/

栽培用照明の主流となるか、LEDランプ

新産業としての植物工場(2)

 植物工場を新産業として立ち上げるには、コストを抑えて「もうかる工場」にする必要がある。前回(本連載の第1回)は、工場の初期投資額を抑えたアルミス(本社佐賀県鳥栖市)の事例を紹介した。今回は、ランニングコストに注目する。

植物工場は、植物を栽培するための光源として人工光のみを使うタイプと、人工光と太陽光を併用するタイプに分類できる。このうち、太陽光を併用しない植物工場のランニングコストで大きなウエートを占めるのが、栽培用照明で消費される電力のコストである。その電気代を大幅に削減できる光源として今、LED(発光ダイオード)ランプが熱い期待を集めている。

LEDランプは、消費電力が少なくて寿命が長いなど、多くの利点を持っている。これらは家庭用照明として使う場合も共通したメリットだが、植物工場の栽培用照明に使うと、さらに大きなメリットを享受できる。

例えば、植物の成長に適した波長の光を選択して照射することができる。無駄な波長の光は出さないので、投入する電力に対する栽培効率をグンと高められる。加えて、光合成反応に必要なときにだけ光を照射するパルス照射(間欠照射)にLEDランプは適している。赤外線領域の光(熱放射)を少なくできるため、空調コストの削減や空間の有効利用といった効果も期待できる。

図1 玉川大学の「Future Sci Tech Lab」の外観  手前にある円筒部分は、無重力状態での植物育成実験などを実施する宇宙農場ラボ。

LEDランプにはこうした多くのメリットがあるものの、現時点では課題も少なくない。その第一は、購入価格が高いこと。

価格が上がる理由としてはまず、家庭などで使われる一般照明用のLEDランプとは異なった波長が求められるので、特注品に近くなってしまうことが挙げられる。さらに、高湿度な環境で長時間の連続使用に耐えるといった、高レベルの耐久性が求められるので、カバーなどの仕様も特殊になってしまう。

つまり、こうした価格上昇分と、先に述べた省エネルギー化や長寿命化によるコスト低減分をじっくり比べて考えないと、栽培用照明としてLEDランプが本当に優れているのかは判断できないのだ。加えて、波長選択やパルス照射などのメリットが、どの程度享受できるのかも、まだ明らかになっていない部分が多い。これらの課題や疑問を一つひとつ解決していくことが、植物工場におけるLEDランプの普及を大きく促進することになる。

LEDチップを水冷

そうした研究で重要な役割を果たすと見られている植物工場の研究施設が、2010年3月に完成した、玉川大学の「Future Sci Tech Lab」の中にある(図1)。

図2 栽培室の内部  さまざまな色のLEDランプを使って栽培実験を続ける。

同研究施設では、800平方メートルの広さの中に4つの栽培室と1つの育苗室、実験室などを配置し、多段式の水耕栽培システムによって植物を育てている(図2)。栽培用照明としてLEDランプのほか、蛍光灯(熱陰極蛍光管)、HEFL(Hybrid Electrode Fluorescent Lamp:冷陰極蛍光管と外部電極蛍光管をハイブリッドした蛍光管)を備えており、まさにLEDランプの植物工場における実用性を検討することが目的の1つなのである。

図3 水冷式LEDランプ  LEDチップをアルミ合金製の板に接触させた状態で実装し、その背面に冷却水を流す構造とした。上が全体像で下がLED部分の拡大。

具体的には、これらの栽培用照明を利用して、照射条件と栽培結果の相関関係などを研究している。ここで注目すべきなのは、同研究施設では、放熱性が極めて高いLEDランプを採用しているところだ。LEDのチップを直接、アルミニウム合金製の板に接触させ、その板の背面に水冷式冷却器を装着した独自の構造を採る(図3)。同大学が昭和電工アルミ販売(SDAT)と共同で開発した。

前述のようにLEDランプの光は熱放射が小さい。このため、植物の温度上昇という悪影響を与えることなくLEDランプと植物を近づけることができる。ところが、LEDチップそのものの発熱は決して少なくはないので、照明のすぐ上側にある栽培棚の温度を上げてしまいがちである。この悪影響を抑え、さらに発光効率や寿命を維持するためにもLEDチップの放熱/冷却は非常に重要な課題となっている。

新開発のLEDランプでは、約15℃の水を冷却器に流すことで、LEDチップの温度を20℃弱と、ほぼ常温に保つことができるという。玉川大学ではLEDランプの冷却性能や、冷却水の循環に必要となるエネルギーなどの実験データを蓄積しながら、研究を進めていく予定だ。SDATでは植物工場だけでなく、トンネル内やスタジアムの照明といった分野での採用も目指すという。

図4 「宇宙農場ラボ」の内部  中央に見えるのが、無重力状態を疑似的につくり出して植物を栽培する装置。

玉川大学の研究施設には「宇宙農場ラボ」と呼ばれるスペースもあり、そこでは宇宙空間での栽培技術を研究している(図4)。例えば、栽培棚を常に回転させながら栽培できる装置を備える。回転によって一定方向の重力が常に掛からないようにし、疑似的に無重力状態での植物の生育を確認したいとする。栽培用照明の研究や宇宙農場の研究のほか、「食べる医薬品」などの機能性作物の開発や、植物工場事業への参入を検討している企業への情報発信なども同研究施設は担っていくという。

(日経ものづくり 中山力)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン