2019年2月17日(日)

スパコン「京」で復活した「忘れかけられた技術」  スパコンは再び「水冷」へ(1)

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2012/7/27 7:00
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国家プロジェクトとして理化学研究所と富士通が共同開発した次世代スーパーコンピュータ「京」[注1]。2011年11月、理論演算処理性能10.51PFLOPS(ペタフロップス、毎秒1.051京回の浮動小数点演算を行う)を達成し、LINPACK[注2]ベンチマークのTOP500リストで2期連続となる首位を獲得した(図1)。

図1 理化学研究所に設置されたスーパーコンピュータ「京」  10.51PFLOPSという演算性能を誇る「京」は864台のラックで構成され、神戸市のポートアイランドにある理化学研究所計算科学研究機構に設置されている。

図1 理化学研究所に設置されたスーパーコンピュータ「京」  10.51PFLOPSという演算性能を誇る「京」は864台のラックで構成され、神戸市のポートアイランドにある理化学研究所計算科学研究機構に設置されている。

京は、最終構成で8万8128個のCPUを組み合わせた巨大な並列コンピュータだ。4つのCPUを搭載した「システムボード」が24枚と、1つのCPUを備える6枚の「IOシステムボード」などを組み込んだ筐体(ラック)の数は864にもなる(図2)。つまり、(4×24+6)×864=8万8128である。

図2 京のシステムボード

図2 京のシステムボード

その高い演算性能を支えるのは、1つで128GFLOPS(ギガフロップス)の処理能力を持つCPU、並列処理を実現するためにCPUやメモリーなどを結合するLSI(大規模集積回路)であるICC(インターコネクト・コントローラ)といったエレクトロニクス技術だけではない。発熱体を効率的に冷やす冷却システムが大切な役割を果たした。

特に重要だったのが、CPUやICCといった発熱密度が高い部分に適用された水冷技術だ。京の水冷システムでは、800を超えるラックごとに冷却水を供給し、その冷却水をラック内で24枚のシステムボードへと振り分ける。各システムボードには、CPUやICCに接触させて冷却するクーリングプレート8枚を配管で接続した冷却ユニットを取り付けてある。この冷却ユニットが、京の冷却システムの中核部分である。

[注1] 開発当初は、NECと日立製作所によるベクトル型の開発も行われていたが、2009年5月には開発費負担の大きさからNECと日立がプロジェクトから撤退(日立はNECとの契約でプロジェクトに参加していた)。その結果、理化学研究所は富士通と共同で、スカラ型単独での世界最速システムの開発を進めることとなった。さらに、2009年11月には行政刷新会議の事業仕分けで事実上のプロジェクト凍結の憂き目に遭いそうになった。
[注2] LINPACKとは、連立1次方程式の解法プログラムの一種。スパコンの速さの世界的な順位を示すTOP500リストを作成する際に使われる。なおTOP500リストは毎年6月と11月に発表されており、京は2011年6月と11月の2期連続で世界一速いスパコンと認定された。2012年6月には米IBM社の「Sequoia」が16.32PFLOPSで1位になり、京は2位となった。なおIBMのSequoiaも「温水冷却システム」と呼ぶ水冷方式を採用している。

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