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ニュースは続報に商機 博報堂社内ベンチャーの思惑

ブロガー 藤代 裕之

広告代理店の博報堂DYグループは、調査会社ゲイン(東京・港)と共同でニュースベンチャー「NEWSY(ニュージー)」(東京・港)を立ち上げた。独自のニュースサイト「しらべぇ」を6月16日に開設するとともに、他社のニュースサイトの立ち上げやCMも手がける。狙うはニュースの反応を記事にしたり解説を加えたりする第2報メディアだ。

ニュースビッグバンに対応

「ニュースをつくるクリエイティブエージェンシー」を名乗るニュージーは、独自ニュースサイト、広告クリエイティブ制作、ニュースサイト開発・編集を行うユニークな企業だ。

代表取締役CEOは植岡耕一氏、代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)はタカハシマコト氏が務める。2人は昨年秋ごろから事業について議論し、社内公募の新規ビジネス育成のプログラム「AD+VENTURE(アド+ベンチャー)」に参加し、選ばれた。

植岡氏は博報堂入社後、営業でインターネット企業を担当してきた。そこで、ネットサービスの会社がテレビCMをやり出すのを目の当たりにしてきた。ソーシャルゲーム企業、最近ではニュースアプリがCMを流している。「まだテレビが強いので、ネット企業はテレビの力を借りて成長しているが、これからスマートフォンを持っている人が増えて情報を得るようになってくると違ってくる」と、今後ネットの力が増大すると見通す。

タカハシ氏は、テレビCMなどマスメディア向けの仕事を中心に担当して賞を受賞しているコピーライター。テレビの仕事を担当するうちに、ネットに情報を出していけばテレビに流れていくという、間接的に影響力を持つネットの存在に気づいた。

さらに、スマートフォンの登場によるニュースサイトの変化が起きた。パソコン時代のヤフー一強では、ヤフトピにいかに取り上げられるかが重要だった。しかし、スマートフォン時代では、LINEニュースやスマートニュース、グノシーが登場し、多様なニュースが多くの人の目に触れる可能性が高まっている。「2014年はニュースビッグバンの年。ニュースという言葉の意味が変わりつつあると感じている」とタカハシ氏は語る。では、ニュースはどのように変わるのだろうか。

ニュースはネタ化する

同社の独自サイト「しらべぇ」は、調査を生かしたオリジナル記事をつくり配信する。いま拡大しているのは、独自の視点で記事をまとめるキュレーション系サイトだが、あえて独自記事の制作に乗り出すのは、勝算ありとみているからだ。

タカハシ氏は、書籍『ウェブはバカと暇人のもの』を書いた編集者中川淳一郎氏と同期で、ニュースサイトの仕事にも関わってきた。「ヤフーの『意識調査』、ネオローグ(東京・杉並)の『ゼゼヒヒ』などもあるが、あくまで調査で記事になっていない」。第1報のニュースに素早く調査を行い突っ込むニュースサイトは空白だと考え、「第1報ではマスメディアにかなわない。データつきの第2報で勝負する」。

タカハシ氏は「ニュースはネタ化している」という。以前、「情報の流れ変える『まとめサイト』ニュースのハブに」でも紹介したが、日常生活の話題や思わず笑ってしまう面白い情報がまとめサイトを中心に広がっている状況がある。

新聞やテレビは、いかに早く、知られていないことを伝えるか、という第1報を競い合ってきた。しかし、ソーシャルメディアの普及でユーザーも情報を発信できるようになった。さらに、ある出来事があると、さまざまな観点から指摘や解説も行われるようになってきた。タカハシ氏は、このような状況を素早く捉え『ツッコミュニケーション 生活者を「相方」にするボケとツッコミの広告術』(アスキー新書)という書籍も執筆している。

「ネタ」という言葉だと、面白いことだけと想像しがちだが、STAP細胞問題でも、ブログや掲示板、まとめサイトが、論文の画像流用や研究者の博士論文のコピペを次々と指摘、既存メディアがそれを確認し、そのことがまたソーシャルメディアで拡散されるという構造になっていた。記事を出せばニュースが完成というのではなく、読者に突っ込まれながらニュースが大きくなっていく構造がある。

編集に重要な独立性

16日に、しらべぇが公開した記事のタイトルは「もはや国民的行動!"とんがりコーン"を指にはめたことがある人の割合は驚愕(きょうがく)の数字」「【懐かしくてほっこり】小学生がよく使う言葉トップ10『弁償』『タンマ』『バリア』…」などだ。人々の身近で突っ込める記事となっている。

目標は1年後に月間100万PVと設定している。ページビューよりは、滞在時間、記事に反応するアクティブユーザーを増やし、ソーシャルメディアに強いニュースサイトを目指す方針だ。

広告代理店によるニュース記事制作と配信は大きな問題をはらむ。広告主から依頼を受け、メディアなどを使って商品を認知させたり、売り上げを上げたりするのが広告の世界。広告主とつながっている記事だと疑われかねず、消費者を欺くステルスマーケティングにつながりかねない。そのために子会社をつくり、独立した体制とした。タイアップを行う際は特設コーナーを設けるなど、読者に明示していく方針だ。 当面は記事の面白さを重視する。タカハシ氏は「記事を広告と疑われてはいけない。面白い記事がいっぱいあるように育てていく。メディアの信頼性をきちんと保ちながらやっていく」と述べていた。

藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。法政大学社会学部准教授。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。

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