日本の家電復活 切り札は電力の「自動需給応答」

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2012/12/26 7:00
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横浜市港北区、東急東横線・大倉山駅から5分ほど歩くと、緑の木々に囲まれた真新しいマンションが目に入る。三井不動産レジデンシャルが開発・販売する「パークホームズ大倉山」だ。全177戸、2012年9月初旬に竣工した。

図1 パークホームズ大倉山に設置された「MEMSモニター」の画面。「デマンドレスポンス対応中」の文字が出ている際には、CEMSからの指令に応じて各家電を制御している

図1 パークホームズ大倉山に設置された「MEMSモニター」の画面。「デマンドレスポンス対応中」の文字が出ている際には、CEMSからの指令に応じて各家電を制御している

このマンションは、経済産業省が横浜市など4地域で実施する「次世代エネルギー・社会システム」実証プロジェクトの舞台の1つだ。同プロジェクトの目玉は、住宅やビル、事業所などにエネルギー管理システム(EMS)を導入し、節電や電力需要の抑制などに取り組むこと。そして、各戸や事業所のEMSを連携させたCEMS(地域エネルギー管理システム)を構築する。横浜では、東芝がCEMSの構築を担当する。

パークホームズ大倉山には、共用部にMEMS(マンションエネルギー管理システム)、各戸にはHEMS(住宅エネルギー管理システム)を導入。エネルギー使用状況を把握し、可視化(見える化)するとともにCEMSと連携する。エントランスを入ると、マンションのエネルギー使用状況を示すフラットパネルディスプレイ「MEMSモニター」が設置してある。2013年4月からの実証プログラムでは、時としてこのモニターに「デマンドレスポンス対応中」と表示されることになる(図1)。

■共用部の照明や空調を制御

デマンドレスポンス(DR:需要応答)とは、需要家に対して電力使用の抑制を促す仕組みだ。横浜市の実証プロジェクトでは、CEMSを通じて、MEMSやHEMSなどの各EMSに対してDRの要請が発令されることになる。各EMSは、CEMSからDR要請があった時に備え、使用量を削減できる節電プログラムを用意しておく。

パークホームズ大倉山の場合、MEMSの制御で自動的に共用部の照明を少し暗くしたり、空調の効き具合を下げたりする。各住居のHEMSは、冷房の設定温度を自動的に変えたりする。CEMSは、連携している各施設のEMSがDR要請によってどの程度、電力使用を抑制できるかを予測し、地域全体で削減したい電力量を割り振っていく。

DRによる電力使用量の抑制手法には、パークホームズ大倉山のようにHEMSが自動的に電気設備を制御する場合と、経済的なインセンティブ(動機づけ)によって、人の手で照明を切ったり、空調の温度設定を変えたりするなど、節電行動を促す場合がある。前者を「ADR(Automated Demand Response:自動DR)」、後者を「マニュアルDR」と呼び、この二つのパターンで実証実験が推進されている。

■人を介さず直接家電に指令

マニュアルDRは、必ずしもHEMSがなくても実施できる。実際、NTTファシリティーズなどは、マンション住人に対してメールなどを使って、ポイント式インセンティブ付きのDR要請を通知し、節電行動を促すことで電力需要を抑制するマニュアルDRに成功している。

また、実証プロジェクトの一つである北九州スマートコミュニティ創造事業では、地域電力の需給状況に応じて電力価格を変える「ダイナミックプライシング」の実証が始まっているが、住民に料金情報を通知することによって、HEMSなしでも節電行動が引き起こされることが確認されている。

これに対して、パークホームズ大倉山のようなADRでは、CEMSからの指令を受けたHEMSが、人を介さず家電に対して直接電力消費量を抑える指令を出すことにより、より確実に節電を達成できるメリットがある。この場合、情報を受け取り家電と通信できる高度なHEMSの導入が前提になる。

米国では、ADRの実用化に熱心で、通信規格の標準化が進んでいる。CEMSなど外部からのDR要請に使う通信には、米国の「OpenADR」、住宅内の家電との通信には「SEP」という標準規格が作られ、普及が進んでいる。

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