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「ソーシャルリーディング」が開く読書の新世界

SNS連携の次を模索する電子書籍

 電子書籍端末の独特な機能である「ソーシャルリーディング」。読書体験の共有といった意味合いを持つ同機能の代表例は、本の文章などに付けたハイライトを任意の読者と共有する機能と、はやりのFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)に本の情報や感想などを簡単に投稿できる機能だ。本によって読者をつなぐソーシャルリーディング機能は、新たな読書環境とマーケティングを提供できるだろうか。(ジャーナリスト 武井一巳)

電子書籍端末の売りの一つに、「ソーシャルリーディング機能」がある。米アマゾン・ドット・コムが2010年に発売した第3世代目のKindle(キンドル)である「Kindle Keyboard(キンドルキーボード)」という機種に搭載したことで大いに注目を集め、その後の電子書籍端末には、このソーシャルリーディング機能が標準で搭載されるようになったといってもいい。なお、今秋に発売された電子書籍端末「Kindle Paperwhite(キンドルペーパーホワイト)」は、Kindleシリーズの第5世代製品に当たる。

人と人が本でつながる

Kindle Keyboardに搭載されていたのは、「ポピュラーハイライト」という機能だった。ユーザーがKindleで読んでいる本の中の一節をマークしてハイライトを付けると、それが同じ本を読んでいる他のユーザーにも表示されるという機能である。

例えば、Kindleで本を読んでいるとき、ポピュラーハイライト機能を有効にしておけば、他のユーザーがどの箇所にハイライトを付けたかを表示させることができる。ここには読者の感想などを書き込んでおくこともできるから、誰がどの箇所でどんな感想を持ったのかといったことも分かったりする。

さらにKindleには、TwitterやFacebookといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との連携機能もあり、本を読んでいる状態でシェア(共有)機能を起動すると、自動的にTwitterやFacebookに読んでいる本のタイトルやアマゾンへのリンク、記入した感想などを投稿してくれる。

これらがKindleのソーシャルリーディング機能の基本だが、他の電子書籍端末のソーシャル機能も同じようなものだ。

読者にも出版社にもメリットが出てきそう

ソーシャルリーディングというのは、「読書体験の共有」とでも訳される機能であり、サービスでもある。

ここ数年、TwitterやFacebookに代表されるSNSがはやっている。いわゆる口コミメディアだが、電子書籍端末を利用しているとき、3G(第3世代携帯電話)回線やWi-Fi(無線LAN)に接続されていれば、読んでいる本の情報やその感想、気になった一節といったものを、これらのSNSにも簡単に投稿してくれる仕組みだ。

もちろん、事前に自分が参加しているSNSのアカウントやパスワードを設定しておく必要はある。

こうしてSNSに読んでいる本の情報が投稿されると、フォローしている別のユーザーなどにこの投稿が表示され、その本の話題で盛り上がったり、あるいは興味があればリンクをクリックしてアマゾンなどに飛び、その本を購入できたりする。

いわば友人によるリコメンド(推奨)だといっていいだろう。友人が読んでいる本だから、自分でもちょっと読んでみようか、という流れで販売にも結び付く。従来のマーケティングでは思うようにモノが売れなくなったという理由でもあるのだろう、マスメディアなどに掲載される書評などはあまり信用できないが、友人が薦める本なら信用できるし、手にとってみようと考えるのも自然だ。

こうしてSNSと電子書籍端末とが結び付くことで、読者にも出版社にも、双方にメリットが出てくると予想されるのがソーシャルリーディングである。

SNS以外のWebサービスとも連携へ

ソーシャルリーディングというサービスの中には、自分が読んだ本を記録したり、その読書履歴を共有したりするWebサービスもある。現在発売されている電子書籍端末は、そのほとんどがTwitterやFacebookとの連携で、他のサービスとは連携されていないが、やがてこれらの読書履歴サービスなどとも連携する可能性もある。

例えばソニーの電子書籍端末「Reader(リーダー)」には、クラウド上のメモサービスともいえるEvernote(エバーノート)と連携する機能がある。

また、楽天傘下のコボ(カナダ)が提供する電子書籍端末「kobo(コボ)」は、Kindleよりももっと積極的にソーシャルリーディング機能に取り組んでいる。例えば、深夜に本を読んだり、読了したりすると、その場面に合ったバッジがもらえるが、このバッジ情報をFacebookに投稿できたり、あるいは読書データという読書に関するさまざまな情報を表示させたりもできる。

もちろんそのままでは、ソーシャルリーディングとして他のユーザーとつながれるわけではないが、電子書籍端末が既存のソーシャルメディアにどう食い込んでいくか、新たな試みの模索例といってもいいだろう。

本好きの人から読書の新世界が開ける

一方で、自分が読んでいる本を、他のユーザー、特に友人や知人には知られたくない、というケースもあるだろう。自分の本棚を見られるのは、下着を見られるようで恥ずかしいという人は少なくない。そんな読者にとっては、電子書籍端末で読んでいる本が、すべてソーシャルメディアで他人と共有されてしまうのは何とも恥ずかしく、怖い。

だが、そんなときは設定画面で、FacebookやTwitterのアカウント情報を削除しておけばいいだけ。ソーシャルリーディング機能は利用できなくなるが、これなら"大人の本"を読むときも安心だ。

この新しくて、使い方によっては便利なソーシャルリーディングは、日常的に本をあまり読まないというユーザーにもそれなりに役立つ機能ではある。だが、そういうユーザーの周りでは、あまり本の話題は出ないものだ。

逆に本好きで、新しい本や世間でまだ話題になっていない本をいち早く発掘してきて読んでいるような読者や、そんな友人を持っているユーザーには、ソーシャルリーディングは実にうれしい機能だ。周りに信用できる読み手が1人でもいれば、そんな人をフォローするだけでも読書の新しい世界が開けてくるかもしれない。

ソーシャルリーディングは、「本を通じてつながる」サービスであり、そのための機能。この「つながり」を求めて、ビジネスの現場では今後、電子書籍端末と連携する新たなサービスが立ち上がってくることも予想される。

[ムック『これ1冊で完全理解 電子書籍』の記事を基に再構成]

[参考]日経BPパソコンベストムック『これ1冊で完全理解 電子書籍』(2012年12月7日発売)では、快適な電子書籍ライフを送りたい人のために、「Kindle(キンドル)」や「iPad mini(アイパッドミニ)」など電子書籍の利用に向く端末や、主要な国内の電子書籍ストアを紹介。本当に役に立つ端末やサービスはどれか、実際の使い勝手はどうかといった、誰もが知りたい電子書籍の実像を分かりやすく解説。同ムックの電子版も、BPストア(http://netstore.nikkeibp.co.jp)で販売中。

これ1冊で完全理解 電子書籍 (日経BPパソコンベストムック)

監修:西田宗千佳
出版:日経BP社
価格:980円(税込み)

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