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悪ふざけ写真で「炎上」…高校生はどう見ていたのか

 メッセージアプリをいつも気にしている少女、寝食を忘れてゲームアプリに没頭する少年――。小学校高学年から中学生、高校生たちにスマートフォン(スマホ)が急速に広がるなか、様々な課題が浮上している。スマホを手放せなくなった「スマホチルドレン」の現状を、中学校での生徒指導経験が豊富な兵庫県立大学の竹内和雄准教授が明らかにする本連載。今回と次回はこれまでとは少し趣向を変え、2013年後半に頻発した「バイトテロ」と呼ばれる事件など、ネットに投稿した写真が巻き起こすトラブルについて、高校生や大学生の見方を紹介する。これらの事件の多くは、いつでも簡単に写真を撮影・投稿できるスマホと無縁ではない。
図1 アイスクリーム用冷蔵庫に入る若者

2013年夏以降、アルバイト先で悪ふざけをした写真をスマホなどで撮影して、Twitter(ツイッター)などのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に投稿。それがきっかけとなってネット上で「炎上」(批判や非難が殺到)し、アルバイト先が閉店を迫られるなどの影響を受ける「バイトテロ」と呼ばれる事件が多発した。

また、かつての交際相手のプライベートな画像や動画を嫌がらせでネット上に公開・拡散させる、いわゆる「リベンジポルノ」も2013年後半に大きな問題として注目を集めた。

そこで筆者は2013年10~12月、高校生や大学生の約100人にバイトテロやリベンジポルノについてインタビューを敢行。これらの問題は学生たちのプライバシーに関わるだけに、質問方法や内容については十分配慮した。

大半の高校生は「あきれている」

図2 業務用冷蔵庫から顔を出す若者

まずは2013年10月に高校生たちに対し、アルバイト先の店舗での悪ふざけ(バイトテロ)や、遊戯施設での悪ふざけ、パトカーの上に乗ってにこやかにふるまう若者たちの姿をまとめたサイトを示して、「なぜこの人たちは、(ネットに)こんな投稿をしたのか」という点について意見を聞いてみた(図1~3はそのイメージをイラスト化したもの。実際の質問では、ネット上に公開されていた、投稿されたとおぼしき写真を使用)。

インタビューの結果、高校生たちの反応は大きく5通りに分かれた。(1)「世間にはバレないと思っていたのでは」、(2)「麻痺していた、ノリでついついやった」、(3)「たいしたことはないと思っていた」、(4)「かっこいいと思われたかった」、(5)「あきれている」――である。

(1)の「世間にはバレないと思っていたのでは」という反応は、公序良俗に反することは本人も理解していたが、悪ふざけをした写真を友達だけに見せているので、関係のない世間一般の人にはバレないと思っていた、という意味だ。今回インタビューした高校生たちから出てきた「バレないと思っている」「友達限定で投稿したら大丈夫と思っているんじゃないか」「友達しか見てないと思っていた」といった意見が、これに該当する。

(2)の「麻痺していた、ノリでついついやった」というのは、ネット上に同様の情報がいくつも公開されており、自分の悪ふざけ写真を公開しても、ほかと同じようにそれほど大きな反響を呼ぶとは思っていなかった、という意味である。具体的には「ネットにはそういう画像はいっぱいあるから、見ていて麻痺した」「けっこう、いろんな人がいろんなことをしている」「ちょっとくらい大丈夫と勘違いした」などの意見があった。

図3 パトカーの屋根に上る若者

(3)の「たいしたことはないと思っていた」は、悪ふざけだからせいぜい自分が叱られる程度で話が収まると考えていた、という反応である。こうした情報を公開したことで、アルバイト先の店舗が特定され、閉店に追い込まれるなどの大きな問題に発展しかねないといった想像力が働かなかった、というわけだ。「バレても、たいしたことにならないと思っていた」「ちょっと叱られる程度だと勘違い」などの意見がこれに当たる。

(4)の「かっこいいと思われたかった」という高校生たちの反応は、ほかの人ができない、世間の常識からはみ出たことをやって、それを公開することで、周囲から評価を受けたかった、という意味だ。具体的には「人ができないことをやれる自分を自慢したかった?」「すごいと思われたかった」「悪いことする自分はかっこいいと自己陶酔」という意見が出ていた。

(5)の「あきれている」とは、実際にこういう行為をした後で世間に向けて公開することが理解できない、SNSで情報を発信することの意味を分かっていない、という反応である。「なぜ、こんなバカなことをするかわからない」「あきれて物も言えない」「"バカッター"といって、みんな笑っている」「Twitterは"バカ発見器"とみんな言っている」など、今回のインタビューでは大多数が(5)に該当する回答をした。

つまり、今回インタビューに協力してくれた高校生の大半は、図1~3のような画像を公開することに対して動機を推測できるものの、冷ややかに見ていた、ということだ。そして自分たちが同様の行為を絶対にしないと確信している。

ミクシィとの違いがわかってなかった?

