峰越え谷駆け「鉄人」に 奈良の秘境で過酷レース

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2013/11/29 7:00
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スタートから30分、標高474メートルの二上山雌岳の頂上へ着いた。広い山頂、空は真っ青で見晴らしも良い。標高差約150メートルの下り道を気持ちよく駆け下り、大和葛城山(標高959メートル)へ向かい、再び登り道を歩き始める。

登りは歩き、下りで走るのが体力消耗を避けるコツ(奈良県葛城市)

登りは歩き、下りで走るのが体力消耗を避けるコツ(奈良県葛城市)

トレランのコースは細い山道が多いため、あちこちで渋滞が起こる。いわば車道で対向車とすれ違う時、速度を落とすくらいの路地を一方通行で走るようなもの。簡単には前の人を抜くことはできない。車と同様、トレランでも無理な追い越しは禁物だ。余計な体力を使うだけでなく、危険も伴う。

特にハイキングや登山を楽しむ人が多いコースでは注意が必要だ。トレラン人口が増える一方で、山を走る行為に批判的な声もまだまだ少なくない。記者は登山も趣味としているだけにその気持ちはよく分かる。この日は「頑張って」と声をかけてくれる人が多かったが、次々やってくるランナーに嫌な思いをした人もいただろう。追い抜く時は必ずスピードを落とし「ありがとうございます」と挨拶する。これはトレイルランナーのマナーと思う。

果てなく続く下り階段、膝ガクガク

スタートから2時間10分、紅葉を楽しむハイキング客を横目に大和葛城山の山頂付近を通過した。少し脚が重たい。登りで飛ばしすぎたかもしれない。「さあ下り」と再び走り始めたが、段差の大きな階段が果てなく続く。歩幅を大きく取ってドンと着地するたびに衝撃が脚に伝わり、足首、膝、太ももがダメージを受ける。脚に蓄積される疲労と不安を感じながら「ドシドシ」と音を立てて走り、ようやく15キロ地点の水越峠(同513メートル)へ着いた。既に膝はガクガクだ。

そこから金剛山(同1125メートル)へ6キロにわたり延々と続く登山道がつらかった。初めこそゆるやかな坂なのだが、すぐ急な登り階段が目の前に現れた。登れども登れども新たな階段が出てくる。踏ん張って階段を登っているうちに太もも裏の筋肉がつりそうになった。たまに平らな道になっても走れない。スピードが落ち、後続ランナーに抜かれ始めた。

「まずいな」と思っているうちに突如空腹感が襲ってきた。脳に血が巡らずボーッとしている感覚で、立ちくらみまではいかないが少しふらっとする。朝食は十分とったはずなのだが。アメやチョコを口に含んではみるが回復しない。脚の痛みと空腹感で、どんどんペースは落ちていく。「まだ半分しか来ていないのに」。スタートから4時間弱、とうとう頂上手前、森の中のベンチに座り込んだ。

ピンチに「秘密兵器」取り出す

ここで私を救ったのが秘密兵器「コーラ」だ。ベンチに座り携帯食料を口にした後、リュックに忍ばせていたペットボトル入りコーラを体内に流し込んだ。走っているうちに炭酸が抜け、ぬるくて甘ったるくなっているのが、かえってうまい。糖分が体中に染み渡り、疲れが一気に抜けていく。荷物になるのを嫌い水の量さえ切り詰めるランナーが多い中、いつもコーラを背負って走る友人のマネをしてみたが、ここまで効くとは。「生き返った」。下りの多い後半、追い込みが始まった。

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