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フォロワー3200万人 中国ネット界のスターと検閲

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(2013年3月11日 Forbes.com)

李開復(カイフ・リー)。インターネット業界の巨人、米グーグルが検閲をめぐる紛争を受けて中国から撤退する前にグーグル・チャイナの責任者を退いた人物は、現在、「中国版ツイッター」ともいわれるミニブログサービス、「微博(ウェイボー)」のトップに就いている。しかし、リーは先月、微博に持つ自身のアカウント使用を一時的に差し止められた。そんなカイフ・リーが、中国のソーシャルメディアの現状について語ってくれた。

3日間の書き込み禁止

「中国でのソーシャルメディアは、他の国に比べてもずっと大きい力を持っている。厳しい規制の対象にはなっているが、ソーシャルメディアを使うことで人々のコミュニケーションのあり方を大きく変えつつあって、中国をより良い方向へ変える可能性を秘めていることを我々は自覚すべきだ」とリーはみている。

中国のインターネット業界では傑出した有名人で、ソーシャルメディアの熱心なユーザーでもあるリーは、「新浪・微博」(シンランウェイボー、中国版ツイッター)から2012年に最も影響力のあるマイクロブロガーと称された。フォロワー数は実に3200万人に上る。しかし、2月のある書き込みで、リーは苦境に陥った。リーはJike.com(即刻)という検索エンジンに対し、税金が不正に投入されていると示唆したのだ。Jike.comは共産党の機関紙、人民日報が運営する検索エンジンで、トップには卓球の五輪金メダリストとして知られるトウ 亞萍(Deng Yaping)が就いているが、ネット企業の経営に携わった経験はほとんどない。リーの問題の投稿はすぐに削除され、3日間にわたり、微博への書き込みを禁じられた。これは、当局からの懲罰と受け止められている。この一件で、インターネット利用者の間では瞬く間に不満の声が渦巻いた。何千人ものリーのフォロワーが彼への支持を表明し、投稿禁止の撤回を求めた。こうしたフォロワーの中には、微博でも人気を集めるSOHO ChinaのCEO(最高経営責任者)でフォーブスの世界で最も力のある女性100人に選ばれた、張欣(Zhang Xin)もいた。

カイフ・リーが警告を受けたのは今回が初めてではないかもしれない。リーはこれまでも論争と無縁ではなく、幾多もの非常に敏感な問題を声高に取りあげ、物議を醸してきた。中国のインターネット規制や、中国の新聞「南方週末」が政府による編集介入に抗議してストを決行したこと、台湾の総統選などにも言及した。

リーはソーシャルメディアのなかでの表現の自由を支持する著名人の一人だが、ネットをめぐる検閲問題には用心深い態度で答える。

「私は活動家ではないし、標榜するアジェンダがあるわけでもない。私は穏健だが率直なマイクロブロガーと見なされていて、ビジネスや社会、テクノロジーに関する私の考えや助言をフォロワーに提供している」とリーは説明する。「間合いの取り方はわかっているつもりだ」と話す。

インターネット界の指導者は、これ以上、Jike.comやトウについて語ろうとはしなかったが、中国のソーシャルメディアについて自身の信念を改めて、強調した。リーは一部で抑圧を受けているものの、中国でソーシャルメディア環境の強固さを力説した。さらに、微博がいかに中国の人々のコミュニケーションを変革したかを説明した。

「微博は画像や動画、会話や長いツイートを統合しているという点で、ツイッターとはかなり異なるメディアだ。利用者は情報を探したり共有したり、あるいは意見を述べたり聞いたりするためにやってくる。規制は厳しいが、ソーシャルメディアは中国では他のどのメディアよりもずっと開放されていることに気づくべきだ」とリーは語る。

この「革命」の最も大きな成果は、現在では人々が、かつては共産党によって管理されていた情報にアクセスできるようになったことだ。中国政府は国内のメディア規制に躍起になっているが、微博の成長で、政府の情報規制の役割がきわめて限られる新しいチャンネルが勃興した。

インターネットによって、人々は公開討論の場で意見を表明する機会も得た。

中国の伝統的なメディアは政府によって規制されており、たいていの論点について、見解はただ一つしか存在しない。しかし、多くの微博を通じ、伝統的なメディアでは表現できなかった異なる見解に接することができるようになった。ここに論争が生まれ、ネット市民として批判精神を持ってものごとを考える術を鍛えることができる。「マイクロブログによって、中国人の集団の英知を高めることができる。優れた発想は転送され、リツイートされ、いずれは国の指導部にも届くだろう」

