ディズニーランドに風船戻るか ヘリウム不足問題の行方

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2013/3/22 7:00
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 宇宙で2番目に多い元素である「ヘリウム(He)」の深刻な供給不足が続いている。その影響は、さまざまな工業用途から身近な娯楽分野にまで及ぶ。一体、ヘリウムに何が起きているのか。供給不足に解消の見通しは付いているのか。最新動向を追った。

「現在、バルーンの中に入れている原料が調達困難なため、11月21日(水)より販売を休止しております。販売再開については未定です。再開の見通しについて分かり次第、このページにてお知らせをいたします」――。

図1 東京ディズニーランドのホームページに掲載されている、バルーンに関するお知らせ

図1 東京ディズニーランドのホームページに掲載されている、バルーンに関するお知らせ

東京ディズニーランドのWebサイトの「ショッピング」ページには、上記のようなお知らせが掲載されている(図1)。小さい子供が東京ディズニーランドを訪れた際のお土産の定番ともいえる、キャラクターを描いたバルーン(風船)が、2012年11月から4カ月以上も販売中止が続いているのだ。風船に詰めるヘリウム不足が、その原因である。

■工業や医療機器にも不可欠

図2 2011年におけるヘリウムの用途別販売量(図:日本産業医療ガス協会(JIMGA))

図2 2011年におけるヘリウムの用途別販売量(図:日本産業医療ガス協会(JIMGA))

ヘリウムの供給不足問題の影響は、もちろん風船にとどまらない。工業原料として様々な用途で使われているうえ、代替が難しいケースが多いことが、問題を深刻化させている(図2)。

ヘリウムが持つ特異な性質の一つは、沸点がマイナス269℃と元素の中で最低であることだ。比熱(単位質量の物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量)が大きく熱伝導率が高い特徴もあって、冷却用途に適している。

このため、光ファイバーの製造工程で溶融して成形したガラスの冷却や、半導体製造の「スパッタリング」と呼ばれる工程で高温になったシリコン(Si)ウエハーの冷却などに使われている。超伝導コイルを利用するMRI(核磁気共鳴画像法)機器やMEG(脳磁計)などの医療機器にも、ヘリウムの使用が欠かせない製品がある。

■光ファイバーや半導体製造では代替困難

ヘリウムは原子量が小さく、水素と異なり不活性で安定していることから、気球や風船に詰めても安全である。さらに直径が小さいため気密性の検査に利用されている。肺に吸い込んで話すと、甲高い「ドナルドダッグ・ボイス」になるのは、音が空気中よりも速く進む性質による。

冷却だけを目的とする用途では窒素(N)、不活性だけを生かす場合はアルゴン(Ar)など、代替元素は存在する。しかし、ヘリウムの複数の特徴を生かした光ファイバーや半導体の製造などの用途では代替は難しいとされている。

■現在の消費ペースだと25年後に枯渇

ヘリウムは、それを比較的高い比率で含む天然ガスから採取する。天然ガス田は数多くあるが、供給元は大きく増えない傾向にある。

ヘリウムを採算に合うコストで取り出せるガス田が、米国、アルジェリア、カタール、ロシア、ポーランドの5カ国に限られているためだ。最近採掘が進んでいるシェールガス田や、将来に採取の可能性のあるメタンハイドレートからはヘリウムを採取できていない。

また、これまで市場へ潤沢に放出されてきた在庫が底をつき始めている。主な生産国である米国は、1960年代に軍用の戦略物資として大量に備蓄、その後に方針を転換し1990年代からは民間へ継続的に放出したが、この放出が2015年に終わる。

ヘリウムの埋蔵量は、既存技術によって生産可能な範囲で約70億立方メートル(m3)とされている。現在のペースで消費を続ければ25年後に枯渇する計算になる。

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