/

JAXA、イプシロンは「かつてないほどきれいな打ち上げ」

図1 イプシロンロケット試験機の打ち上げ成功で満面に笑みをたたえるJAXA イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏

「ようやく心の底から笑える状態になった。最後は新しいものを生み出す、生みの苦しみを味わったが、終わってみたら最高だった」。宇宙航空研究開発機構(JAXA) イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏は、2013年9月14日16時15分から開催されたイプシロンロケット試験機の打ち上げ経過に関する記者会見でこう語った(図1)。

同ロケットはこれまで、打ち上げを2度延期していた。しかも、そのうちの1回は、打ち上げのわずか19秒前での中止だった。多くの人々の期待を裏切ってしまった申し訳なさなどから、森田氏は精神的にも肉体的にも厳しい状況にあり、「眠れない日々もあった」と打ち明けている。

今回の打ち上げを管制室から見守っていた同氏は、飛んだ瞬間、「心の中で『飛んだ』と叫んだ」と吐露した。

森田氏は今回の打ち上げのでき栄えに関して「これまで何度も打ち上げを見てきたが、これほど"きれい"な打ち上げは今までなかった」と評価した。きれいというのは、ほぼ決められた時刻に決められた通りのイベントを行えたという意味だ。同ロケットの4段目に相当するポスト・ブースト・ステージ(PBS)の燃焼時間が予測値から比べると大きく短縮されたが、これはそもそもが3段目までの燃焼による軌道の計画経路に対する誤差が小さかったため。大きく見積もっても「数km程度の誤差」しかなかったという。

PBSは液体燃料を使って、3段目までの燃焼による軌道を修正するためのエンジン。イプシロンロケット試験機では、これにより搭載した衛星を所望の軌道に高精度に投入できるように設計されている。

9月14日14時に打ち上げられたイプシロンロケット試験機は、打ち上げから約61分39秒後に惑星分光観測衛星「SPRINT-A」を正常に分離。SPRINT-Aは予定通りの軌道に乗って地球の周りを回り始めた。

SPRINT-Aの愛称は「ひさき」

そして、打ち上げから約2時間後、SPRINT-Aは再び発射場のある内之浦宇宙空間観測所周辺の上空を通過。その際、「太陽電池パドルが正常に展開され、太陽電池が太陽の方向を捕捉したことが確認できた」(JAXA 惑星分光観測衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャの澤井秀次郎氏)という。同氏によればSPRINT-Aは健全な状態にある。

図2 惑星分光観測衛星「SPRINT-A」の愛称を発表するJAXA 惑星分光観測衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャの澤井秀次郎氏

森田氏のいう今回の「きれいな打ち上げ」については、澤井氏も同意している。その上で「うれしい。でも、うまくいき過ぎている。打ち上げるまでに異常対応の手順を100以上考えてきたが、それらがすべて無駄になった」と笑顔で語った。ただ、衛星はこれからが本番。同氏は「ここでうかれてはいけない」と付け加えた。

打ち上げが成功したことで、慣例にならってSPRINT-Aの愛称が決定された。愛称は「ひさき(HISAKI)」(図2)。今後、同衛星はこの愛称で呼ばれる。

この愛称の由来は2つ。一つは、内之浦には内之浦湾の南方に伸びる津代半島の突端に「火崎」という場所があること。そこは、内之浦で最初に朝日が当たる場所で内之浦の新しい夜明けの象徴としてふさわしい上、内之浦の漁師が安全を祈願する場所でもあること。加えて、津代半島の突端という地形が、衛星の形状のイメージに合致していることも火崎に着目した理由だ。もう一つが、同衛星の観測対象が「太陽(ひ)の先(さき)」であることだ。

(Tech-On! 富岡恒憲)

[Tech-On! 2013年9月15日掲載]

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン