峰越え谷駆け「鉄人」に 奈良の秘境で過酷レース

(3/3ページ)
2013/11/29 7:00
保存
共有
印刷
その他

コースの途中は紅葉が見頃の場所も。しかし脇目もふらず進む(奈良県葛城市)

コースの途中は紅葉が見頃の場所も。しかし脇目もふらず進む(奈良県葛城市)

レース後半に集中する下り坂はスキーやスノーボードでゲレンデを滑る感覚に近い。重力に従って下へ落ちていく自分に、細かい足さばきや体重移動を加えて必要最低限のブレーキをかける。重心を後ろに預けてこわごわ走るより、前のめりでスピードに乗ってトントン駆ける時の方が、着地の衝撃を受け流すため膝へのダメージも小さい。

コーラで息を吹き返すと、ラスト1時間の標高差500メートルの下りで、今までにない「ランナーズハイ」を体感した。中盤失速したのが嘘のように、自分の中のイメージでは軽やかにステップを踏み、心の中で「うひゃー」と叫びながら気持ちよく走り抜けた。これまで出たレースでは全て、脚の痛みをこらえながらフラフラになってゴールしたことを考えれば大きな成長だ。

目指すは富士山1周、160キロ

山道を抜けると舗装路に戻り、最後は全力ダッシュでゴールイン。時間は6時間5分、112位。トレランでは「4時間切り」とか「ベスト更新」とかマラソンのようなタイムの目安はないが、上出来だろう。むしろ走っている時の充実感が大きかった。ゴール直後に「疲れた」より「楽しかった」と思えたのは初めてだ。終盤、森の中を駆け抜けた時の感覚は、やみつきになりそうだ。トップ選手は3時間台でゴールしたらしく、表彰式はとっくに終わっていたが、気にしない。

レース後は友人と会うために大阪へ移動した。串カツをつまみながら「36キロは長すぎず短すぎず、ちょうどいい距離だったよ」と話すと、即座に「いやいやいや」と強がりを見抜かれた。

平地を走ることに飽き足らず、より刺激を求めるランナーを吸収していることが最近の人気の理由だろう。「わざわざ登り下りの山道を走るなんて。変わった人たちがいるもんだ」――陸上競技未経験の記者は、以前そう考えていた。ところが軽い気持ちで一度大会に出場したのをきっかけに、今は富士山の周りを一周する100マイル(約160キロ)の大会にも挑戦したいと考えている。1年前の私が今の自分を見たらどんな顔をするだろうか。

とかくトレランは「超人」や「鉄人」が挑む異次元の世界と思われがちだ。だが実態は違う。「凡人」でも楽しめる。いやフツーの人が無理なく準備を重ねて鉄人になれるスポーツともいえる。山を駆け回るのは気持ちいい。ビギナーである記者が各地の大会に参加し、苦しくも楽しい、トレランの魅力を報告していきたい。

(伴正春)

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
保存
共有
印刷
その他

コラム「ランナー集まれ」

コラム「美走・快走・楽走」

コラム「スポーツギア最前線」

関連キーワード

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]