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米銀株の積み立てで起死回生を狙った投資家

続・個人投資家奮戦記(6)

 リーマン・ショックから4年が経過した。リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけにした相場急落の後も業績懸念から日本の主力株が売られ、日経平均株価はなおリーマン前の水準まで戻せずにいる。そんなリーマン・ショックの直後に、何とか米国株で損失を取り戻した投資家に話を聞くことができた。
リーマン・ショックの損を取り戻した個人投資家に、東京・銀座で話を聞いた

財務コンサルタントの渋沢太郎さん(仮名、37)。もともと日本株を中心とした投資家だ。2000年ごろに初めて日本株の個別銘柄に投資。2003~2006年は日本の小型株ブームの波に乗り、3年連続で20~30%の年間利益率を確保。投資したのはレオパレス、タリーズコーヒー、マニー、エイジス、コタといった、事業モデルがわかりやすい小型成長株が中心だ。

2004年ごろから中国株を中心にした海外株の投資比率を全体の3割まで高めた。きっかけは中国への海外出張。携帯電話片手に話しながら歩く人、乱暴な運転事故が起きると道端でけんかを始める人…。急成長する中国で見た様々な風景に勢いを感じた。中国人民財産保険、中国江蘇高速などに投資し、次々に利益を確定。2007年は日経平均株価が下げに転じたが、渋沢さんの投資成績は中国株の利益確定により堅調だった。

大きくつまずいたのが2008年だ。9月のリーマン・ショックの影響で渋沢さんが保有していた小型株は大きく下落、約30%の損失を計上した。損失額は1000万円以上だった。当時、子どもが生まれ、住宅・教育資金が必要という時期にさしかかっており、渋沢さんは「何とか損失を食い止めなければならない」と強く感じた。

そこで渋沢さんは2008年末までに、大幅な損失覚悟の売りを実施して資金を確保。追加資金も併せて集中投資した先は、米国のウェルス・ファーゴ、香港のHSBC銀行といった銀行銘柄だった。当時は金融システム不安で外国大手銀行株は猛烈に売られていた。それでも渋沢さんは、「投機的取引の多い投資銀行は破綻する可能性も高いとはいえ、財務状態が比較的良い商業銀行が潰れる可能性は低い」と判断。2008年末~2009年5月にかけて、毎月一定額を積み立てた。2009年末にはウェルス・ファーゴ、HSBC株が共に平均取得株価から2倍弱まで回復。2010年に入り段階的に銀行株を売っていき、同年末には保有資産額をほぼリーマン前まで戻すことに成功した。

「そろそろ住宅を購入する時期かな」。3人の子どもが成長するにつれ、夫婦でこんな意識を強めるようになった。住宅購入にはまとまった資金が必要になる。そこで渋沢さんが決断したのは医薬品や生活必需品関連など、事業の安定性が高い外国の大型株への資金シフトと、日本株の売却だった。2010年末には、運用資産に占める日本株比率は1割となり、日本株売却で得た資金を、2011年に住宅購入の頭金として使用した。

現在も保有し続ける外国株投資に割く時間は少ない。本業の仕事に加え、大学院に入学して勉強をし、週末には家族との時間も大切にしている。大学院での勉強は妻に「最後の自己投資機会」とお願いし、理解を得たという。「本業で一定の稼ぎがあるからこそ、リスクをとった証券投資も続けられる。いまの大学院での勉強も将来への投資。家族の理解が大切になっている」と話す。

いまは住宅ローン返済で資金面での制約もある。ただ渋沢さんは日々の生活に忙しいながらも株式市場に熱い注目を寄せている。リーマン・ショック後の経験を胸に、相場暴落局面での外国優良株への追加投資機会を虎視眈々(たんたん)とうかがっている。

渋沢さんの投資履歴  徐々に日本株から海外株へシフトしている。

(日経マネー 南毅)

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