軽にも「自動ブレーキ」 5万円切り標準装備へ
13年の注目技術2位
前方を走るクルマが急停止する。慌ててブレーキを踏むが間に合わない。こうした日常によくある危険を回避してくれる「ぶつからないクルマ」が注目を集めている。前走車との位置関係を把握しておき、衝突の危険が高まったと判断したときに自動でブレーキをかけてくれるシステムだ。
高級車を中心に搭載されてきた自動ブレーキだったが、ついに軽自動車でも普及が始まった。きっかけを作ったのはダイハツ工業。同社は2012年12月20日、改良した「ムーヴ」に軽自動車で初めて衝突回避支援システム「スマートアシスト」を装備した。低速域衝突回避支援ブレーキ、誤発進抑制制御、先行車発進お知らせ、ESC(横滑り防止装置)などの機能を備える。
特筆すべきはその価格だ。スマートアシストを標準装備するグレードと非搭載のグレードの価格差は5万円しかない。消費者の反応は良好で、発売から約半年となる2013年6月18日には、スマートアシスト搭載車両の出荷台数が5万台を突破した。同社によれば、新型ムーヴの購入者のうち、「約6割はスマートアシストを搭載する車両を選んでいる」(ダイハツ工業)という。


低速域を重視しレーザーレーダー採用
スマートアシストでは、先行車との距離は赤外線を使ったレーザーレーダーで測る。日本では事故の6割は時速30km以下の走行時に起こる、というデータを元に、高速での性能を重視せずレーザーレーダーを選んだ。
「カメラやミリ波レーダーでは5万円は不可能だった」(ダイハツ工業)という。
低速域衝突回避支援ブレーキ機能は時速約4~30kmで走っているときにレーザーレーダーが前の車両を認識する。衝突の危険性が高い場合に、運転者に警告。その後も運転者がステアリングやブレーキで回避操作せず、衝突の危険性が非常に高まった場合に緊急ブレーキが作動する。相対速度が時速約20km以下の場合は衝突回避、時速約20~約30kmの場合は、被害軽減を支援する。時速30km以上では、システムを停止する。
スズキも追随

ダイハツ工業に負けじと、スズキも続いた。同社は2013年7月16日、「ワゴンR」を部分改良し、レーザーレーダーを使った低速での自動ブレーキを搭載した。自動ブレーキはオプションで装着した場合、税込みで4万2000円から。ダイハツのスマートアシストより低価格に設定してみせた。
ワゴンRの自動ブレーキは、時速5~30kmの領域で作動し、前方約6m以内の障害物を検知し、相対速度が時速15km以下なら自動ブレーキとして、時速30km以下の場合は衝突被害軽減ブレーキとして働く。レーザーレーダーはフロントウインドーの上部に搭載した。ワイパーが雨を拭き取る部分のガラス内側に設置しているため、雨や汚れなどの影響を受けにくいという。
さらにこの機能を利用した誤発進防止機能も搭載する。シフト位置が前進で、停車または時速約10km以下においてレーザーレーダーが前方の障害物を検知した場合、アクセルを強く踏み込んでもエンジン出力を自動制御して急発進・急加速を抑制する。
(日経エレクトロニクス 久米秀尚)
[Tech-On!2013年10月18日付の記事を基に再構成]関連リンク