マツダは、電気自動車(EV)の「デミオEV」にロータリエンジンを使ったレンジエクステンダー(EVの航続距離を延長するために搭載する発電機用の小型エンジン)を搭載した実験車両を試作し、報道関係者に公開した(図1)。同社はデミオEVを約100台リース販売しているが、航続距離についての満足度をアンケート調査したところ、「満足」という回答は6%にとどまり、「やや不満」と「不満」を合わせて70%と、航続距離がEVの大きな課題になっていることが分かった。
今回試作したロータリエンジン採用のレンジエクステンダーは、排気量0.33L、出力22kWのシングルロータのロータリエンジンと、連続定格出力20kWの発電機を組み合わせたもの。ロータリエンジン、発電機、容量約9Lの燃料タンクをモジュール化し、デミオEVの荷室下に配置した(図2)。デミオEVの航続距離はJC08モードで200kmだが、レンジエクステンダーにより、約180km航続距離を延長できる。
試作したレンジエクステンダーは、ロータリエンジンが水平方向に回転するように配置したのが特徴。垂直に取り出した出力軸の回転を、ベルトにより2倍に増速して発電機に伝える。ロータリエンジンをレンジエクステンダーに採用したのは、エンジンを水平方向に回転するように配置することで、レシプロエンジンよりも大幅に薄型化でき、搭載性が大幅に向上することと、騒音や振動が低い点を評価したため。
今回試作したレンジエクステンダーモジュールは、高さが約300mmだが、レシプロエンジンで作れば、1.5倍程度になるという。また騒音も、ガソリンエンジンより5dB(A)低くなる。
今回のレンジエクステンダーを実用化するかどうかは未定。コストについてもまだ評価していないが、レシプロエンジンに比べて部品点数が大幅に少ないので、同程度の量産規模なら安くできるとしている。ロータリエンジンはレシプロエンジンより燃費は劣るが、EVに組み合わせるレンジエクステンダは稼働頻度が低いと考えられるので、薄型で静かなメリットが、燃費面でのデメリットを上回ると考えた。
(日経Automotive Technology 鶴原吉郎)
[Tech-On! 2013年12月19日掲載]