、2枚目の写真は「椎名悦三郎写真集」から

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