乱立する放送規格、テレビの互換性は大丈夫か 世界で始まる3D放送(1)

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2010/6/23付
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3次元(3D)映像のブームが,いよいよ放送に押し寄せている。1890年代からの動画の進化,つまりサイレントからトーキー,白黒テレビへの放送,カラー放送,デジタル放送の次のステップとして,3Dテレビに向けた3D映像の放送や配信サービスが本格的に始まろうとしている。ただし,その実態はバラバラ。標準規格がなく,まるで指揮者がいないオーケストラのようだ。本連載では,まず放送/配信の現状を把握した上で,各方式の互換性や,標準化は果たして進むのかといった課題を検証していく。

「以前と違うのは,3次元(3D)テレビが標準的に売り出され,3D放送を見る環境が整いつつあること。ようやく3D放送と3Dテレビが両輪で回り始めた」〔日本BS放送(BS11) 編成・制作局 技術部長の遠藤寛氏〕。

BS11は,2007年12月に世界で初めて3D放送をほぼ定常的に実施し始めた放送事業者。これまでは孤軍奮闘に近かったが,2010年になって状況が一転した。同社が採用したのと同じ方式で3D映像の放送や配信サービスを実施する放送局が世界中で急増し,対応する3Dテレビも各メーカーから発売され始めた。

BS11が採用した3D映像の放送方式は「サイド・バイ・サイド」(下掲の「用語解説」を参照)と呼ばれる。これまで主流だった放送データの符号化方式「MPEG-2」との互換性が高く,現状だけから考えると3D放送の事実上の標準に近づきつつある。

ただし,これが3D放送の本当の標準になるかどうかは不透明だ。理由は主に3つある。すなわち,(1)現行のサイド・バイ・サイドはフルHD表示できないなど解像度や3D映像の自然さという点で限界がある,(2)サイド・バイ・サイドにはさまざまな「方言」があるため,3D放送と3Dテレビの間で互換性が保証されない可能性がある,(3)ITU(国際電気通信連合)などの標準化機関は,MPEG-2とは別の「H.264」に基づく3D放送の方式を標準化しようと活動している。

(1)~(3)はいずれも,3D映像の今後の進化を考えると,現行のサイド・バイ・サイドは通過点にすぎないことを指し示している。つまり,3D放送方式の標準化に向けた動きは,多くの放送事業者やテレビ・メーカーが3D放送対応を打ち出したこれからが本番なのである(図1)。

図1 3D放送の中でも進化は続く  解像度や視点数といった点での,3D放送の今後の進化の見通しを示した。現在はサイド・バイ・サイド方式とMPEG-2を用いた放送が主流になっているが,今後次第に一部の衛星放送やネット経由の放送からH.264を用いた3D放送が増え始める可能性が高い。

図1 3D放送の中でも進化は続く  解像度や視点数といった点での,3D放送の今後の進化の見通しを示した。現在はサイド・バイ・サイド方式とMPEG-2を用いた放送が主流になっているが,今後次第に一部の衛星放送やネット経由の放送からH.264を用いた3D放送が増え始める可能性が高い。

【用語解説】
サイド・バイ・サイド(side-by-side) 広義では,左目用(L)映像と右目用(R)映像を横に並べて伝送する方式全般。1954年に,米3DVideo社がメキシコで実験放送まで実施した。現在はサイド・バイ・サイドに特定の特許はないという見方も多い。ただし,RealD社は1991年にサイド・バイ・サイドの基本特許を取得したと主張する。具体的には,一般の放送と互換性を持つように横に並べた映像を圧縮して伝送し,テレビで伸長させてL映像とR映像を時分割で表示,それを液晶シャッター方式のメガネで視聴するもの。特許番号は,US5193000。ただしこれも,2011年8月に特許切れを迎える。
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