「情報多すぎ」「見ない」…ネット選挙の実態
ネット選挙の解禁で期待されたのは「若年層の政治への関心が高まるかもしれない」との効果だった。だが、20代の男子学生は「候補者のブログなどは読まない。新聞などの公約比較特集を判断材料にしている」。選挙戦が進むにつれ、むしろネット情報を参考にする人は減った。
高まらぬ若者の関心

日本経済新聞社が14日から16日まで実施した世論調査では「ネット情報を参考にしない」との回答は81%で、公示直後の4、5両日の調査から3ポイント増えた。特に20代では「参考にしない」が51%から57%へと、6ポイントも増えている。いまの20代は子どものころに、簡単なネット接続を売り物にしたウィンドウズ95が登場してパソコンが一般化し、ネットには親しみのある世代。周りをみればほぼ全員がスマートフォンを持ち、四六時中ネットに接している肝心のその世代からは「そもそも選挙に興味が薄く、政治のサイトはみない」(20代会社員男性)との声も多い。
閲覧する有権者でも、都内に住む30代の女性会社員は「関心があるので、最初はよくみる」と話しながらも、内容については「候補者のSNSサイトの内容は断片的だったり一方的だったりして、熱心な支持者でもないのでほとんど読まない」と辛口だ。別の40代男性会社員も「雑多な情報がたくさん寄せられるのでフォローするのは正直面倒」と話す。
ネットを通じて「選挙初心者」を取り込もうという動きもある。ヤフーはポータルサイト「Yahoo! JAPAN」で自分の考え方に近い候補者を簡単に検索できるツールを今回の選挙から導入した。憲法改正や原発再稼働など11項目についての賛否を5段階評価で入力すると、候補者ごとに自分の考えとの一致率をはじき出す。2~3分で簡単に候補者の考え方をつかむことができる手軽さが特徴だ。
「マッチング」利用者は増加
2009年衆院選から「マニフェストマッチング」というサービスを導入していたが、より簡単で早く結果がわかるよう改良。公示から1週間で利用者数は30万人と、昨年12月の衆院選の13万人を大幅に上回った。ヤフー担当者は「ネット解禁で有権者の意識が高まっている」とみる。
若者向けにマニフェストの比較などができるサイト「日本政治.com」を運営する日本政治報道(東京・文京)の鈴木邦和社長は「候補者側もネットを通じて支持者を集めるには、街頭演説の日程といった既存支持者向けの情報だけでなく、自身が提案する政策の内容や政治信条などについて書き込みを増やすといった努力が必要だ」と指摘する。
どんな情報を発信するか、有権者がどんな反応を示し、応答を返すか。双方向性の発展へ、政治の側も有権者も、試行錯誤が始まったばかりだ。
(政治部 朝田賢治)