なぜ、次から次へとこうした写真投稿による炎上が続いたのか。筆者にはある高校生からの回答が的を射ているように思われた。

「mixi(ミクシィ)とTwitterの違いをよくわかっていなかったんじゃないかな。ガラケー時代(スマホとは異なる従来型の携帯電話が主流だったころ)はみんなmixiを使っていたのが、スマホになって一気にみんなTwitterになった。そのプライバシー設定に慣れてなくて、『友達にしか見られていない』と勘違いして日本中に流れてしまった、っていうのも多いのでは」

この回答をした高校生によると、2013年に頻発した事件を見て、ほとんどの同世代のユーザーがTwitterの設定方法と恐ろしさを理解したという。今後は「ああいったミス」を犯すユーザーはいなくなるだろうと話していた。

昔の自分ならやっていたかも

ただしごく少数から、「みんなで盛り上がったら、自分もやってしまったかもしれない」という発言があった。詳しく聞いてみると、「今では大変なことになるとわかったからもうやらないけど、昔の自分はやっていたかもしれない」という。

この発言の裏には大きな意味がある。事件が風化して、現時点ではスマホなどに触れていない下の世代が成長してスマホやSNSを使うときに、また同様の事件を引き起こす可能性があるということだ。ここには教育が必要になる。

ネット上に流出した情報は抹消することが難しい。例えば就職や結婚など、人生の大きな次のステップに踏み出そうとする将来に、流出した情報が本人を苦しめる可能性がある。情報化の波は、これからさらに加速すると考えられる。現在でも、かつてネット上に書き込んだ内容や公開した写真などから個人をたどり、特定する技術が向上している。これが進化し、個人の特定がさらに容易になることは想像に難くない。

写真1 米ウェズリアン大学での2013年10月の講演後に現地の大学生や研究者とネット問題について討議する筆者(正面右)

2013年10月に筆者は米ニューヨーク市の近辺で、現地の学生にSNSなどについてインタビューをした。

写真1は米ウェズリアン大学(コネチカット州ミドルタウン市)で、講演後に現地の大学生や研究者とネット問題について討議している場面だが、現地の高校生や大学生たちのSNSに対する問題意識は高いという印象を受けた。米国のほんの一部の若者の発言しか聞けなかったので断定的な物言いはできないが、「SNSに不用意な投稿をすると身を滅ぼしかねない」という考えが若者たちに広く浸透しつつあるようなのだ。

米国では5年以上前から、Facebook(フェイスブック)などのSNSが若者たちに普及していた。それを受けて、多くの企業では採用時に志望者のSNSをチェックする体制が確立していることも知られており、学生の警戒心が高まっているという。SNS先進国には我々も学ぶべき点が多いと感じ、今後も調査が必要と考えている。

日本でも進学や就職、結婚などの際にSNSの情報が活用される可能性が高いと感じている。そのあたりを教育者として、将来のある若者たちにどう伝えるか。しっかり考えていきたい。 (次回に続く)

竹内和雄(たけうち・かずお)
兵庫県立大学環境人間学部准教授(大阪府立大学非常勤講師)。公立中学校で20年間生徒指導主事などを担当(途中で小学校兼務)、教育委員会指導主事を経て、2012年より現職。大学では教職を目指す学生の指導のほか、いじめやネット問題など、「困っている子」への効果的な対応方法を研究。最近は、大学生による高校生のスマートフォン使用についての支援に力を入れている。研究室では、教師を目指す学生が自主的に集まる教師塾「センセーション」で、毎週木曜日に大学生と子どもたちの今について議論。総務省の「スマートフォン時代における安心・安全な利用環境の在り方に関するWG」構成員、文部科学省学校ネットパトロール調査研究協力者。
[ITpro2014年2月6日付の記事を基に再構成]

スマホチルドレンの憂鬱

著者:兵庫県立大学准教授 竹内和雄
出版:日経BP社
価格:1300円

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