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ドコモとKDDIがスマホの無線LAN機能を強化

5ギガ帯に対応、ソフト改良も

NTTドコモとKDDI(au)は、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)における無線LANへの対応機能をそれぞれ強化する。このほど発表した夏商戦向けのスマホ新製品では、無線LANの対応周波数を拡張した端末を大幅に増やしたほか、無線LAN接続時の消費電力を抑えたり、携帯電話回線との切り替え時間を短縮したりといった改良を施した。

携帯電話各社は、スマホの急増に伴い3G(第3世代携帯電話)回線の混雑が激しくなっていることを受け、スマホからの通信を分散させる受け皿として無線LANの利用拡大を目指している。これまでは無線LANの使い勝手の悪さがユーザーから指摘されていたが、2社は今回の取り組みによりユーザーの不満を解消し、無線LANへの移行を促す。ユーザーにとっては、自宅や外出先で3GやLTE、無線LANといった複数のネットワークから最適なものを選び、従来より快適に通信できる環境を入手しやすくなる。

5ギガヘルツ帯の無線LAN対応スマホが大幅増

2社がいずれも積極的に推進しているのが、無線LANの5ギガヘルツ帯対応だ。

KDDIは15日に、NTTドコモは16日にそれぞれ夏商戦向けのスマホ新機種を発表した。KDDIは5月下旬以降に発売するスマホ6機種のうち5機種で、NTTドコモは6月以降に発売するスマホ16機種のうち6機種で、2.4ギガヘルツ帯に加え5ギガヘルツ帯の無線LANに対応する。

一般に無線LANでは2.4ギガヘルツ帯と5ギガヘルツ帯という2種類の周波数を使用する。これまで国内で市販されているスマホの大半は2.4ギガヘルツ帯だけに対応していたが、2.4ギガヘルツ帯は電波の幅(帯域幅)が狭く、複数の無線LANが干渉せず同時通信できるのは実質3チャンネルしかない。

このため、無線LANの親機(アクセスポイント=AP)が多数設置されている都市部では、無線LAN同士の干渉による速度低下が頻発している。しかも電子レンジなど、2.4ギガヘルツ帯の電波を使う機器が近くにあると干渉するという問題も抱えている。

5ギガヘルツ帯は2.4ギガヘルツ帯より帯域幅が大幅に広く、実質19チャンネルが干渉せず同時通信できる。これまで国内のスマホは、無線制御ICやアンテナの調達コストや、スマホの回路設計や検査の工数が増えることを嫌い、5ギガヘルツ帯への対応に消極的だった。しかし、無線LANの利用拡大を目指す通信事業者が端末メーカーに5ギガヘルツ帯への対応を要請し、対応スマホを拡充した。

公衆無線LANや家庭向けルーターも5ギガヘルツ帯対応進む

スマホに無線LANでつながるネットワーク側の5ギガヘルツ帯対応も進めている。2社は駅や空港、喫茶店などで公衆無線LANサービスをそれぞれ展開しており、スマホユーザーに実質無料で提供している。

 KDDIは全国に約10万局ある公衆無線LANのAPのうち、約8割で2.4ギガヘルツ帯と5ギガヘルツ帯の両方に対応済み。NTTドコモも、現状9000局のAPを13年3月までに6万局へ拡張する計画を打ち出しており、全て2.4ギガヘルツ帯と5ギガヘルツ帯の両対応とする予定。ソフトバンクモバイルは、現在25万局あるAPの大半が2.4ギガヘルツ帯だけに対応するが、総務省主催の無線LANに関する会合において同社の牧園啓市執行役員が「5ギガヘルツ帯へ対応を今後検討していく」と表明している。

スマホの5ギガヘルツ帯対応は、家庭内のネット環境も変えそうだ。家庭向けの親機(無線LANルーター)は、これまで実売価格3000~5000円程度と安価ながら、2.4ギガヘルツ帯だけに対応する低価格モデルが主流だった。2.4ギガヘルツ帯と5ギガヘルツ帯の両対応モデルには、無線LANの実効速度が高くなり、ハイビジョン映像を無線LAN経由でテレビに伝送するといった用途でも映像が途切れないといった利点があるものの、実売価格が8000~1万円程度と高く、購入層が限られていた。

