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セブン&アイ、ネット広告費10倍強に リアル連携強化

テレビCMとネット広告併用で「オムニチャネル」推進

セブン&アイ・ホールディングスは、グループ全体の広告・販促戦略を大幅に見直す。テレビCMやチラシ広告などに頼っていた活動を転換。これまで量的にも少なかったネット広告を単純に増やすだけでなく、テレビCMとネットの動画広告を組み合わせるなど、より効果的なマーケティングを目指す。

現在、グループ全体の広告宣伝費は約1000億円。そのうちネット広告費は0.8%と、1%にも満たなかった(無料の無線ネット接続サービス「セブンスポット」の費用を除く純粋なネット広告費)。一方、大手広告代理店の電通によれば、2012年の日本の広告費(チラシなどのプロモーションメディア広告費も含む)に占めるネット比率は14.7%。セブン&アイグループのネット広告比率は極端に低かった。

3月に始まる2014年度は、ネット広告費を全体の10%、約100億円に引き上げていく考えだ。実現すれば、2013年度の10倍以上になる。テレビCMとネットの動画広告を組み合わせた効果的なマーケティングを主導するのは、グループの電子商取引(EC)サイトを展開しているセブンネットショッピングだ(3月1日に親会社のセブン&アイ・ネットメディアと合併予定)。

ネット広告代理店の役割を集約、グループの販促効果を高める

効果的な広告戦略を展開するために、セブンネットショッピングはネット広告代理店の役割を担う。ネットメディア各社から他の代理店を通さずに広告を購入する。2013年12月、同社の販売本部に、(1)ネット販促部(ネット企業と連携を進める)、(2)メディア販促部(グループ共通の販促やセブンスポットなどを活用したプロモーション、イベントを実施する)、(3)営業部(グループ企業に対して販促企画を提案)――の3つの部署を新設した。それぞれの部署にはグループ企業の社員を起用。グーグルやヤフーといったネット企業によるネット広告・販促に関する研修を実施している。

それでも人材は不十分なため、ネット企業からの出向や中途採用などによって2014年度中に数十人規模の体制を敷き、年間100億円規模のネット広告費を運用できる体制を築く。

セブンネットショッピングがネット広告代理店の役割を担うことで、広告費を有効活用して効果的な販促戦略をグループ全体に拡大する狙いがあるという。そのために広告代理店事業では利益は追求しない。他の代理店に任せた場合よりも安く広告出稿などできればいいという考えだ。効果的な販促に関するノウハウを自社にためていく狙いもある。

そもそも今回、マス広告とネット動画広告を組み合わせて販促効果の向上を目指すのは、セブン&アイグループが小売業の第2のステージと位置づける「オムニチャネル」に大きく舵(かじ)を切る動きと無関係ではない。

オムニチャネルとは、リアルな店舗やECサイト、電子メール、ソーシャルメディアなどのあらゆるチャネル(顧客接点)を活用して、一人の顧客に対しては異なるチャネルでも同様に接客し、商品を販売していくこと。広告・販促活動でリアルとネットの垣根をなくす手法だ。

発端は、2013年8月30日のセブン&アイグループの戦略会議における鈴木敏文会長の「オムニチャネル宣言」だった。その直後に、セブンネットショッピングの鈴木康弘社長は、ネット販促の予算を大幅に増やしていくべく検討に入り、リアルおよびネットの広告をうまく駆使していくことになった。

検証実験で高い効果を確認

2013年夏には効果を検証する実験を実施している。セブン&アイ(セブンネットショッピング)とグーグル、そして市場調査会社のインテージの3社で、夏ギフトのテレビCMと、グーグル提携サイトへ広くネット広告を配信できる「Googleディスプレイネットワーク(GDN)」および「YouTube」での動画配信を組み合わせた広告展開を実施した。その結果、テレビを見ずGDNで情報を入手した人は9.3%、YouTubeのみで入手した人は0.6%だった。つまり約10%の人は、テレビを見ずにネットだけで情報を入手していることが分かった。

ネット広告とテレビCMの接触者と非接触者の購入比率。2013年夏の効果検証実験で、広告を見ていない人(非接触者)の購入率を100とした場合に、広告を見た人(接触者)の購入率がどの程度だったのかをグラフにした

テレビを見た人の購入率は、見ない人の1.8倍。テレビCMとネット広告の両方を見た人の購入率は、見ない人の5倍になった。さらにGDNとYouTubeをうまく使うと、購入率はそれらを見ない人の10倍に達したという。鈴木社長は、テレビCMとネット動画広告を組み合わせることで、効果的な販促を実現できることを改めて実感したというわけだ。

鈴木社長は、テレビCMとネット広告を組み合わせた新しい販促に関して、グループのコンセンサスを取るために注力してきた。メディア戦略会議にて、セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、そごう・西武、セブン&アイ・フードシステムズのマーケティング担当の役員クラスに向けてこの新しい手法について丹念に説明し、2013年12月12日には、この4社を含むグループ約40社、50人以上のマーケティング(リアルおよびネット広告)責任者に対して、ネット広告費を全体の10%まで引き上げて、テレビCMとネット広告を組み合わせた効果的なマーケティングの実施について提案した。

店舗が大きな力になる

まずはセブンネットショッピングが、「夏ギフト」「冬ギフト」や「セブンプレミアム」などグループの共同販促で成功事例を作り、事業会社の個別マーケティングに生かしていく。ネット広告は効果を検証しやすいので、一つひとつの販促について検証効果をはっきりと示す。「効果が出なければ、各社も納得しない」と、セブンネットショッピングの原田良治取締役は言う。

テレビCMと組み合わせるネット広告として有望視しているのが、ネット動画キャンペーンだ。テレビCMを制作する際に、ネットでしか視聴できないサブの映像を作っておき、YouTubeやヤフーの動画サイト、セブンスポットなどで流すことを検討している。

グループ各社をその気にさせるには、こうした販促によっていかに店舗に誘導するかにある。例えば、ネットで購入した後にセブン-イレブンの店舗で受け取れるようにして消費者を誘導する。さらに近い将来、グループの店舗でも受け取れるようにする。

「オムニチャネル時代には、全国にあるグループの店舗が大きな力になる。最近グループに加わったニッセンなどは我々のリアルな店舗に魅力を感じていただいている」(原田取締役)と言う。

ネットへシフトして、マーケティング手法の改革に挑むセブン&アイグループ。その成否はオムニチャネル戦略全体の推進にも影響する。いかにして消費者にネットから店舗へと足を運ばせるか、その知恵が問われる。

(日経ビッグデータ 多田和市)

[日経デジタルマーケティング 2014年1月6日の記事を基に再構成]

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