2019年8月25日(日)

日米外交60年の瞬間 第3部

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砲火のなかで停戦交渉 サンフランシスコへ(20)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

2011/12/31 7:00
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第3部20回が配信されるきょうは、2011年最後の日である。ことし1月から始めたこの物語も50回となる。

60年たった2011年、日米関係で特筆すべきは東日本大震災の被災地での米軍の「トモダチ作戦」だったが、それについて触れるのは、はるか先になる。

ことし1月、この連載を「いまからちょうど60年前の1951年は、第3次世界大戦の不安とともに明けた。朝鮮半島で韓国の首都ソウルをめぐる軍事的攻防が続いていた」と筆を起こした。2011年12月の金正日氏の死で朝鮮半島をめぐる混迷は深まる。霧は晴れない。

話を1951年7月に戻す。朝鮮半島は、ようやく停戦への動きに至った。

■勝利者としてふるまう北朝鮮

9月に予定される講和条約の署名式のニュースで日本がわいていたほぼ同じころ、朝鮮半島では1951年7月8日に開城(ケソン)で開かれる朝鮮停戦予備会談をめぐって動きが続いていた。

戦闘さなかに停戦のための会議を開く。双方はジープ型の軍事車両で交渉場所に向かう。それ自体が緊張をはらむ場面である。

「デューイ、トルーマンをやぶる」と誤報したシカゴトリビューンを手にして笑うトルーマン大統領=AP

「デューイ、トルーマンをやぶる」と誤報したシカゴトリビューンを手にして笑うトルーマン大統領=AP

7月7日夜、東京にある米極東軍総司令部のムアーマン大佐は、午後8時55分、予備会談に出席する共産軍代表を乗せた10台のジープが通過する公路には空爆を加えないとの規定が7日夜半に失効する、と述べた。

これを読んだだけでは何を意味するかわからないだろう。しかし取材記者たちは容易に理解していた。

共産軍代表が既に開城に到着しているか、短時間のうちに到着する、との意味だ。それをこうした表現で述べたのだった。

交渉開始は戦闘休止ではなかった。戦闘休止を目的に交渉するのであり、ましてや始まろうとしているのは予備会談である。相手を信用できないから、戦闘をやめるわけにはいかなかった。

交渉は形を変えた戦いであり、北朝鮮がいまもそうするように、様々な駆け引きがあった。情報戦もあった。

米ソ冷戦下である。情報はワシントンとモスクワから発信された。

7日モスクワ発APによれば、ソ連は停戦交渉そのものよりも、戦闘が終わった後の領土問題に関心があった。全朝鮮での総選挙実施、中央政府の樹立を考えていた。モスクワの外国観測筋によれば、北朝鮮が(1)韓国軍人の若干名を戦犯として裁判する(2)戦争で破壊された財産の損害賠償――などを求める方針とされた。

一方、ワシントンからは米政府当局者が「北朝鮮が戦争を始めたのであり、完全な敗北を喫したのではないにせよ、交渉にあたって勝利者として振る舞う立場には決してない」と警告した。

■大統領候補デューイ氏も東京に

対日講和条約、朝鮮での停戦交渉をめぐって東京が国際ニュースの発信地でもあったこのころ、ひとりの米国要人が来日した。ニューヨーク州知事のトーマス・デューイである。妙なことから、世界の新聞史に残る人物である。

1951年
4月11日
トルーマン大統領がマッカーサー元帥を連合国最高司令官、国連軍最高司令官、米極東軍・極東陸軍総司令官から解職。後任にリッジウェー中将
4月16日ダレス特使再来日
6月20日日本政府、第1次追放解除を発表
8月6日日本政府、第2次解除を発表。鳩山一郎ら追放解除される
9月1日米、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋安保条約に調印
9月4日サンフランシスコ講和会議始まる
9月8日吉田首相、対日講和条約、日米安全保障条約に調印
12月24日吉田首相、ダレスに台湾の国民政府との講和を確約(「吉田書簡」)

44年の大統領選挙でルーズベルトに敗れた共和党の大統領候補デューイは、48年、トルーマンに挑戦する。民主党は分裂状態にあり、デューイ優勢とされた。シカゴトリビューンは「デューイ、トルーマンをやぶる」と誤報し、トルーマンがそれを手に勝利宣言する写真が歴史に残っている。

51年当時もデューイは共和党国際派・穏健派からの52年選挙の大統領候補とされていた。極東情勢の視察のために日本と韓国にやってきたのである。小型飛行機で朝鮮戦争の前線を視察した。

実際には、52年の大統領選挙に共和党はデューイではなく、第2次世界大戦の欧州戦線での英雄とされたドワイト・アイゼンハワー将軍を指名した。アイゼンハワーは民主党候補のスティーブンソン候補を破り、24年ぶりにホワイトハウスを奪還する。日本を訪れた当時のデューイは自らがその使命を負っていると考えていた。

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