きょうだい構成で分かる子の性格、親の対応術
子育て学協会 山本直美
「ぐずぐずして自分でやろうとしない」「話をちゃんと聞かない」など、「第2子以降の子どもに比べると、長男、長女はとてもマイペースだ」というのがパパ、ママ達の悩みです。皆さん、第2子のお子さんについての面談をしていても、気が付けば第1子のお子さんの話になっている、ということがよくあります。これはいったいなぜなのでしょうか?
1人目に手がかかるのは、丁寧に育てた結果です

これは、パパとママ、家族のみんなが手をかけて育てたからです。待望の第1子が生まれ、親自身も慣れない中、一心に、丁寧に育てた結果です。家族に子どもがひとりしかいない中で十二分に手をかけたので、手のかかる子になっているとも言えますね。これは悪いことではなく、第1子はお世話してくれる人がたくさんいたわけですから、ある程度仕方がない部分もあるということ。
親自身も、上のお子さんは十二分に手をかけたほうが結果を出すのではないかと、親が勝手に思っている節もあります。そうすることで、子どもにも手をかけてもらいたいという無意識の欲求が習慣化されているだけなのです。
その代わり、第2子以降のお子さんには、生まれたときから上の兄弟がいるので、十二分に、自分にだけ手をかけてもらうことは、生まれたときから難しいわけです。ですから、「あまり手をかけていないのに期待に応えてくれる」というふうに、ママ達には映ります。ねんねがひとりでできる、支度が自分でできる、靴も履ける…といった具合に。
でもこれは、お兄ちゃん、お姉ちゃんを見ているから、覚えて自分でやれるようになったのですよね。「自分でやったら褒められるから、どんどん自分でやるようになる」と、自発的に行動するようになっていった結果です。
「2人目は機嫌が良い」の裏に、弟・妹の切ない思い
また、往々にして、第2子のお子さんは機嫌が良いものです。「弟(妹)は、いつも機嫌が良いんです」と保護者はうれしそうに話してくださいますが、第2子にとっては、ニコニコしないと見てもらえないから、アピールすることを覚えているだけ、とも言えるんです。何だか、第2子のお子さんの必死にアピールする姿がいとおしく思えてきますね。
1人目は、初めての子育ての親の戸惑いに付き合ってくれた同士
第1子が、ぐずぐずしている、マイペースだというのは、第1子のお子さんの性格ではない場合が多いことがお分かり頂けたと思います。上のお子さんには、「自分でやるのよ」と教えながら、一つ一つ、伝えていきましょう。
第1子のお子さんは、皆さんが、新米のパパ、ママだったころ、初めての子育てに戸惑っている二人の不安に付き合ってくれた"同士"です。「ありがとう」と思ってあげてほしいと、いつも面談でもお伝えしています。手をかけた分、手をかけてあげた子の良さがあります。第1子は優しい子が多く、親のことを気にかけているのは、上のお子さんであることが多いものです。
マイペースな兄、チームプレーが得意な弟、お姫様願望の姉、自由奔放な妹…
また、第1子か、第2子か、ということで性格に影響を与えている部分があるように、"きょうだい"構成は、養われる性格に少なからず影響を与えています。必ずしもそうとは言えませんが、下のような特徴がよく見られます。

3人目は、パパ・ママだけでなく、上2人の人格も影響する
年の差、兄弟の人数も影響するため、一概には言えませんが、6000人の子ども達を見てきた中で感じた明らかなことがあります。
それは、3人兄弟の場合は、上2人まではパパ、ママのどちらかに似ている部分があるものの、3人目になると、兄弟の人格も入ってくるということ。持って生まれた性格と共に、様々なことが"その子らしさ"に影響を与えています。
このように、様々な要因が子どもに影響しているように、親(特にママ)にも与えられた使命、影響があるように思います。
男の子のママは胆力アップ、女の子のママは切り替え上手に
根本的に、男の子のママは、本当の意味での「胆力」が鍛えられます。男の子は一回言っても聞きませんから、考え方を柔軟にしていくことが求められます。特に、男の子×男の子の兄弟のママは、言っても聞かない子どもが2人(パパも入れたら3人?)家庭にいるわけですから、柔軟でないと乗り切れないことばかりでしょう。「それができるはず」と選ばれたママだと思ってくださいね。

逆に、女の子は手がかからない分、ママは「切り替え上手」になることが求められます。子どもに対して、まともにぶつからないこと、いらいらを静める鍛錬が必要です。口が達者になったとき、子どもと同じ視点に立たないようにするのは、案外難しいものです。女の子はママの洋服にうるさくなったり、「ママ、さっきと言ってることが違う!」と言ったりしますから、ママ自身が人に優しく、どんなときでも笑顔でいられるようになれたらすてきですね。
"きょうだい"というのは本当に面白いもので、「3人集まると社会ができる」と言われますが、3人以上になると、家庭の中で子ども達の力のほうが強くなります。チームのようになって遊んでいる姿は、本当にかわいいものですよね。
子どもは、環境やしつけだけでなく、きょうだい構成、性差も関係しながら、"その子らしさ"が作られていきます。「この子はこういう子だ」と最初から決め付けずに、ぜひ、じっくり見てあげてくださいね。

チャイルド・ファミリーコンサルタント。アイ・エス・シー代表。NPO法人「子育て学協会」会長。1967年生まれ。日本女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。幼稚園教諭を経て、大手託児施設の立ち上げに参画。95年にアイ・エス・シーを設立、自らの教育理念実践の場として保護者と子どものための教室『リトルパルズ』を開設。08年にはこれまで研究・実践してきた理論・プログラム普及のため、NPO法人「子育て学協会」を設立。キッザニアのプログラム監修やリクルート社事業所内保育施設運営の受託、子育て支援の『ゆるママ講座』『できパパ講座』プログラム提供などの実績がある。著書に『デキるパパは子どもを伸ばす』(東京書籍)、『子どものココロとアタマを育む 毎日7分、絵本レッスン』(日東書院)など。
[日経DUAL2014年5月13日掲載記事を基に再構成]
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