スマホに中年を誘う、初代「ドラクエ」起爆剤に
ジャーナリスト 新 清士

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2013/12/23 7:00
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ファミコンがきっかけでゲーム業界に入り、有名ゲームの開発に関わった後、現在は独立系開発者として活躍している40代のあるゲームデザイナーA氏もそんな一人だ。今回、ゲームをクリアしたことで過去のいろんなことを思い出したという。彼はドラクエ1を「最高のゲーム」と評した。A氏と同じような感想を持つ、かつてドラクエ1を遊んだゲーム開発者は少なくないようだ。

■自分が必ず成長するという感覚

アップルのコンテンツ配信サービスであるアップストア上の「ドラゴンクエスト ポータルアプリ」(左)。「ドラクエ1」はこのアプリを通じて起動する(写真中と右はゲーム画面)

アップルのコンテンツ配信サービスであるアップストア上の「ドラゴンクエスト ポータルアプリ」(左)。「ドラクエ1」はこのアプリを通じて起動する(写真中と右はゲーム画面)

RPGはゲーム内の地図上を歩き回っていると何度もモンスターと遭遇する。それらと戦って倒しながらゲームを進めるのが基本だ。A氏は今回、ドラクエ1は「プレーヤーが1人なので、モンスターとの戦いの駆け引きに深みがない」と感じたという。しかもゲームを進めることで強力なアイテム「ロトのよろい」を手に入れると、主人公はほぼ無敵になる。

当時はそうした無敵状態でも、出現するモンスターを倒し続けることが「最高におもしろかった」(A氏)という。現在の複雑な家庭用ゲームからみると、やや単純なゲームといえなくもない。それでも「ついポチポチとボタンを押してモンスターを倒し続けることがやめられない魅力がある」(A氏)。当時の子供たちはゲーム内でモンスターを倒し続けることで、自分自身も成長するように感じていたのかもしれない。

A氏は、ボタンを押し続けてゲームをずっと遊び続けたくなるドラクエ1の感覚は、09年に登場した「怪盗ロワイヤル」(ディー・エヌ・エー)など「少し前のソーシャルゲームに似ている」とも指摘している。時間をかけて単にボタンを押し続けるだけだが、自分が必ず成長するという素朴な感覚がドラクエ1時代のRPGに近いという。

「ドラクエ」生みの親の堀井雄二氏(09年の国内ゲームカンファレンスより)

「ドラクエ」生みの親の堀井雄二氏(09年の国内ゲームカンファレンスより)

■産業社会の価値観をなぞったゲーム

ゲームデザイナーとしてドラクエシリーズの開発に携わってきた堀井雄二氏は、ドラクエ1の開発当時、ライターとして青少年向け雑誌で読書コーナーをまとめていた。雑誌で出した「お題」に対し読者が送ってくるハガキを使い、ユーモアのある座談会や小説を誌面に掲載する仕事だった。そうした経験から堀井氏は、誰にでも伝わるように短いセリフでいかに面白く表現するかを追求していた。ドラクエ1に登場するキャラクターがシンプルな言葉で生活感を醸し出しているのもそのためだろう。

一方、ゲームと社会との関係の研究を行っているマルチメディア振興センター研究員の七邊信重氏は、「ドラクエ1は当時の産業社会の価値観をなぞったゲーム」と表現する。今の時代からドラクエ1を見直すと新しい発見があるというのだ。

七邊氏はドラクエ1の登場キャラクターについて、「主人公の勇者以外は自律的な思考で行動することなく、勇者のために存在し、サポートする役割を持っている。平和を実現した勇者は竜王を倒した功績により王女と結婚することになる」と解説する。開発者である堀井氏が、当時の子供たちがゲームを通じて成功体験を感じられるように意図していたとみられる。

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