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太陽熱発電の商業運転、欧米で続々始まる

集光型太陽熱発電システムの商業運転が、欧州や米国で続々と始まっている。降り注ぐ太陽光を多数の鏡で1点に集め、その熱エネルギーで蒸気をつくり、タービンを回して発電するシステムである。火力発電や原子力発電の炉に相当する部分を太陽光に置き換えたものと考えればわかりやすい。

日本では再生可能エネルギーというと太陽電池パネルを用いた太陽光発電が主体だが、欧米には広大な砂漠・乾燥地帯があることから、太陽熱発電への期待も大きい。ある程度の土地の広さと、ほぼ常時照りつける強烈な太陽光がないと商業化は難しいものの、それらさえあれば安価な鏡を大量に並べれば発電でき、投資効率が高いからだ。

ただし、同じように見える太陽熱発電でも、詳しく見ていくと欧州と米国ではアプローチの仕方に違いがあることが分かってくる。欧州が「高効率化」を目指しているのに対し、米国は「低コスト化」を重視しているのだ。

今後の期待は「タワー式」

写真1 タワー式の集光型太陽熱発電システム (写真:米eSolar社)

集光型太陽熱発電システムには主に2つの方式がある。1つは、曲面鏡を使ってその焦点部分に置いたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内の液体を加熱、その熱で発電する「トラフ式」である。現在、これが商業化で先行している。

もう1つは、多数設置した平面鏡を使って中央部に設置したタワーにある集熱器に太陽光を集中させ、その熱で発電する「タワー式」である。中でも、高さが60~160mのタワーを使った大規模なシステムは、将来の主流になると期待されている(写真1)。

大規模なタワー式は、高いエネルギー変換効率を得られるだけでなく、溶融塩(硝酸ナトリウムや硝酸カリウムの混合物など)を使用した蓄熱装置と容易に組み合わせられるという特徴がある。昼間のうちに溶融塩を溶かして熱を蓄えておき、夜は溶融塩が固体に戻るときの潜熱などによって蒸気を発生させ、発電するのである。

実証実験から商業運転のフェーズに

このタワー式集光型太陽熱発電システムで既に商業運転を開始しているのが、スペインのAbengoa Solar社と、米eSolar社である。さらに、2011年にスペインGEMA Solar社、2012年には米BrightSource Energy社がそれぞれ稼働を計画している(表1)。

表1 タワー式太陽熱発電システムの稼働状況 (各社の資料を基にテクノアソシエーツが作成)

 これらの商業化の動きにタイミングを合わせるように、各社とも新興諸国へのシステム販売などの商談を進めている。再生可能エネルギーに投資する側の太陽熱発電システムに対する意識も高い。例えば、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで進められているスマートシティ・プロジェクト「Masdar City」(マスダールシティ)の運営と評価を担当するAssociate Director のAhmed Baghoum氏は、「将来的には太陽熱発電の可能性に期待している」と語る。前述した「高効率化か、低コスト化か」という競い合いは、商業運転の成功だけでなく、新興諸国に対する熾烈(しれつ)な売り込みを反映したものでもある。

「高効率化」を目指したシステムの典型例が、Abengoa Solar社の取り組みである。そのコンセプトは次の通りだ。まず、鏡1枚当たりの面積を大きく取ることで部品点数を減らす。鏡の数を減らした分、頑丈で高精度な太陽光追尾システムをそれぞれの鏡に取り付けて、3km×1km以上もある広いスペースから集光することでエネルギー変換効率を高める。1枚の面積が120m2(平方メートル)と大きい鏡が無数に設置された光景は壮観である。

Abengoa Solar社は、太陽光発電システムも手がけており、自社の敷地内ではミラー反射式や太陽光追尾式の太陽光発電システムの実証試験も行っている。両者を比較した結果、変換効率では太陽熱発電に優位性があるという。

写真2 eSolar社の集光ユニットの設置状況 (写真:eSolar社)

一方、「低コスト化」を重視するのが、eSolar社である。1枚の鏡を小さくすることで、部材の簡素化と製造が容易となり、量産効果によって低コスト化を実現するというのが基本的な考え方である。同時に、それぞれの鏡からの反射光を小さな面積に集中させることができるため、集熱器をより高温な状態にしたり、集光精度を高めたりできるといったメリットもある。

個々の鏡の面積は1m2程度と、液晶テレビとほぼ同じくらいの大きさである。鏡の小型化に伴い、風の抵抗が減ることから集光精度への影響が小さく、集光ユニット全体を軽量化できる。これにより、地盤の基礎工事が不要な安価な設置工法も可能となる。

実際に集光ユニットの基礎部分ではコンクリートなどを一切使用せず、地面の上にI字型の鉄製ドラムを直接置き、その上のレールに鏡を取り付けている(写真2)。しかも、各ユニットをモジュール化することで容易に設置規模を変更できる。材料にも汎用で安価な鋼材を使える。eSolar社は今後、中国、インド、南アフリカへの大規模発電プロジェクトへの導入を計画している。既存の石炭・ガスを使った火力発電に対しても同社の太陽熱発電システムはコスト面で対抗できるとしている。

写真3 三鷹光器とJFEエンジニアリングの実証実験設備 (写真:三鷹光器)

Abengoa Solar社とeSolar社のそれぞれのアプローチに対し、今のところ業界関係者の間ではeSolar社の「低コスト化」戦略を支持する向きが多い。事実、IEA(国際エネルギー機関)の下部組織で太陽光エネルギーの調査・研究を行うSolarPACESでも、「大量生産による小型の鏡を使用した低コスト化がトレンドであり、今後の技術進化で40~70%の投資コスト削減が期待できる」と結論付けている。

日本にも注目できる取り組みがある(写真3写真4図1)。三鷹光器がJFEエンジニアリングと共同開発したタワー型太陽熱発電システムだ。この発電システムではeSolar社のものよりもさらに小型の鏡を使用する。その鏡を曲面状に加工し、集光効率を向上させる独自のアプローチが試みられている。

写真4 ビームダウン方式の集光レシーバ (写真:三鷹光器)
図1 将来の太陽熱発電システムのイメージ (資料:三鷹光器)

(テクノアソシエーツ 木村勲)

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