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錦織、ついに「修造超え」 テニス世界30位の快挙

超えられそうで超えられなかった壁を、錦織圭(21、ソニー)がついに突き抜けた。16日まで行われたマスターズ上海大会でベスト4に入り、17日に発表された男子テニス世界ランキングで、松岡修造(92年6月)と自ら(11年5月)の日本男子歴代最高ランク(46位)を大きく上回り、30位となった。

昨年11月のインタビューで、「今年は上に行くための準備期間」と話していた

自己最高位4位のクルム伊達公子、同8位の杉山愛と、女子ではトップ10がいた。競争の激しい男子はランキングを上げるのは女子より難しいとされていて、今回、錦織が記録した30位は、彼女たちに並ぶ快挙ともいえる。

楽天ジャパンではフェレールに敗れたが

「修造超え」の雰囲気はあった。毎年、四大大会最終戦、8月末から始まる全米オープンのころは調子がいい。9月の国別対抗戦デ杯インド戦では日本のエースとして2勝し、マレーシア・オープンではベスト4に入った。

10月の楽天ジャパンオープンは、初戦で世界ランク5位、第3シードのダビド・フェレール(スペイン)に4-6、3-6でストレート負けしたが、錦織が悪かったというより、相手が良すぎた試合だった。

フェレールは08年、四大大会の全米オープン3回戦で、当時18歳の錦織にフルセットで敗れている。よほど、強烈な印象が残っていたのだろう。

「1ゲーム目からタフで、勝つには相当の根気がいると思った」と錦織。錦織の作戦もフォアもさえていたが、クレー出身のスペイン人らしい、ねちっこく、重量感あるショットでことごとく返された。

「あれだけ(相手が)ミスしなかったら、圭もつらいだろうなあ」と父親の清志さん。年に一度の日本での大会。清志さんによると、「日本ではいいところを見せたいと思うので、普段より、妙な力が入りがち」。完全に無心になりきれなかったことも敗因の一つだったようだった。

テニスのトーナメントは四大大会を筆頭に、マスターズ1000、ATP500、ATP250とランクがある。楽天オープンはATP500。128人出場する四大大会に対し、同程度トップ選手がそろうマスターズは56人~96人が出場。上海は56人だった。このため早いラウンドで強い選手に当たる確率が高く、1勝するのが四大大会よりもきつい。

ツォンガ、ドルゴポロフを撃破

今回は2回戦で、世界ランク9位のジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)に当たったが、フルセットの末に勝利。準々決勝で第12シードのアレクサンドル・ドルゴポロフ(ウクライナ)にストレート勝ち。準決勝では世界3位のアンディー・マリー(英国)に56分で完敗したが、マリーは上海も含めて3大会連続優勝と現在絶好調。

楽天オープン決勝でも、ラファエル・ナダル(スペイン)に最終セット、4ポイントしか与えず勝っている。錦織は負けたが、スコアほど見応えのない試合ではなかった。

「プロジェクト45」がようやく実る

08年にツアー初優勝、全米ベスト16をなし遂げた錦織が、ついに果たした世界ランク30位。コーチングチームが「プロジェクト45(日本人最高ランクを取るという趣旨)」を立ち上げて4年余り、ようやく実った。

「騒ぐほど実力あるの?」「ケガが多いのはダメなのでは?」。その間、よくこんな声を聞いた。優勝を重ねるゴルフの石川遼とよく比較されたが、錦織の優勝は1回だけだったからだ。小さなケガも多く、右ヒジの手術で10年4月はランク外まで落ちたこともあった。

テニスの世界ランクを維持するのは難しい。シーズンは1~11月まで。毎週、世界のどこかで大会があり、稼いだポイントの有効期限は1年。今週、クルム伊達の世界ランクが85位から113位に落ちたのは、前年のHPオープン準優勝のポイントが失効したのが原因だ。安定して勝たないとランクを維持できないし、シード選手に勝たないと上にいけない。

ナダルやフェレールの足腰のたくましさ、190センチを超えるスラブ系選手、マリーの細身だが鋼のような体……、彼らでもシーズン中にはどこかしら故障をするのだから、178センチの錦織がケガするのも無理はない。

トップ選手は大事なポイントで集中

デビュー当初から、錦織はストローク戦ではトップ選手と見劣りしなかった。「いろんなショットがあって、相手を翻弄できるから楽しい。僕が翻弄されることもあるけれど。相手と駆け引きする心理戦が楽しい」と自ら語る選手だ。相手の意表をつくプレーは、早い時期からテニス界で注目されていた。

それに加えて今季、目に見えてサーブが向上した。リターン巧者だったが、サービスゲームをキープしやすくなっていることが好調の原因ともいえる。

テニスの試合で勝敗を分けるのは、大事な数ポイントを取れるかどうか。「トップ選手はそこで集中力を一気に上げてくる。戦術もあるんだろうけれど、本当にミスしない」と錦織。ナダルやマリー、マリア・シャラポワ(ロシア)らに聞くと、「そこでタフになれるから」「トップ選手だから」。

まさに嗅覚としかいいようのないもので、自分のテニスに自信があるから、そこで大胆になれるのかもしれない。

嗅覚は実戦でしか身につかない

錦織も嗅覚はある方だが、「イチかバチかのところで迷わないか? といえば微妙。トップ選手は絶対にポイントを取らせてくれないから、(プレッシャーもかかって)大変。大事なポイントで、ラケットを振れるかは大切」と語る。トップ選手自ら「ファンタスティック」と表現するショットは勝負どころで出ることが多いのに対し、並みの選手の場合は大勢に影響のない場面で出ている気がする。

嗅覚は実戦でしか身につかない。「経験を積んで、どういうところで、どういうプレーをすればいいのか、そういうことが分かれば違ってくる」。昨年11月、話していたが、そうしたことができたから、年初の98位から30位にまでジャンプアップしたのだろう。しかし、まだ道は険しく、楽天オープンのフェレール戦後も、「大事なポイントは集中してしっかりとらないと」と話していた。

13歳で渡米してからフロリダ州に住み続ける。日本にいるとテニスから離れて落ち着きすぎてしまい、焦りも生じるという。「米国はテニスだけの生活だから、ストレスがかからない」。コートと自宅を往復するだけだそうだ。

いよいよ"開花宣言"?

ときおり、両親が訪れると「サッカーやろう」と誘ったりする。父親と錦織がボールを取り合い、母親がGK役。「友達がいないんだよ。どれだけ寂しい生活をしてるのかって思う」と清志さん。

今年はあと2、3大会に出場予定。最近、テニス選手のキャリアが花開くのは22、23歳ころとされる。今年、初めて世界1位になったノバク・ジョコビッチ(セルビア)は24歳。12月29日に22歳の誕生日を迎える錦織も、いよいよ"開花宣言"か。

(原真子)

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