しかし、「2~3月ころから、2.4ギガヘルツ帯と5ギガヘルツ帯の電波環境の違いを意識して、高額でも両対応モデルを購入するユーザーが増えてきた。こうした流れが、スマホの5ギガヘルツ帯対応でさらに進むことを期待している」(バッファロー)としている。

5ギガヘルツ帯の一部帯域は国内では気象レーダーとの干渉を回避するため、屋内利用に限定されていたり、気象レーダーの電波と重なるチャンネルを避ける機能が必要であったりといった制約がある。しかし、「例えば鉄道の地上駅のように開放的な場所でも、総務省に確認した上で屋根の下に親機を設置しており、屋内利用が問題になるケースは少ない。気象レーダーに起因するチャンネル変更も、APを新設して1カ月ほどで1回あるかないかという程度。それ以降は気象レーダーとの干渉が問題になるケースはほとんどない」(NTTグループの公衆無線LAN運営会社であるNTTブロードバンドプラットフォーム)という。

消費電力や回線切り替えを改良

今回発表されたKDDIのスマホの夏モデルは、ソフトウエアの改良による無線LANの使い勝手の改善も図られている。改良点は2つあり、1つは無線LANをオンにした状態での消費電力を削減するもの。もう1つはインターネットへの接続回線を無線LANから3Gへスムーズに切り替えるものだ。

一般にスマホは、無線LANの親機に接続していない場合、接続可能な親機が周囲にあるかどうかを確認するため、親機が発信する「ビーコン」と呼ばれる信号を一定間隔で受信している。米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」と、KDDIが提供する無線LANの接続ツールに改良を施し、ビーコンを確認する間隔を間引くことで実現した。どの程度間引くかは個々の端末ごとに調整のうえ設定しているという。

 従来のスマホで無線LANをオンにしていると、夜寝る前はフル充電だったのに朝起きると半分以下になっているケースもあったといい、ユーザーが無線LANを敬遠する原因となっていた。今回の改良によりKDDIは「待ち受けだけであれば、電池の持ちが従来の2倍になった。今後は電池の減りを気にせず無線LANを使っていただける」という。

また従来のスマホでは、3Gから無線LAN、無線LANから3Gといった接続回線の切り替えに数秒かかり、その間はインターネット接続が途切れるという課題があった。これもソフトの改良により、途切れる時間を従来の半分以下に短縮する。いずれの改良も、夏モデルでは標準で対応し、それ以前のKDDIのスマホでも一部機種はソフトの更新により対応する予定だ。

ドコモはXi回線使う公衆無線LANのAPを新設

NTTドコモは、APからインターネットにつながるバックホール回線にLTEサービス「Xi(クロッシィ)」の回線を使った公衆無線LANのAPの新設に踏み切る方針を明らかにした。背景にはAPの設置ペースを加速させる狙いがある。

同社はこれまで、バックホール回線に光ファイバーを使用することを原則としていた。KDDIのAPの大半はモバイルWiMAXを、ソフトバンクモバイルのAPの大半は3G回線をバックホール回線としてそれぞれ採用しており、NTTドコモのAPは他社のAPよりも高速であることを売りとしていた。

しかし、他社のAPは親機を店内に置いて電源をコンセントに挿すだけで、工事の手間がほぼ不要なのに対し、NTTドコモのAPは光回線を新設する必要があり、APの規模拡大という点で大きな後れを取っていた。同社のAPの設置台数は現時点で9000局、13年3月末見込みで6万局なのに対し、KDDIは現時点で10万局、ソフトバンクモバイルは現時点で25万局と、競合他社に大きな差を付けられている。こうした事情から、通信品質をある程度犠牲にしてもAPの拡充を急ぐ方針にかじを切ったとみられる。

NTTドコモの山田隆持社長は、「Xi回線を使ったAPを設置することで、13年3月末に6万~7万局を目指したい」と語り、従来のAP設置計画を上積みする可能性を示唆した。一方、「駅などはバックホールに光回線を使ったしっかりとしたAPを整備していくが、小さなレストランなどはXi回線を使ったAPを置いていきたいと考えている」(山田社長)として、設置場所に応じバックホール回線を使い分け、APの拡充と回線品質の確保を両立させる考えを示した。

(電子報道部 金子寛人)

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