カイフ・リーはネット上の人気者として知られているだけではない。実際、中国のテクノロジー分野に明るい人なら、リーほど現代中国のインターネット界に大きな影響を与えた人物を他に見つけるのは難しいと思うはずだ。

中国のIT技術者のヒーローでもあるリーは、米国テクノロジーの巨人であるグーグル、マイクロソフト、アップルでハイレベルの役職を歴任し、現在は起業家支援とベンチャーキャピタル、それに携帯端末向けのネットおよび電子商取引に特化したソフトウエア事業の複合体であるイノベーション・ワークのCEOである。

リーは1998年、マイクロソフトが北京に研究開発拠点を設立する際のキーマンとしてかかわり、2005年にマイクロソフトを離れ、グーグル・チャイナの初代社長になった。リーはマイクロソフトに対し、1年間は競合他社に移籍をしないなどとした契約をしていたため、05年の移籍はグーグルとマイクロソフトによる法廷闘争に発展した。グーグル・チャイナを4年間率いたあと、リーはグーグルを去ったが、これはグーグルが中国からの完全撤退を決める4カ月前のことだった。

フォロワーの多くは20代男性、学生

リーを微博でフォローする3200万人のファンは主に20代で男性がほとんど。中国都市部のテクノロジー分野に通じた学生が多い。このフォロワー数は他のビジネスリーダーよりずっと多く、いい勝負になる中国の人気芸能人も5、6人しかいない。

リーが微博で途切れることなく投稿するのは、世界のハイテク業界で起きている事柄やその分析で、最新の製品情報から中国での市場動向、同氏と業界関係者の交流など、多岐にわたる。しかし、彼の微博が際立っているのは、可能な限りのトピックについて、ユーモアと機知に富んだ表現で、意見を忌憚(きたん)なく交換している点だ。

リーは最近の投稿で、「多くの人が私をフォローするのは、内容(子育て、リーダー哲学、個人的な生い立ち、最近起こったこと、ハイテク、投資、海外ニュースなど)、私のスタイル(ウソ偽りなく書き、短い文章にいい話をできるだけ書き込むよう努める)、そして私の勤勉さ(ツイートは毎日10~20回、ここ数日を除いてね!)が支持されているからだと思う」。

「中国のソーシャルメディアにとって、私の貢献はほんの一部にすぎない」とリーは言う。

微博が中国メディアの変革をなし遂げるための挑戦とはなんだろうか?

リーによると、微博の更新スピードは速く、事実確認や編集側の監視の余地はほとんどないという。議論はにぎやかに、オープンに行われるが、利用者は事実と虚偽を見分けるのが難しいという面もある。

検閲することによって、噂が広まる速度はかえって増しかねない。検閲されているというだけで、噂はよりまことしやかになるからだ。可能なかぎりの真実が知りたいと思っている中国のネットユーザーは、噂自体をあれこれ推測するだけでなく、その噂に対して政府がどのような反応をみせるかも、チェックしたほうがいい。噂のなかから真実を見いだそうとする中国のネット市民にとって、あらゆる言説とそれに対する中国政府の反応の一つ一つが新しいナゾとなり、推論ゲームは際限なく続く。

微博は時として、政治問題、あるいは知識人の左派、右派が激しく意見をぶつけ合う場になる。そして、リベラル派の見解が論争の中で優勢になることが多い。

「責任感あるネット市民育つ」

リーによると、このような驚くべき状況は中国のネット市民のネット習熟度や教育レベルによるところが大きいという。しかし、長期的にみると、これは好ましい状況とはいえない。「我々は、もっと左派と右派のバランスのとれた、実社会のダイナミクスや力関係に即したオンラインの議論をしなければならない」とリーは指摘する。「バランスを欠いた議論は両者の敵対心をうみ、抑圧的な政策につながる」

「我々に必要なのは、多面的な視点であり、もっと理性的な対話であり、もっと開放された議論の場だ」とリーは言う。彼はソーシャルメディアの今後については楽観的だ。「時に後退したり、障害があったりしても、中国では相当な数の、社会的に責任感があるネット市民が育つと確信している。そして彼らが、中国の未来を変えるのだ」

By Laura He, Contributor

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